ここ数日なぜか「最近のコメント」にコメント一覧が出ないことがよくありますね。私は何も変えてないのですが、見難くてご迷惑をお掛けしてます。

----------------------------------------------


17日の土曜日はROHオペラのシーズン最終日で、秋に日本に持って行くLa Traviataでした。


で、ヴィオレッタをここで歌うのは16年ぶりで皆が待ちわびたアンジェラ・ゲオルギューの筈だったのですが、お腹をこわしたそうで、キャンセルしちゃいました。彼女、この前のトスカもキャンセルしたことあったし、健康管理ができてないというより、ストレスで駄目になっちゃうんでしょうかね? この秋に日本でこの椿姫引越公演の切符(凄く高いと聞いてます)を持ってらっしゃる方、不安ですね。覚悟しといた方がいいかもしれませんよ。なんつって。


さて、今日は開始前に小さな紙切れで代役紹介もされてたので、開演前の舞台でのアンジェラ降板アナウンスにも失望のどよめきは大したことはなかったのですが、オーケストラストールの真ん中に座ってる中年男性がとてつもない大声で叫んだというか唸った叫びというか、それには皆びっくり。可哀相に、アンジェラ見たさに高い席を買ったに違いない、と同情を集めた彼の態度を責めたり茶化したりする様子は全くなく、それどころか観客全員の失望と怒りの気持ちを代弁してくれた人がいたことで、なんだか気分がすっきりしたというか、珍しい一体感が生まれました。


もちろん私もがっかりしましたが、ラッキーなことに3日前にすでにアンジェラで一度聴いてるし、なんせ切符代は僅か12.5ポンドなので、被害は少なかったです。



オペラ三昧イン・ロンドン     オペラ三昧イン・ロンドン


代役はラトヴィア人のMarina Rebeka(以下マリーナ嬢)。名前も聞いたことのない人なので、ヴィオレッタを歌えるソプラノなんてゴマンといるだろうにどんな下手くそを呼んできたんだか、と不安で一杯でしたが、ROH来シーズンの魔笛で夜の女王を歌う人ですと直前の代役謝罪アナウンスで教えてくれたので、なるほどその路線のソプラノかということがわかり、それなら私の好きなタイプだし高音とコロラチューラはそこそこ上手に違いない、と少し期待が高まりました。これはこれでワクワクするもんです。


皆の決して好意的ではない注視の中、登場したのは若い長身の美女。肌もプリプリだし、ルックスは即合格ラブラブ。アルフレード役のジェームス・ヴァレンティとは年恰好ともお似合いのカップルで、特に年齢的釣り合いは40台のアンジェラよりずっと良いのは明らか。


肝心の歌ですが、数秒間聞いただけで安堵しました。びっくりするほどの声量で、張りがあってよく通る声はとても魅力的。のっけの「乾杯の歌」にはぴったりで、オーケストラやコーラスをいともたやすく突き抜ける彼女、この歌はアンジェラより向いてるわ。


その後一幕目はコロラチューラが勝負なんですが、それは彼女の得意とする所に違いなく、高音は軽々と出るし、どの音域もむらなく伸びやかなのが素晴らしくて、安心して聞惚れました。声のでかさとストレートな迫力は、まるでグリゴーロ君の女声版。この二人が共演するときはうんと大きな劇場でやらないと。


第二幕は息子と別れてくれと脅しにくるジェルモン父とのやり取りで演技力が必要とされるのですが、大柄な美人なのでドレス姿も艶やかで素敵だし、表情も豊かなんだけど、なんかやけに明るくて健康的なので、いまいちヴィオレッタの苦しみが伝わってこない。ずっとパワー全開じゃなくて、もっと強弱付けてしっとりする部分もないと。


オペラ三昧イン・ロンドン     オペラ三昧イン・ロンドン


この調子で死ぬ場面もやったらちょっとまずいよね、と段々心配になって迎えた最後の幕。さすがに声を落として瀕死のヴィオレッタになろうとしたけど、演技的にはやっぱりまだ元気過ぎるし、なによりも声が一本調子で細かい陰影が付けられないのが問題。この場面は細くてはかなげな声でこまやかなアンジェラにはとても敵わないから、せめてここだけはアンジェラでもう一度聴きたかった。


まあヴィオレッタには色んな要素が必要で、全ての面でぴったりなソプラノは滅多にいないわけだから、全体としては立派な椿姫のマリーナ嬢、カーテンコールはアンジェラの時よりも賑やかだった程で、床踏み鳴らしてやんやの喝采でしたクラッカー 

オペラ三昧イン・ロンドン
やっぱりアンジェラで聴きたかったという気持ちは消えないでしょうが、こんな素晴らしい代役で聴けたのはせめてもの救いだったと誰しも思ったに違いないドラマチックな夜でした。


というわけで、まだまだ荒削りで改善の余地のあるマリーナ嬢、ヴィオレッタが一番向いているかはちと疑問だけど、声の素質は素晴らしいので、間違いなく前途有望。


アンジェラのことをまだ書いてないのでここでついでに比較しようと思ったのですが、すみません時間切れなので、それはトラヴィアータ全体を含めて別にまとめます。



                        人気ブログランキング カクテルグラス