加久藤城への道 ~宮崎県えびの市~ | 旅するカメラ

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中世山城の写真はどこを写真に撮っても大抵訳が分からない写真になるものだ。

本丸梅林


日本人が「お城」と聞いてイメージする天守閣が建て始められたのは
織田信長が造った安土城が始まりだと言われている。
それから関ヶ原の戦い後にかけて城郭建設ラッシュが始まり一時代を築く事になるのだが、
それ以前は小高い山の上に城を築く「中世山城」スタイルが多かった。
そこには立派な天守閣ではなく、物見櫓や平屋の建物が建っていたと考えられる為、
現在では建物の遺構は全くと言っていいほど何も残っていない事が多い。

ここ、宮崎県えびの市にある「加久藤城」もそんな中世山城の一つ。

島津義弘が日向の伊東家を牽制する為に送り込まれた真幸院と呼ばれる
この付近一帯を治めるために加世田より移って来て最初の城である。
時に義弘30歳である。
元亀3年に起こった木崎原の戦い で、伊東軍はまずこの加久藤城を攻めている。

何度か木崎原の戦いの舞台となった池島付近には訪れた事があったのだが、
加久藤城は何処にあるのかハッキリ分から無かった為今まで訪れた事が無かった。
それだけに、「今日こそは絶対たどり着いてみせる。」と妙に意気揚々と向かってみた。



前に一地元のオジサンから大体の場所は教えてもらっていた。
人吉からえびの方面へ抜けるループ橋を下った突き当たりの信号を左折。
次の信号の一歩手前の細い道を左折。(右側にスーパーがあるのでそこに車を停めた方がいいかもしれない。)

そのまま突き当たりを道なりに左折。
と、その先は「このまま先へ進んでいいのか??」と悩んでしまうほど細い路地になる。

前もここで「道を間違った?」と思い引き返してしまったのだが、
今回は近くの自動車修理店のオジサンに道を尋ねる。

おじさんの店


「あの、加久藤城はこの先でいいのでしょうか?」

すると、オジサン驚いた表情を一瞬浮かべる。
よほど加久藤城を訪ねる人は珍しいのかもしれない。
そう言えばえびの在住の人でも場所を知っている人は少ない気がする・・・

「このまま道なりに真っ直ぐ進めば大手門がある。
その先、一箇所だけカーブがキツイ箇所があるので何度か切り返ししないと駄目かもしれないけれど
大丈夫。車で行ける。」
と丁寧に教えてくれた。

おじさんに礼を言い車で向かう。
道が狭いので気になっていたがオジサンが自信を持って「大丈夫、車で行ける!」と言うから安心して進む。

この先に


物見櫓跡


すると・・・見てて来た。
大手門跡!

大手門跡


やっとここまでたどり着けた・・・


大手門跡と行っても礎石があるわけでもなんでもなく
ただ白い板の案内板がひっそりと建っているだけ。

それでもここを島津義弘が通ったと思うと・・・ちょっと感動した。




写真で見る以上にこの大手門より先の道は狭くなっている。
「本当に車で行けるのか?」不安になったがオジサンの言葉を信じ、そのまま車で向かう。

すると、「一箇所だけカーブがきつい箇所がある」と行っていた問題のカーブに出た。
狭い道幅の上に30度鋭角の曲がり角。
何度か切り返すも断念。

問題のカーブ


カーブの向こう側に民家があるのでそこへ入ってしまえばどうにかなるのだろうが
一応諦めてみた。
少し下った所に車を放置。
大丈夫。絶対車は他に通らない。(間違いない。)

歩いて上る。


少し歩くと、『加久藤城』と言う白い板が見えてきた。
遂に加久藤城へ到着したのだ。
ここまでの道程は・・・長かった。

遂に入口


その先に加久藤城の説明書きがあった。

説明板


縄張り図
縄張り図


今でも狭い加久藤城への上り口。
ここを未明、道も分からず攻め入った伊東軍。
やはり無理があったに違いない・・・
周りは崖となっていてなかなか入る隙が無いといった印象だ。



続いて本丸へ向かう。

本丸へ


この坂道を登った先が本丸。
今では本丸跡地は梅林となっており、その一角には竃神社が建っていた。

鳥居をくぐり・・・

鳥居

神社が見えてきた。
・・・・ん? 人影?

人影


スーパーサイヤ人


島津義弘・・・だろうか???
スーパーサイヤ人のような髪型の不思議な銅像がポーズを決めて立っていた。

人気の無い山奥にこんなものが・・・
なんとなく不思議だ。



気を取り直して本丸へ。
なかなか放置され荒れた感じだ。
それでもまだ梅林として整備してあるからかましな方か・・・・

本丸


先ほどの縄張り図によるとこの先に土塁があると書かれていた。
近づいてみたが、もはや何がなんだか分からなくなっていた。
山城って難しい。

土塁



本丸のすぐ下部分にある二の丸。
林の向こうには霧島連山が見える。
なるほど・・・いい場所だ。
きっと広瀬夫人の住まいもここ二の丸にあったに違いない。(推測)

二の丸



花


何も無いとは分かっていても、
実際にその場所へ行き、その空気を感じてみたいのだ。