コーチングとペップトーク・・・2 | 映画でペップトークとアファメーション(Pep Talk & Affirmation)

映画でペップトークとアファメーション(Pep Talk & Affirmation)

ペップトーク(Pep Talk)とは人を元気にする短いスピーチで、コーチングの最後のスキルとも言われているそうです。映画に出てくるペップトークを通して、みなさんにもペップトークを知っていただければ幸いです。

 昨年秋頃から、コーチングの認定資格を取得されているコーチの方々からのお問い合わせや、講座の受講が増えています


・・・というお話と


 ペップトークに対する反応が大きく分けると2つのグループに分かれる


・・・というお話は、先日このブログに書かせていただきました。(前の記事はコチラ


 「ペップトークに疑問をもたれる方」の多くは


「コーチングは本人の意思決定を導き出すものだから、無理やり行動を起こさせたり、行動指針を明確に打ち出して伝えるペップトークはコーチングの理論に相反する」

という考えをお持ちです。


「コーチングはコーチが持つ結論にクライアントを導いてはいけない」という鉄則があるから、ペップトークで、なにかの行動指針に導くことはおかしい」というご意見が多いようです。


 それは、その方が学ばれたコーチングでは、そう説かれているのであれば、それを否定するつもりはありません。


 ただ、だからと言って「ペップトーク」が無意味だとか、不要だとかという誤解だけは解いておきたいので、ちょこっとだけ書いておきます。


まず、「コーチング」の語源を調べてみると、例えばウィキペディア には


 コーチングとは、人材開発のための技法のひとつ。「コーチ」(COACH)とは馬車を意味し、馬車が人を目的地に運ぶところから、転じて「コーチングを受ける人(クライアント)を目標達成に導く人」を指すようになった。


 と書かれています。(そもそも、この解釈が間違っている・・・と、お考えの方は、私を責めないでくださいね。私が書いたわけではありませんので。・・・ご自分でウィキペディアの編集に参加してください。)

 ビジネスのコーチングとスポーツのコーチングで多少の違いはあるのでしょうが、コーチングが生まれたスポーツの現場で例えると、コーチが選手を育成する過程でのコーチングには「ティーチング」が含まれます。


 プロ野球のピッチング・コーチと現役のピッチャーの例で説明してみましょう。


 このピッチャーは、一軍中堅で、若い頃は剛速球でならした先発完投型の選手ですが、年とともにスピードが落ち、速球だけでは通用しないことを自覚して悩んでいます。


 本人が悩んだ末に、自分自身が「変化球をマスターしよう」と決意して、ピッチング・コーチのところに「フォークボールの投げ方を教えてください」とか「フォークボールをマスターしたいので練習につきあってください」といって教えを求めにきたら、「フォークボールの投げ方を教える」という行為はティーチングですよね。


 「変化球を増やすか」「コントロールに磨きをかけるか」に悩んでいて、自分自身で結論がだせずに悩んでピッチング・コーチのところに相談に来たとしたら、その相談にのることはカウンセリングですよね。


 「変化球を増やしたいと思っている」というピッチング・コーチへの相談に対して、本人が「コントロールを磨く」という選択肢があるとこに気付いていないのであれば、それに気付かせるのはコンサルティングでしょうか?

 それともティーチングでしょうか?


 スポーツ現場のコーチには(ビジネスの現場でもそうですね)コーチングにおいて、「選手(クライアント)を目標達成に導く」という任務と「チーム(クライアント)を目標達成に導く」という任務があるのです。


 スポーツでもビジネスでも「マネジメントの現場」を主体に考えるなら

 ・チームや組織の目標達成

 ・そのためのチーム・ビルディング・マネジメント

 ・そのための個人の能力開発・キャリア開発

 があり、組織の目標達成のための手段なのです。


 また、逆の見方をすると「組織は人」ですから、人を大切にし、育てなければ強い組織は生まれません。


 おそらく、スポーツの世界でもビジネスの世界でも優秀なマネージャーと評価されている人、評価されてきた人は、この両側面を理解し、マネージャーとしてもコーチとしても優れたスキルとマインドを持っていたにちがいありません。


 ちょっとわかりにくいかもしれませんが、前述の投手とピッチングコーチの例をさらに展開すると・・・


 このピッチング・コーチはチーム・ビルディング・マネジメントの課題として監督から「クローザー(勝試合の終盤を締めて、勝利の可能性をさらに高める役割のピッチャー)の育成」を与えられていたとします。


 前述のピッチャーは、スピードも落ち、スタミナからも年齢的には本人が望む先発完投型のピッチャーとしてはチームの期待度は低くなっています。おまけに、若手の速球派の台頭で、先発ローテーションの枠は十分満足しています。しかし、このチームには確固たるクローザーが不在なのです。この投手がクローザーに向く資質を持っているとしたら・・・


「本人の目標」は「来季も先発完投型の投手として活躍する」ことです。

「選手(クライアント)を目標達成に導く」のがコーチの役割ですが、この投手のことだけを考えてコーチングをしていたら、チームの目標達成はできません。


・来季のチーム作りに「クローザーを育てること」がいかに重要か

・そのクローザーの適性に、この投手がどれだけ合っているいるか

 (もしくは、チームやコーチがこの投手に対してクローザー転向をどれだけ望んでいるか)

・この投手がクローザーになることで、どんな素晴らしいチームになるのか


 などを理解させたうえで、本人の目標を「来季も先発完投」ではなく「来季はクローザーでリーグNo.1」という目標設定の変更とモチベーションアップもコーチの仕事なのです。


・・・で、じゃあ「ペップトークは何なのよ?」ってことになりますが


 この投手に対して、コーチは一所懸命説得して、クローザー転向を承諾したとします。


 でも、この投手は先発完投型に未練があり、来季本当に闘えるのか、自分が役にたつのか、もし転向が失敗だったら自分の野球人生が終わるのではないか・・・といった、ネガティブなイメージや不安を新たにかかえこむことになります。


 この気持ちを察知して「ネガティブな失敗のイメージ」を「ポジティブな成功のイメージ」に転換し(「イメージのパラダイムシフト」と呼んでいます。)、不安をやる気に変え、やる気に成功の確信を加えて「さあ、始めよう」・・・と行動に移すのが「ペップトーク」の役割なのです。


 長々と書いてしまいましたが、企業の人事部の中でも「コーチング肯定派」と「コーチング否定派・否定はしないけど効果があるとは思えない派」が存在しているのは認識しております。

 しかし、両方の話を聴いていると、どうも、このコーチングとマネジメントの乖離部分を理解しているか否かの差だけのような気がします。


 ここがわかっていただければ、コーチングはもっともっと現場で役立つはずですし、コーチングとマネジメントを結び付ける重要なKey Factorが「Pep Talk」であることを知っていただければ、これらの相乗効果で、環境が大きくかえられることを確信していただけると思うのです。

 


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