さてどうなったのでしょうね。
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今朝も変わりなく女子校生達は登校してきた。
そう、そのはずだったのにとある一角でやけに人がたむろしている場所があった。
「おーちゃん、あれ何だと思う?」
「おけい、ちょっと背伸びして見えない?」
「なんかね・・・・もしかしたらコウキかも?」
「「「えええええっ?」」」
昨日、あんなに男役に悩んでいたコウキの周りにあんなに生徒がたむろしているんだろう?
でもあまり悪い感じではなく、むしろ今までのコウキの人気からすれば文化祭直後によくみられる、男役トップスター誕生っていう感じっぽい。
とりあえず状況を見に行くべく生徒の間を通って行くと、そこにいたのは昨日とは別人の様なコウキの姿があった。何? その男っぽい色気ダダ漏れさは?
「おはよう、おーちゃん」
「おはよう・・・・コウキ・・・・どうしたの?」
「どうしたって? 別に何も変わってないよ?」
「いや、どう見ても別人だしっ!」
それに周りが私たちを見る羨望の目が痛い・・・・
そこへたけちゃんののんびりした声が入った。
「とりあえず、HR遅れちゃうから教室行こうよ」
「そうだね、行こうか?」
コウキとナオキは昨日の雑誌の話をしながらさくさく歩いていったけど、何がどうなってるの???
*****
昨夜の事を考えないようにしていたけどやっぱり無理です・・・・。
切られた電話をボーっと見つめる事30分、いきなりドアのチャイムが鳴った。
ま、まさかね・・・・と思いながら画面を見た私は眩暈がしそうになった。
な、なぜ兄さんがそこにいるのかしら????
ただ、そのまま放っておくわけにもいかずドアを開けた。
入ってきたのはキュラキュラしまくった嘘毒吐き笑顔の敦賀さんに変わっていた。
・・・・余計に怖い・・・・
「すみません、私が変な電話をしたせいで敦賀さんを怒らせたのなら謝ります!!」
「いや、演技指導なら直接話をした方が早いと思ってね」
「ナツの時と言い、敦賀さんばかりを頼って申し訳ありません」
ん? あれ? 返事が返ってこない?
顔を上げると無表情になっている敦賀さん・・・・
でも考えようによっては先生が言った通り、全て見えるもの感じるものをゲットするチャンスかも!
とりあえず畳敷きの居間に入って座ってもらった。
なんか・・・・敦賀さんに畳にちゃぶ台って似合わないな・・・・
そう思いながら台所にとって返そうとした時、腕を取られた。
*****
<昨夜のside-R>
「すみません、すみません、すみませぇ~ん」
「もういいから、俺も悪かったし・・・・」
電話からこっち、ずっとイライラしたものが俺の頭を支配していたのは事実だ。
だからすんなり男を部屋に入れる最上さんの無防備さと危機感を責めようと腕を取った。
だけど・・・・
まさかその場で投げられるとは思わなかった・・・・
ここが1階でよかったよ。俺の体格だとかなり大きな音がしたからだ。
俺としては後は男を部屋にほいほい入れなければ問題ないから、ちょっとほっとしたのが事実だ。
「俺も古武道を一通りやってるから、身体が自然に受け身とったから大したことないし、ね」
「でも事務所の大先輩を投げるなどの大失態、もう切腹してお詫びするしかっ!」
「いや、切腹なんて冗談じゃないよ。それなら君の話を聞かせて?」
「あううっ・・・・」
そこで口ごもって俯いてしまう彼女に、仕方ないのでさっきのを引き金にするか。
「これだけで帰ったら俺、投げられ損じゃない?」
「はいっ、申し訳ありません! 実は・・・・学校の文化祭でミュージカルをすることになりまして」
「うん、どんな演目?」
「はい、ウェ○トサ○ド物語なのですが、主役を頂きまして・・・・」
「それはすごいね。・・・・でもマリアなら最上さん、何が問題なの?」
「・・・・です」
「え?」
いきなり小さくなった声に聞き返してしまった。
するとがばっと顔を上げた最上さんはやや涙目で叫び返してきた。
「マリアに恋するトニーの役なんです! だから恋する男の色気が知りたくてっ!」
「え?」
なぜ可愛い最上さんが男役?という疑問は、俺に初めてもたらされた情報で解決した。
女子校なのか・・・・
また社長にはめられた・・・・
それから2時間ほど、現況や作品、役柄などについて二人で話をして、更に俺は久しぶりの最上さんの手料理を堪能して帰ったのだった。
俺は自分の幸せに浮かれて、最上さんがその日に役を掴んだとはまさか思ってもみなかった。
***** つづく
結構文化祭というとこの演目は出ることが多かったような。
そして文化祭が終わると、あとは受験と卒業に向けてまっしぐら~。
今回はちょっとおーちゃん目線を入れてみました。