前回の続きです。


9~13小節目

リピートマークの後の第2部はFコードから始まります。
C7Fにドミナントモーションしてきますが、
このFコードがピボットコードとなってKEY-Gmへ転調しています。


FコードはKEY-FのⅠであり、KEY-GmのⅦという一人二役で
和声でいうところの定調的転調にあたります。


Cm7 → D7 → Gm …と続いていきますが、
Ⅳ7  → Ⅴ7 → Ⅰと基本通りで
調判定さえ出来れば特に難しい部分はありません。


この調判定というのがなかなか難しく、
ファ・ラ・ドでメジャーのように
コードネームがわかっても調が判別出来ず、
なぜそこでそのコードが出てくるのがわからない場合が
初学者の方に多いです。


調がわからないとディグリーもわからず、コードスケールもわからず、
進行の意味もわからないので
調判定を常に矛盾なく正確に判断出来るようにする必要があります。


KEY-Gmに転調しているものの、
和声のお手本通りのシンプルな進行です。


主題のドーファーミラファドミ♭ミ♭ーの最後がミ♭に変わり、
主題がそのまま違うキーで変奏されたような展開がなされています。


13小節目でB♭コードに進んで再び異なる形で主題が始まっていますが、
この部分からさらに転調で
B♭はKEY-GmにおけるⅢであり、
同時に次のKEY-DmのⅥの和音でピボットになっています。


やはり定調的転調になっています。


またここまでで登場するドミナントモーションはすべて正規の
根音4度上行のみであるのもポイントです。


14~18小節目


13小節目からB♭GmA7という風に進みますが、
ここで始めて偽終止が出てきます。

KEY-DmのⅤ7であるA7からB♭へ進む短調の偽終止で、
その後ももう1度偽終止が出てきています。
これは今までにない新しい変化です。


しかし和声進行としてはⅡ→Ⅰ2→Ⅴ→Ⅰや
Ⅳ→Ⅴ→Ⅵなど単純なものばかりで、
特に難しい部分はありません。


16小節目のリタルダンドがいわば展開部の終わりになるわけですが、
ここで元調のドミナントコードであるC7が登場して、
元のキーにドミナントモーションで回帰します。


ここまでの9小節目~16小節目までは
主題展開が行われており、
最初の8小節で提示されるKEY-Fの主題が
下属調の平行調であるKEY-Gmと
平行短調であるKEY-Dmで異なる調と和声進行で
変奏されていることがわかります。


中間部で主題を展開・変奏しつつ、調的に主調から離れて広がりを出す
というのはソナタ形式に代表されるように西洋音楽の基本であり、
非常に多くの楽曲に見られる基本的な流れになります。


緑で回帰と書かれた17小節目から
再現部みたいなものですが、
元の調に帰ってきて主題も冒頭の形そのままで再現されます。


19小節目~最後まで


20小節目から終結部に相当する最後の主題が現れます。
ドーファーミファラドララーと
冒頭と同じ音程関係ですが、22小節目のラの音に対して
ⅤのⅤの9の和声付けがされており、
次にお約束のⅠ2ーⅤ7を期待させます。


属9の和音はここまで何度も出てきていますが、
すべて短調の属9であり、
ここで始めて長調の属9の和音が登場しているのもポイントです。

この部分は和音も厚くとても綺麗ですね。

そのあとゆっくりリタルダンドしながら
Ⅱ→ⅡのⅤ→Ⅱ→Ⅴ7→Ⅰという風に
もう1回サブドミナント→ドミナントという流れで終わります。


全体の調の流れとしては

KEYーF(提示部みたいなもの)

KEYーGm
↓       (2つ合わせて展開部みたいなもの)
KEYーDm

KEYーF(再現部みたいなもの)

という感じです。

提示部「みたいな」と書いたのは
ソナタ形式みたいにしっかり作られているわけでもなく、
極めて単純で規模も小さいからですが、
概念としては小さいながらも提示→展開→再現という
様式が用いられています。


これで主題が2つあり(あるいはそれ以上)、
展開部や再現部の規模がもっと大きくなれば
一応様式としてはソナタ形式になります。


全体の和声進行としては甚だ単純であり、
調設定さえ間違えなければあまりにも単純過ぎて
やってみたら拍子抜けという方も多いかもしれません。


逆にこのレベルでも難しいという方もいらっしゃるかもしれませんが、
いずれにしても慣れであり、たくさん数をこなして、
可能ならちゃんと正しく出来ているか誰かに見てもらうと良いと思います。
(特に難しい曲はなおさらです)


ピアノ曲からオーケストラまで何でも芸術は真似から入りますが、
まずはちゃんと既存曲を解釈出来る力は
様々な曲を作る上で大きな強みになります。


演奏家さんは和声進行や曲の節々に見える作曲家の意図を読み取り、
音楽形式や作曲の様式を自分なりに解釈していくことが
演奏にフィードバックされていくかもしれません。


和声の知識は全体の形式や各部分の構造を理解するためには必須ですし、
譜面に書いていないピアノやフォルテ、あるいはクレッシェンド、
非和声音・和声音の違いにおける旋律の隠された強弱の弾き分けなどの
理解をお持ちの演奏家さんは結構いらっしゃいます。



とは言ってもやはりどうしてもわからない部分があるのは
誰でも同じであって、
私も学生時代はよく先生に質問した記憶があります。


自分で一生懸命考えても、
わかんねーとなるのはむしろ学生の特権でもありますので、
音楽の先生などに質問するのが一番手っ取り早くもあります。


ブログのネタがないときはアナリーゼをやれば良い
ということに気がつきましたので
また気が向いたら何かがしかの曲を取り上げたいと思います。

全体の大きな画像はこちらでDL出来ます。


世の中に対してこういうニーズがどれくらいあるのかわかりませんが、
ドビュッシーやラヴェルの難易度の高い曲や
リリ・ブーランジェなどのマイナー作曲家、
メシアン、フォーレやサンサーンスも面白いですし、
ショパン、リスト、ブラームス、フランク、
ベートーヴェン、モーツァルト、バッハetc…
(権利問題が解決できれば現代音楽やポップスやBGM曲など)
ネタは無限に近いほどありますので、
またそのうちに書かせて頂きます。


特に作曲志望の方はまずはこうやって
自分の好きな曲をアナリーゼして
真似て行けば作曲の勉強になりますので、
この記事がどなたかのお役に立てば幸いです。


自分の好きな曲を片っ端からアナリーゼしていきましょう。


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