1月16日が初日の今回のLa Traviata 、ヒロインが聞いちゃいられないほど下手だったけど、ここまでひどいと語り草になるかもしれなくて、そんな面白いもの見逃したら口惜しいから、観にいってよかった~!。

こういうのは2度目3度目と重ねていくとさらに興味深い体験ができるんだろうけど、そんなにヒマじゃないし、第一立見席すら残ってない。150ポンド出せばあるだろうけど、まさかね。


どこでも一番ポピュラーなひとつであるこのオペラ、ロイヤルオペラハウスでもほとんど毎年はやっていて、この6年間で私は7回行った。誰が出ても切符は売れるドル箱なので、ここがROHのケチなところ、大した歌手は出てくれない。ROHの椿姫と言えばアンジェラ・ゲオルギューだけど、彼女は94年のこの舞台に抜擢されて一躍大スターになったわけで、出たときは無名だったわけだから。日本の方が有名外国人歌手の椿姫を聴く機会は大いにちがいない。


今年のマルチネズに話を戻すと、後で去年も彼女が出たとわかって、ROHに対してまた腹が立ってきた!私はダブルキャストのちがう方を観にいったんだけど、去年観た知り合いが下手な主役だったと文句言っていて、そう言えばマルチネズだったこと思い出した。そんな下手くそを毎年出すなんて、いくら誰が出ても切符が売れるからって、客を馬鹿にしてる。

オペラははじめてという人が押し寄せるからこそ特に良い人出す必要があるだろうが!オペラの醍醐味は歌唱なのだから、不快なキイキイ声聞いたら、多分そういうイメージ持ってるだろうから、ふーんやっぱりそうじゃんと思われちゃう。新しいお客獲得に必死になってるROHとしては一番避けなきゃ駄目だよ~。もう来てくれないよ~。私だって途中で帰りたいと思ったくらいだから。



・・などという不平はこれくらいにして(また後で出てくるだろうけど)、良い機会なので、これまでのパフォーマンスをまとめて比べてみることにしましょう。


まず、誰が出たかをリストアップすると;-


             ヴィオレッタ        アルフレード         ジェルモン氏  

2000年11月   Victoria Loukianetz    Giuseppe Sabbatini     Thomas Allen

2001年5月    Darina Tokova        Giuseppe Flanoti      Dimitri Hvorostovsky

2001年6月    Darina Takova    Tito Beltran Dimitri Hvorostovsky

2002年12月   Inva Mula Edgaras Montoridas     Paolo Gavanelli

2003年1月    Ruth Ann Swennson   Joseph Calleja  Paolo Gavenelli

2005年2月 Norah Amsellem    Charles Castronovo   Gerald Finley

2006年1月 Anna Maria Martinez  Charles Castonovo    Zalko Lucic



まずお父さんのジェルモンから歴代比較してみましょう。


ジョルジュ・ジェルモンの役柄と歌の難易度

ヒロインの恋人の父親で、息子がパリの娼婦と同棲しているのを聞いて、財産を食いつぶされるのではないかと心配して田舎から出てきた、ごく普通の常識人。最初は当然ヴィオレッタに偏見を持っていたが、彼女のお金で賄っていることと彼女がアルフレードを本当に愛していることを知ってヴィオレッタを見直す。それでもなお自分の娘の結婚話が二人のことで駄目になるのを防ぐために、椿姫さん辛いだろうが息子と別れてくれと頼む説得上手。私は病気で長くは生きられないと訴えるヴィオレッタを信じず、あんたはまだ若くて綺麗で優しいからいくらでも他に良い人が見つかるよ本気で思って、後でヴィオレッタの死の床で後悔するオヤジ。皆の前でヴィオレッタを罵る息子をたしなめる正義漢でもあり。


出番は少ないし、芝居的なヴィオレッタとの対決場面以外には、彼女に去られてがっくりする息子を「田舎に帰って平和に暮らそう」と慰める有名で覚えやすいけど何度か聴いたら飽きる(私は飽きてる)アリアがあるだけで、全然難しい役ではないしやりがいがあるとも思えないけど、その割には結構有名な歌手が歌ってくれて、ROHでも主役3人の顔ぶれの中ではこの役がどうみても一番豪華なラインアップで、トーマス・アレン、ジェラルド・フィンリー、ディミトリ・ホロストフスキーは地味なバリトン界で一枚看板で客が呼べるスター歌手。こんなの歌ってなくて、もっと他のやってればいいのに。バリトンは人材豊富だから上手に歌える人は山程いるんだからさ。



ベスト歌手は誰?

私が聞いたときのパフォーマンスで判断すると、


ベストはブッ千切りでジェラルド・フィンリー。何をやっても手堅いフィンリー、個性とカリスマ性には欠けるかもしれないけど、芝居ではなく歌唱力でドン・ジョバンニまで立派にやりこなしてしまう実力派。この役には若過ぎるので違和感あるけど、例の退屈アリアにうっとりしたのは初めてだから、それだけで一挙にトップ。

finley  名人芸のフィンリー

次は今回のLucicかな?発音はわからないけど名前に見覚えがあるのでROHでなにかの脇役で出たにちがいないけど、それは印象に残ってない。でもこの役は ほんとにぴったりで、年齢的にも品の良い中産階級のまっとうな初老の紳士が完璧。歌も真摯に聞かせて、今回の救世主。他がひどかったので得をしたとも言えるが。

traviata 3 今回唯一上手だったのはお父さん



3位はトーマス・アレンにしましょうかね。かつてのROHの花形バリトン、エレガントで冷血漢で魅了的なドン・ジョバンニも年を取って、これが似合うような年になっちゃった。彼にとっては軽くできちゃう役で、もちろん充分上手なんだけど、どうしてもかつてのスターは格好つけちゃうような。私がそう感じただけかもしれないけど。

allen  色男のなれの果て? トーマス・アレン



最下位は二人で分け合って、ロシアの銀髪男ホロストフスキー巨顔症ガヴァネッリおじさん。奇しくも半年前のROHのリゴレット二人組。 ディミトリ はこのときまだ30代で、どうみても違和感あり過ぎ。声が合ってりゃそれでもいいけど、あの叙情的な声ではいくつになっても歌わない方がいいような。他にもっとぴったりの役があるだろうに、リゴレットやジェルモンやって、この男はアホか?

一方ガヴァネッリおじさん がこの役をやるのは自然なんだけど、あの輪郭のぼやけた声が私は好きじゃないので、こう言っちゃお終いだけど、彼が何をやっても私にはアピールしない。ROHにばっかり来ないで欲しいなあ。


dimitri  ガヴァネッリ
                   ホロ&ガヴァ




お父さんだけで長くなってしまったので、他はまた近いうちに。