7月4日、ロイヤルオペラハウスに「フィガロの結婚」を観に行きました。


えっ、又なの? ちょっと前にやってなかったっけ? と仰る方もいらっしゃるでしょう。


そうなんです、今年初めに新プロダクションでオープンしたばかりなのですが、早くも再登場なのです。


そのとき2度行ったので、今回は安い席で一人こっそり、全部見なくてもよいので、前回とちがう歌手たちをちょっとだけ聴きに行きました。

4 July 9 upper slipsは字幕が見易いのも便利



あらすじや舞台については先回の記事→新プロダクション<フィガロの結婚> でご覧頂くとして、今回はパフォーマンスのみについて簡単に書いておきます。


しっぽフリフリ伯爵に婚約者を狙われて焦るフィガロは米人バリトンKyle Ketelsen。どっかで見た兄ちゃんだと思ったら、去年9月のニールセンのMaskarade の侍従役でした。そのとき主役の一人だったけどぱっとしなかった人が、優れたフィガロになれる筈がなくて、下手じゃないけど歌も芝居もスケールが小さくて魅力無し。大劇場のフィガロは荷が重過ぎます。

figaro2 1 えっ、お呼びじゃない? こりゃまた失礼しました 

ヒヨコスザンナのIsabel Bayrakdarian 聞いたことない名前ですが、声量もあり安定した歌唱で手堅く歌ってくれました。だけど、頭の回転が早くて負けん気もあってきっぷの良い小股の切れ上がった江戸っ子ネエチャンのような明るい魅力は充分表わせたとは言えず、なんだか暗くておとなしいスザンナでした。チェチリア・バルトリが出てくれるわけもないので贅沢言っちゃいけないですけどねぇ。

figaro2 3 伯爵の妾になった方がいいかしら?

うり坊 初夜権を行使しようとする憎まれ役の伯爵はダブルキャストでしたが、MIcheal Volleは聞いたことのないバリトンだったので手堅く前回と同じGerald Finleyの日を選びました。避けたVolle、結局評判は上々で、後でそっちにすればよかったと後悔したのですが。Finleyはもちろん歌も芝居も文句なく素晴らしいのですが、さすがに3度目だと感激は薄れるし、遠くの席からはその細かいニュアンスまで味わうことができず、前回まじかで見て感動したときのことを思い出すしかなかったです。

ヒツジ 夫の浮気に悩む伯爵夫人はSoile Isokoski。ROHではコジ・ファン・トゥッテとフォルスタッフに出ました。声がよく伸びて素晴らしいと思うこともあるけどずっとそのよさが続くわけではないなあといつも思ったのですが、今日もその通りで、充分上手なのですが、いつまでも聴いていたいと思わせるなにかが足りないんですね、この人。顔がまずいのが原因ではないと思うのですが。

とかげ鼻血ドバドバ少年ケルビーノは豪華にSophie Koch。チェネレントラ、ファウスト、ナクソス島のアリアドネの作曲家等で素晴らしかった彼女のケルビーノは楽しみにしてたのですが、これが意外に全然よくなくてびっくり&がっかり。脇役だと思って練習を怠ったか、雑な印象を受けました。 

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恋の矢奥様~!」 「ケルちゃ~ん」           「奥様」 「ほら、サボらないでギター弾いてよね」

ヘッドフォン フィガロの結婚が素晴らしいオペラなのは誰しも認めるところ。次から次へと美しいアリアが流れ出して、キャラクターも皆特徴あってわかりやすいけど、ドタバタ喜劇と片付けるには深い人間模様もある。

だけど、私は最近これを観すぎたんですね。生では今年の2月のROHの2回だけですが、テレビでやたらにモーツァルトをやっているわけで、特にフィガロの結婚が多くて、そしたら「このバージョンどうかしら?」ってつい観るでしょ?

モーツァルトのオペラは長いので、休憩まで100分聴いたらもう充分で、期待より上手な人はいなかったし、後は聴かなくても充分に想像できると思ったので、そこで去りました。隣の席のオヤジは音楽に乗って体を動かすというあるまじき行為をしてて不快だったし、家でも色々やらなきゃいけないこともあったし・・etc。

でも11ポンド分は軽く楽しめました。
4 July 10    ROH 天井
     貧乏人にはありがたい天井桟敷席。だからしょっちゅう行けるわけで・・。


同じオペラを何度も聴くことは新しい発見もあるのですが、やっぱり飽きるし、こんなときは、一体どんなドラマなのか、次にどんな音楽が出てくるか知らないで初めて接するという喜びを失ったような淋しい気持ちもします。