綺麗な華ほど…… 4 | ぺんぎんの戯言ブログ

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スキビファンが今まで読専だった駄文を書いてみました。

出版社、原作者、関係者には関係ない趣味の二次駄文です。
二次が嫌いな方や、悪戯、嫌がらせ等はご勘弁下さいませ。

因みに、基本的に尚ちゃんが好きではないので、尚好きな方は申し訳ありません。

さて蓮さんターン!

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最上さんが女子校生活を始めて二週間。今までの様に奇跡的にすれ違ったり、ちょっとした偶然が高校生活を送っている彼女との間に生まれる筈もなく、俺のテンションは最低ラインを這っていた。

今頃最上さんはどうしてるだろうか。授業中かな? それとも休み時間? いや、この時間なら武道や殺陣を手取り足取り……

武道やアクションなら俺が手取り足取り教えてあげるのに、何だってそんなじじいの所を選んで行くんだ。ああ、こんな事ならもっと早くに聞いて置くんだった!

と、いきなり肩を叩かれ我に返った。

「るぇぇん、お願いだからそんなむやみやたらと艶めいた溜め息吐くな! 被害者があちこちで倒れてるからっ!」
「え?」
「全く自覚なしかよ……。そんな先輩の姿を見たら、後輩は悲しむだろうなぁ……」
「……っ! すみません、すぐに立て直しますから」

ふ~っと息を吐ききって頭を切り替える。そうだ、俺にとって演じる事は俺の人生の中心なのだから。
そして彼女と共に切磋琢磨しながら歩ける道なのだから。

「社さん、大丈夫です。行きましょう」
「今日もびっしりスケジュール詰まってるから、気合いいれて行こうな!」
「はい、そうですね」

楽屋のテレビを消そうとした時、最上さんのCMが映った。

『アナタはどの色の唇が好き?』

そう言いながらナツの顔をした最上さんが、ぷるんっと可愛らしい唇に人差し指をあてて艶めかしく微笑む。

俺の頭はその画像に釘付けになり、先程の思考回路に逆戻り。
溜め息を吐いた社さんに終わった途端テレビを消されて、楽屋から引きずり出されるまで、そのCMが頭の中でノンストップに流れ続けていた。

*****

困った事に、蓮のキョーコちゃん禁断症状は思ったよりも早く訪れていた。

その引き金になったのが、さっきのCMだ。
実は学校編入前に黒崎監督からキョーコちゃんご指名で来た仕事だったらしい。

監督としては、デビューCMの時にピンッとくるものがあったらしいが、まだ幼さと純粋さだけがメインで撮った最上キョーコが、色っぽさを兼ね備えた『京子』になって俄然、化粧品CMで撮りたくなったという事だった。

俺もDMの撮影中、ナツになったキョーコちゃんの二倍増美人、そして蓮と一緒にインタビューを受けたDMの打ち上げの数倍美人には本当に腰が抜ける程びっくりした。

そのキョーコちゃんにいかにも冷静そうに、かつ迅速に対処していた蓮にはもっとびっくりしたのだけど。
どれだけ危機管理が徹底してるんだろう、と驚いたのに……

あのほぼ同棲状態で何もなかったと言い切る蓮の理性を疑ったものだ。

しかし撮影を終わって離れて見れば、明らかにその生活の中でキョーコちゃんへの想いが育ちきってしまったらしく、会えないこの状況にヘタレ度MAXだ。

周りのお姉さん方はキョーコちゃん恋しさに漏らした溜め息によろめいているが、俺からすれば自業自得の状況の上、他の女性を落としてどうするんだっ! と叫びたい。

すると俺の携帯が震えて着信を伝えてきた。慌ててゴム手袋をして発信元を見れば……キョーコちゃん?!
セットの端に行って通話ボタンを押した。

「もしもし?」
『あ、社さん。こんにちは。今、大丈夫ですか?』
「ああ、大丈夫だよ。どうしたの?」
『あの……』
「うん?」
『つ、敦賀さんの今日の予定はどうなってらっしゃいますか?』

えええっ? キョ、キョーコちゃんから蓮のスケジュールを確認してくるなんてっ!
嬉しい大誤算だっ!

「どうしたの、何かあったの?」
『お忙しい様ならいいんです。失礼しましたっ!』
「ままま待って、待って! 大丈夫だから。今日は21時には上がれる予定だけど」

本当は23時だが俺の手配と、蓮本人も恐らくこの話をすれば鼻先にニンジンぶら下げた馬車馬並みに頑張るだろう。

『そうですか……あのちょっとご相談に乗って頂きたいので、その時間過ぎたらお電話しても良いでしょうか?』

いやいや、お電話だけじゃなくて会いに来てやってくれ! 頼むよ、キョーコちゃん!
よしっ!奥の手だ!

「いや、でも相変わらずアイツの食生活がね、最近より酷くなっててさ。ちょっと一発きちんと……」

すると長~い溜め息が聞こえてきた。

『……またそんな事してるんですか。大体、社さんや周りの人が甘やかすから食べなくてもいいや。とかいう欠食児童が出来上がっちゃうんですよ!』
「すみません……」
『確かに暑くなってきましたから、食欲が落ちるのはわかりますが、最初から食べる気がないのとでは大違いです!』
「ごめんなさい……」

なぜか俺がこんなに怒られているんだろう……
恐らく兄妹の時も苦労したんだろう。ごめんよ、蓮がいつも面倒をかけて……

その時、後ろから規則正しい足音が聞こえて来た。
振り向いて軽く睨み付けてやる。

「社さん、どうしたんですか?」

お前のお陰で怒られてる所だよ!
でもキョーコちゃんにも蓮の声が聞こえたらしく、えらく慌てた様子が伺えた。

『っ! とにかく21時過ぎにお電話させて頂きます! それでは失礼致します!』
「えっ? あっ!……切れた」
「誰から電話だったんですか?」
「え? ああ、キョーコちゃんから」

いきなり無表情に固まる顔。

「最上さんから? 何だったんですか?」
「よく解らないんだ。でも蓮、今日は俺も協力するから21時には上がろうな」
「それは……?」
「お前に相談したいんだって。だから21時すぎに電話くれるってさ」
「そうですか」

あれ? それだけ? ニンジンにならないのか?
と思ったのも束の間、あっという間にセットに戻るとキラキラと笑いながら共演者にプレッシャーを与えながら予定より1時間半早く終わらせてしまった。

お前って本当に分かりやすいのな。
その調子でなんでキョーコちゃんに気持ちが伝えられないのかな……
20時半、蓮と別れた後に胃薬を飲んでいた。

***** つづく

さてキョーコさんは何を相談したかったのでしょう?
それは次でね。