moka様の呟きから端を発して開催された「LME春のカラオケ大会」
ピコも末席(←のつもりがカラオケボックスなのでそんな場所はなかった)もとい、タンバリン係にて参加させていただきます。
皆が歌う姿を実況中継されている先は、こちらよりどうぞ↓
LME春のカラオケ大会
なお、文中に歌詞が出てきますが、amebaさんの方でJASRAC様と契約して下さったおかげで、
amebaブログ内では、歌詞掲載が条件付きで可能になっています。
詳しくは、こちらのスタッフブログ記事をご参照ください。
続きです。
LMEカラオケ大会 210号室 ④
♪~ 『女の子は誰でも魔法使いに向いてる』
「モー子さんも歌おうよ。さっきから、天宮さんばかりが歌っているもの。」
「私は、もう十分。あんたが歌えばいいでしょ。」
「ええ~ もっと一緒に歌いたいよぉ~」
「も~~ぉ しつこい!私に言うより、まだ一曲も歌ってない人に言いなさい!」
チラリと、隣に座る人を奏江が見ると、キョーコもはっとなって、社の方にリモコンを差し出した。
「気がつかなくて、すみません。どうぞ、一曲歌ってください。」
「いや、俺は聴いてるだけで楽しいから、遠慮するよ。キョーコちゃんが歌いなよ。」
「そんなこと言わないで、歌ってください。私、社さんの歌も聞いてみたいです。」
「あっ、そういえば、俺も聞いたことなかったな・・・俺からも是非お願いします。」
次に歌う曲選びに夢中になっていた蓮だったが、キョーコの言葉に
自分のリモコンも差し出した。
二人にリモコンを差し出されてしまった社は、苦笑しながらも、キョーコの方のリモコンを受け取り、クラッシュしないよう、すぐにテーブルの上に置いた。
チラリと横目で奏江の方に目配せをして、またキョーコたちの方に向き直る。
「じゃあ、一曲だけ歌わせてもらうね。」
「はい、是非に!」
♪~ 『惚れたあなただけには魔法使いも形無し』
「何、歌うんですか?」
「うう~ん、どうしようかな・・・・今の曲はあんまり詳しくないしな・・・・ねぇ、少し前の曲でもいいかな?」
「もちろんです!」
奏江は、キョーコと社の会話には入らず、手拍子をして千織の歌を聴いていた。
社は、そんな彼女の横顔を見て、そっと柔らかい笑みを零すと、愛用の白い手袋を装着し、手早く目的の曲を探していく。
♪~ 『女の子はお砂糖とスパイスとで出来ている』
「あれっ、このタイトル、どこかで聞いた事があるような・・・」
「ドラマの主題歌だったからじゃない・・・その当時は、すごく人気があって、視聴率も凄かったらしいわよ。」
キョーコの疑問に、さらっと答えるモー子さん。
「モー子さん、見たことあるの?」
「まぁね・・・・お昼に再放送していた事があって、その時に少しだけね。」
「ふ~ん・・・・・・私も見たかったな・・・」
「あんた、あんまりテレビなんて、見ないじゃない。」
「そんな事ないよ~、最近は演技の勉強の為にも、よく見るようにしているもん。」
「そうなんだ・・・」
今歌っているのは楽しい曲なのに、憂い顔で手拍子をする奏江に、キョーコは首をひねった。
「モー子さん・・・」
「ん?なによ。」
「いえ、やっぱり何でもない。」
「なによ、気になるじゃない。
言いたいことがあるんなら、はっきり言えば。」
「本当に、大したことじゃないから・・・」
奏江の様子がいつもと違い、気になったキョーコは声をかけたものの、何をどう聞いていいかわからず、誤魔化してしまった。
だって、まるで・・・・・・・
モー子さんの表情は、恋に悩む乙女のような表情だったから・・・・・
♪~ 『Would you fly me to heaven』
「あっ、終わったね。」
千織が歌い終わると、社がすぐさま立ち上がり、ネクタイに指をかけ
緩めると上着を脱ぎ、椅子の上に置いた。
いつもの仕事中の表情とは違い、リラックスした中にも男らしさが垣間見え、思わず見蕩れてしまうキョーコだったが、すぐに隣のヒンヤリとしたオーラに視線を逸らす。
♫ 『例えば どうにかして 君の中 ああ 入っていって』
「うわぁ~素敵!・・・敦賀さん、社さんって、歌上手だったんですね。」
「うん、俺も今日初めて知ったよ。」
いきなりの高音ボイスで、歌詞も見ずに歌い上げるその姿にびっくりして、二人顔を見合わせた。
淡々と前を向いて歌っているようにも見えたが、視線はずっと一つの方向にあった。
♫ 『愛すれば 愛するほど 霧の中 迷い込んで』
高音を少し苦しげに目を瞑り、声を張り上げる社さんから、敦賀さんとはまた違う大人の色気が漂っていて、知らない人みたいで鼓動が跳ねる。
隣をチラッと見て気づいていない事に安堵すると、ずっと見つめている視線の先の、自分の親友に声をかけた。
「モー子さん・・・」
呼びかけたけど、返事はなかった。
まるで恋人同士のように、熱く見つめ合っていて、
二人の間に割って入れるような雰囲気でもない。
「社さんも、男だったんですね・・・」
ポロっと漏らした独り言に、厳しい視線が突き刺さる。
焦って、言い訳がましく言葉を付け加えた。
「いえ、そういう意味ではなくて、あまり異性として意識していなかったので、今の社さんを見て、ちょっとびっくりしちゃったんです・・・」
「いつも言っているけど、最上さんは、顔見知りに対して、気を許しすぎだ。いい人だと思っていても、裏では何考えているかわからないんだから、気をつけたほうがいいよ。」
「でも・・・・社さんは本当に優しくて、いい人です、よ。」
「うん、でも社さんは男で、君は女の子だ。何か間違いがあってからでは、遅いんだからね。」
「そんなの有り得ません。そんな風に仰るなら、敦賀さんはどうなんですか!私に下心とか持ったりしているんですか!」
「えっ・・・・?」
「はっ・・・あっ、あのっ、今のは、無し、言い間違いです。売り言葉に買い言葉みたいなもので、つい口が滑っちゃっただけで、そっ、そんな事、微塵も思っていません。すみません。忘れてください。」
「・・・・・・・・・・・もしも、持っていると言ったら・・・君はどうする?」
真っ赤になったキョーコの頬に手を伸ばしてくる蓮の顔は、夜の帝王に変わっていた。
背筋がピシッと伸びて、触れられないように後ろに仰け反ると、捕まえるように指を絡めてくる。
♫ 『痛いこと 気持ちいいこと それはみんな人それぞれで』
「このまま抜け出しちゃおうか?」
耳元で甘く囁く誘いに、ブンブンと激しく首を横に振り、拒否するキョーコの瞳は涙目で、以前の打ち上げのように逃げ出しはしなかったが、目を回す一歩手前の状態で、パニクっていた。
「冗談だよ。もう少し、皆の歌も聞いていたいしね・・・」
「そ、そうですよね・・・皆さんの普段とは違う一面が見れて、楽しいですものね。」
「俺の違う一面も、見れた?」
絡めた指に力を入れ、真剣な眼差しで見つめる。
「・・・・・///・・・・はい・・・・」
真っ赤な顔で俯き、小さく返事をするキョーコに、蓮は破顔した。
「なら、今は許してあげる。でも・・・俺だって、ただの男だから、君に何も感じてないわけじゃないよ。下心だって、ちゃんとあるんだから。」
絡めた指に唇を寄せて、そっと手を解放した。
キョーコは、ドギマギしながら、離された手を見つめている。
下心あるんだ・・・・
子供扱いされなかった事が嬉しくて、口元が緩みだす。
チュッ・・・・
社の歌を聞いている振りをして、両指を絡めて唇の前まで持ってくると、誰にも気づかれないように、そっと蓮の唇が触れた辺りに自分の唇を当てた。
(///・・・・間接キスだ・・・・)
一人、真っ赤になってしまったけど、この部屋の仄暗い照明が、キョーコの甘やかな行動を隠してくれた。
恥ずかしくて、相変わらず余裕のない態度でしか、敦賀さんの夜の帝王を受け止めれない自分がちょっと情けない。
モー子さんなら・・・・・・
もっと上手く、相手ができるんだろうか・・・
真剣に社さんを見ているモーさんに、視線を移した。
キョーコが自分を呼んでいたのも、こちらを見ているのにも気づいていたが、奏江は社から目を離せずにいた。
今、彼は私に歌いかけている。
その意味も・・・・・・
ちゃんと理解できる。
私は・・・・・・・
彼とどうなりたいんだろう・・・・・・・
奏江は、数日前にされた、社の告白を思い出していた。
「君が好きだ・・・別に返事が欲しくて、言ってるんじゃない。ただ・・・俺が好きだって事を覚えていて欲しいんだ・・・」
ずるいな・・・
人が弱っている時に、あんな不意打ちのような告白。
その上、返事も聞かないで、去って行くなんて・・・・・
忙しい人なのに、担当俳優の想い人だけではなく、友人の私にまで心遣いを見せてくれる優しい人。
それが私の、あの日までの社さんの印象だった。
ずっとキョーコの親友として大切にされていると思っていたから、急にあんな事言われても、どうしていいか、困る-------
でも不思議と嫌ではなかった。
♫ 『はじけるような笑顔の向こう側を見たいよ』
いつもどこか冷めた表情のモー子さんが、
今は、優しい顔をして、社さんを見ている。
まさか-------?
「・・・・・・・モー子さん、もしかして・・・社さんが好きなの?」
「えっ!?///」
真っ赤になって、こっちを向くモー子さんの顔は、それ以上何も聞かなくても、「イエス」と言っているようなものだった。
だから--------
これ以上は聞かずに、話題を変えた。
「歌っている社さんって、かっこいいね。」
「な、なによ、いきなり・・・・///」
「いつもと違って、男らしいもの。」
「そう・・・ね・・・・でも・・・・いつも、男らしいわよ・・・」
「そうだったね・・・・」
「うん、それに仕事もできて、気遣いもできる、誠実な人だわ。」
「うんうん、私もそう思う。信頼できるもんね。」
「ええ・・・」
また黙って、前を見つめるモー子さんの顔が、さっきより吹っ切れた表情に変わっていたのに安心して、そっと隣に座る自分の想い人の顔をのぞき見た。
♫ 『かけらでもいい 君の気持ち知るまで 今夜は一緒にいたいよ』
「いい曲だね・・・今度、このドラマのDVDを探してみようと思うんだけど、見つけたら、最上さんも家で一緒に見ない?」
「えっ、いいんですか!実は私も、見たいと思ってたんですよ。」
「了解、じゃあ見つけたら、連絡するね。」
「はい。」
下心があると言い切った男の部屋で
DVDを見る約束を嬉しそうに交わすラブミー部員1号と
ラブソングを熱く歌う彼のマネージャーを
うっとりと見つめるラブミー部員2号。
二人を一人、冷めた目で複雑な想いを抱え
見つめるのは、ラブミー部員3号。
二人のラブミー部卒業も遠くはないと感じた千織は
置いて行かれたみたいで、ちょっぴり寂しくなっていた。
おわり
賑わうカラオケ大会の雰囲気と
逆行するようなお話ですみません
あと、2話続きますm(_ _ )m
今回のおまけには、新たな乱入者が顔を出しています。
おまけ4