小津安二郎 浮草 | ブッチャー山のブログ

ブッチャー山のブログ

ブログの説明を入力します。

もちろん、サイレント時代の傑作ではなく、晩年の、カラーによる、戦後のリメイク作品でありますーもちろん、これも立派な作品でありますが。小津安二郎監督も、「東京暮色」にてドラマとスタイルの臨界点を経験した後、元々強かった自己反復の度合いが強くなり、ビジュアルの強化がなされていき、社会や映画界の激動が始まる中、益々、抽象化が促進していきますが、これは、小津安二郎監督の資質からして、正しい選択でした。彼は、元来が、サイレント作家であり、自由な振り付け作家でもあり、それによって、主体と客体のバランスを保つ、そういう作家であり、それこそが、映画というジャンルに相応しいスタンスであったわけでもあります。トーキーでカラーであり、ある種のリアリティが問題になる媒介ではありますが、小津安二郎監督は、自身のスタイルと、映画の本質を本能的に知っていただけに、このような抽象絵画のようなスタイルで作り上げていきました。下手な主体性や心理的なものに足を引っ張られることなく、画面の中に、リアルに感じられかねない条件を満たしながら、物体的な表象、或いは、一種のシンボリックなスタイルの中に、強固な小津スタイルを作り上げた中に、晩年には少なくなった、強い芝居をー京マチ子と中村雁治郎のどしゃぶりの中の罵りあう姿を見よ!ー定着させることに成功しています。小津安二郎監督が、実はバイオレンスをやらせたら超一流だということも立証されています。中村雁次郎が若尾文子を蹴飛ばすシーンも見逃せません。川口浩と若尾文子のキスシーンは、何か薄気味悪いですが(笑)ともあれ、山田洋次の「寅さんシリーズ」が如何にダメか、これを観ると実感できます(笑)