<2月26日(土)>

しとしと雨の鬱陶しい日でしたが、久し振りに家でのんびりできる私には全然オッケー。徒歩でスーパーに食料調達に行くトーチャンは大変でしょうけどね。って、こんな日は一緒に行ってあげればいいんでしょうが、あれこれ忙しいし、車で行くんじゃなきゃ嫌よ。

バルセロナのことを書く前に、旅行前に行った魔笛をまず片付けましょう。

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オペラ三昧イン・ロンドン


2月7日、11日、16日と3回、ロイヤルオペラハウスに、「魔笛」Die Zauberflöteを観にいきました。


どんなオペラなの?


前回(3年前→こちら )の記事の繰り返しになりますが、お金に困ったモーツァルトが、そこらの八っつぁん熊さんや洟垂れ小僧向けに書いたジンクシュピールという、云わば歌芝居ジャンルを確立した晩年の傑作です。

しかし、傑作というのは音楽のことであって、内容は荒唐無稽


一応おとぎ話で、ハンサムな王子様が悪者にさらわれた可愛い王女様を助けるストーリーなのですが、途中で善玉と悪玉が入れ替わったりして混乱します。話の進展に関係のない人たちもたくさん登場し、モーツァルトも入っていたというフリーメーソンの儀式らしきものも出てきたりして、バランスの悪い構成だし、理解しようとするのは時間の無駄。タイトルの魔法の笛も、それで獰猛な森の動物たちがおとなしくなるのですが、別にそんな笛なくても変らないんじゃない?という程度のこと。


でも、その滅茶苦茶さが「魔笛」の魅力なのかもしれないし、わけのわからない話にしてはそれなりに一本筋が通ってる魅力的なキャラクターもて出てきます。おとぎ話で設定が自由自在なのも演出家の腕の見せ所だし、難しいことは考えないで、素晴らしい音楽に浸りましょう。


マクヴィッカー演出の舞台は暗くて幻想的な雰囲気なんですが、私の安い席からは奥が見切れて全体を鑑賞することはできませんでしたが(以前観てるからいいの)、近いので素晴らしい衣装の細部はよく見えました。


    オペラ三昧イン・ロンドン


Composer Wolfgang Amadeus Mozart
Production David McVicar

Designs John Macfarlane
Lighting designs Paule Constable
オペラ三昧イン・ロンドン
Conductor Colin Davis/David Syrus
Tamino Joseph Kaiser
Pamina Kate Royal
Papageno Christopher Maltman
Papagena Anna Devin

Queen of the Night Jessica Pratt
Monostatos Peter Hoare
Sarastro Franz-Josef Selig
First Lady Elisabeth Meister
Second Lady Kai Rüütel
Third Lady Gaynor Keeble
Speaker of the Temple Matthew Best
First Priest Harry Nicoll
Second Priest Donald Maxwell
First Man in Armour Stephen Rooke
Second Man in Armour Lukas Jakobski


今回は、一番楽しみにしてた夜の女王役のマレーナ・レベカ嬢(ゲオルギューの代役のトラヴィアータが素晴らしかった)が降りてしまい、後はぱっとしない歌手陣だったので(だから売れ行き悪くて超割引にもなった)、3回も行かなくてもいいだろうから、まあ様子を見て考えようと思っていたところ、結局3回とも行ってしまいました。13ポンドで良い席ばかりだったこと以外に、思いがけなく主役カップルが上手で、その上美男美女の王子様とお姫様だったので。だから、写真もほとんどこの二人ばっかりなのだ。 


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オペラ三昧イン・ロンドン
男の子タミーノ王子

夜の女王の侍女3人がうっとりするハンサムな王子役に本当に魅力的なテノールが出るこはまず望めないんですが、今回のジョセフ・カイザーはばっちりで、これもまた麗しいパミーナ王女と一緒に実に絵になるカップルでした。


勿論ビジュアル的に良いだけでこの長いオペラを3回観るのは辛いですが、カイザーは堂々とした体躯に相応しい声量と、特に美声ではないものの私好みの芯の通った声質でビシっとと平手打ちされてメロメロ~ラブラブ!


聞き覚え見覚えあるわと思ったら、サロメのちょい役でとても良かったカナダ人。ケネス・ブラナの映画版魔笛でタミーノだった人だそうで、第一次世界大戦に設定された映画は英語だし評判もとても悪かったので無視したのですが、今回YouTubeで観漁っちゃいました。無名の彼はそれ以外にほとんどアップされてませんでしたから。

これで高い声がもっとスコーンと抜けるようになれば(それが難しいんだっちゅうの。かなりいい線はいってるからいいんだけど)、一流テノールの仲間入りもできるジョセフ君、頑張ってね。駄目ならスタミナはありそうだから、ワーグナーでもやってくれないかな。
オペラ三昧イン・ロンドン
女の子パミーナ王女

イギリス人のケイト・ロイヤルは何度か聴いたことがあり、上手だけど声が硬くて高音がちょっと濁るのであまり好きではなかったし、パミーナには重過ぎるんじゃいないのと心配だったのですが、んですが、今回出産から復帰したら、まあなんて上手になってるの!と全く嬉しい驚き目


優しさと軽やかさが増して、すらっとした美貌で演技も映え、特に今回は共演がでかいカイザーだったので、大柄な彼女がちっちゃく可憐に見えて得だったし。


これなら、容姿も含めた総合点ではイギリスでトップのソプラノじゃないかしら宝石赤


しっぽフリフリパパゲーノ

滑らかな声が心地良いお馴染みの芸達者クリストファー・マルトマンだけど、今回はちょっと演技も歌も遠慮がちというか、本調子じゃなかたのかしら? それでも充分上手なんだけど、コメディ感覚も抜群なんだから、もっと大袈裟にやって笑いを取ればよかったのに。


ウサギパパゲーナ

ROH若手アーチスト一年生のアナ・デヴィンは高音がきれいに出るコロラチューラ・ソプラノで、本舞台のデビューを心待ちにしてました。でも、小劇場だとキーンときれいに響いて映えるんだけど、大きな舞台だと声量不足かも。まあ、まだこれからだから、可憐で可愛いし、成長を見守っていきたいチャキチャキのアイルランド人です。


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クマザラストロ

プレミエのザラストロだったらしいゼーリッヒ、低音の迫力が凄いだけじゃなくて温かみもあり、おまけに巨顔も大舞台向けで威厳のあるとても立派なザラストロでした。でも、低音歌手には萌えない私には一回で充分。2度目3度目はカットしてくれないかな、と思ったりもして、彼が延々と歌う時は居眠りして自分でカットしてしまいました。


オペラ三昧イン・ロンドン
三日月夜の女王

去年7月のROH椿姫でゲオルギュー降板の代役で張りのある大声が素晴らしかったレベカ嬢(→こちら )、元気のあり過ぎるヴィオレッタには向かないけど、超高音でけたたましく吼える夜の女王にはぴったりに違いないので楽しみにしてたところ、まだ20代半ばなのに出産するとかでキャンセルされてがっかり。


代役は聴いたこともないジェシカ・プラットでしたが、感心するほど上手ではなかったし、プレミエのダムラウにはもちろん遠く及ばないけど、決して悪い出来ではなく、充分合格点で、先回のしゃがれ声のソプラノよりはずっとましだと思いました。

因みに、プラット嬢、最後の方は何回かキャンセルしたようです。私も下手でもいいから違う人でも聞きたかった。


流れ星侍女トリオ

今までで一番上手な3人官女だったんじゃないかしら。2人は現役のROH若手アーチストで、特にソプラノのイギリス人エリザベス・マイスターは利口な女狐では主役もやった程の実力もあり、張りのある高音は貴重な存在です。もう少し痩せて欲しいですが。


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かさ指揮者

公演回数が10回と多いのでSir Colin Davis7回とDavid Syrus3回という予定でしたが、サー・コリンは少なくとも2回はキャンセルしたので(一度は指揮台に上る途中で倒れてため→こちら )、私は彼で3回聞く予定だったのに結局はサー・コリン1回、サイラス2回でした。


全てにおっとりしたサー・コリンのペースは好きではないので全然構わないし、指揮者を真横から見る私の席からは指揮ぶりも大事なところ、83歳のサー・コリンに躍動感は最初から期待できないですから(実際、体調悪かったのか、いつもにも増してのろくて半分死んでた)、若い(サー・コリンよりは)サイラスの躍動感溢れるアクションを観ながらも乗りのよいモーツァルトを聴けて却ってよかったです。

尚、サー・コリンは、転倒した2日後には予定通り指揮したようで、一安心。




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