船の大工さん「カーペンター」
今日は、『子どもの家』に欠かせない存在、カーペンター(大工さん)のお話です。
船旅が出港して数日たったある朝、嬉しいプレゼント『世界地図のパズルの棚』が届きました。
7大陸のパズルが収納できて、子どもの家の家具にもピッタリの、白い素敵な棚です。
これ、実は、カーペンターからの手作りのプレゼントなのです。
「出来たばかりだから、白いペンキがまだ乾いてないんだ。乾くまで少し待ってね」と言われ、
子ども達は「これ、作ったの~?すごいね!」と大喜び。
アルハンドロさんに、覚えたばかりの英語で「サンキュー!」とお礼を伝えると、
滅多に笑わないアルハンドロさんは、初めて歯をチラっと見せて嬉しそうに笑ってくれました。
普段はコワモテで黙々と仕事をする人ですが、子どもには弱いみたいです。
先生いわく、
「アルハンドロはね、タイプでいうと菅原文太や高倉健、
背中で仕事をする男の雰囲気だけど(古い!?笑)、黙々と子どもたちのために
質の高い仕事をする、大切な「洋上子どもの家」のチームの一員です。
この人がいなければ、子どもの家は整理がつかず、まだ混沌としていたと思うわ~」
先生が子どもの発達、楽しみのために「ここにあったらいいのになー」と思うもののリクエストを伝えると
快く「OK!」と引き受けてくれて、より良い環境作りのお手伝いをしてくれています。
7大陸のパズルを収納するこの棚をつくるときも、
どうやったら子どもにぴったりの家具ができるか、先生と真剣に議論してくれました。
「子どもの目線にあわせた高さに、このパズルがくるようにしたいし、
子どもが大人の手を借りずに、地球儀を手に取れるようにしたい」
「子どもが、自分でこのパズルを運ぶのか?」
「そう。だから、高さは最大でも90センチ。小さな手でも取り出しやすいようにしたいの」
「じゃあ、1センチくらいパズルが棚からはみだすほうがいいな。見やすいし、取りやすいように」
「ありがとう。一番下には、フォルダが入る段もつくってね」
「もちろんだ。数日以内に仕上げよう」
小さな変化にいち早く気が付く子ども達は、新しいカーテンやタオル掛けを見て
「ねえ。これ誰が作ってくれた?」と聞いてきます。
「クルーの人が作ってくれたんだよ。みんなが使う場所を作るお手伝いしてくれてるんだよ」
と伝えると、
「へえ~。うれしいねえ」と一言。
ドアノブが壊れたときには、「壊れちゃったねー」と言う保育士に、
「大工さんのクルーに頼もっか?直してもらおう!」と張り切っていましたよ。
(子どもたちの背丈にあったタオル掛け。
これもカーペンターの手作り)
船というコミュニティーは、800人の参加者、100人のスタッフと、300人の多国籍クルーが集まった
小さな「町」のような場所です。「1000人の大家族」といってもいいかもしれません。
子ども達は、廊下を歩けばみんなに声をかけられ、
スポーツデッキに行けば大学生のお兄ちゃんにサッカーを教えてもらい、本当に大切にされています。
子どもの家に参加している14人の子ども達が本当の兄弟姉妹のように仲良くなるのはもちろんのこと、
数百人のお兄ちゃん・お姉ちゃん、数百人のおじいちゃん・おばあちゃんができるのも
この船旅の魅力です。
前回参加したお母さんは、
「親以外の大人とも日常的にふれあうことが、こんなにいいことだとは気がつきませんでした。
旅をとおしてたくさんの方に出会い、親子ともにひとまわり大らかになりました」
と話してくれました。
いろんな先生が関わり、いろんな人のアイディアが集まり、
子ども達とともに成長を続けてきた『ピースボート子どもの家』も、今年でもう、3年目。
みんなの想いがたっぷり詰まった、本当に心地の良い場所になってきました。
★モンテッソーリ豆知識
「7大陸のパズル」は、大陸ごとに作られた7枚の木製パズルのことです。
小さな頃、ざらざらした触感が楽しくて、触るのが嬉しくて触れていた「国境線のない地球儀
」。
それを十分に楽しんだあと、世界への関心がもっと出てきたころに、地球儀と同じ色で
大陸ごとに色分けされた世界地図パズルに出会うことで、「あ、これしってる!」となります。
小さな子どもにとって、本物に近い立体はわかりやすいものでも、それが平面になるという
「抽象化」の理解は、簡単なことではありません。立体⇒平面の移行がごく具体的に援助されていて、
モンテッソーリさんって本当にすごいなあと思います。
(大陸ごとのパズルでは、国ごとにピースが外れるようになっていて、
スリランカのような小さな島国が、よく、なくなったりします。お気に入りの国をポケットに入れて
持ち歩く子がいたりして。 それもまた、カーペンターに作ってもらったりします。笑!)
この記事の最初にある写真で、大陸パズルのいちばん下の棚に収納されているのは「地理フォルダ」。
やはり、地球儀・地図と同じ色分けで、7大陸の色ごとのフォルダを用意して、
その大陸のことがわかるポストカードや写真、観光ガイドなどのビジュアルを世界中で集めて、
入れてあります。
「今度行くスリランカって、どんな場所だろう」 と思った子どもは、「アジア」のフォルダを開きます。
するとそこで、トゥクトゥクの写真や、色とりどりのスパイスの写真に出会い、
想いをふくらませていくことができる・・・ そんな仕掛けです。
世界中のモンテッソーリ園にある「世界と出会う」コーナーですが、
地球一周の船旅洋上にある保育園のこのコーナーは、子どもたちにとってよりリアルかもしれません。
今後もこのブログで、少しずつでも、モンテッソーリ教育の「へえ~!」をお伝えしますので、お楽しみに!