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Kierkegaard
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兎は二匹いるのだ、赤い南天の目をした、雪うさぎ・・・

これは何かの間違いかと思った、自分が中学生の頃に亡くした母と瓜二つの女性とそこにあの頃の自分がいた。

俺がずっと見守ってきた、少女の頃から見守ってきた彼女と道が分かれてからずっと一人だった。

あの夏の別荘で、夢のようなひと時・・・

俺は、君が好きだとと言わなかった。

「さようなら」と手をふり、彼女は別荘を発ち、そのまま俺の目の前から消えた。

俺は、何故あの時、想いを伝えられなかったのだろう、愛していると伝えたら、何かが変わっただろうか?

この少年は、この世界でマヤと出会うのだろうか、そして、私が手にできなかったものを手に入れるのか?

軽い嫉妬に驚きながら、俺はこの運命を受け入れよう。

君を愛そう、だけど、俺は不器用だから見守るしかできないが。


「先輩、どうしたんです?黙り込んで」

「科捜研から例の種の鑑識結果だ、南天と一位で庭木に使われることの多い木の種子だ」

「で、それがどうかしました?」

「種子のまま飲み込んでも、問題ないんだがな」

「毒ってことですか?解剖所見では、何もなかったですよ」

「心不全ってあったろう、毒物摂取を疑わないかぎり成分分析なんぞしないさ、ただな、解剖所見で胃の内容物については、何もないから違うかもしれんが、気になるんだ」

「ふーん、僕らのマヤちゃんに聴取しましょうよ」

真澄くんと聖くんは、自宅に戻ると室内は暗いままだった。

「マヤちゃん、どこ?」

室内をくまなく探すが、彼女はいなかった。

「先輩、これ?」

メッセージボードに、メモが一枚、そこに書かれたメッセージは

「速水さんへ
私は、あなたと初めてあった場所にいます。
あなたが私を見つけてくれた場所でずーと待っています。
マヤ」

「と、言われてもなあ、俺は覚えてないし」

「彼女を見て既視感とか覚えなかったんですか?」

「うーん」

誰が彼を殺したの?

赤い目をした兎が答えます。

それは私です。

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