恋色な日々は突然に:2 (吉祥寺恋色:Short:佐東一護) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
吉恋一護 誓い大和 怪盗流輝 スイルム英介 お気に入り
日々の出来事など。

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吉子は○○***で表してます。


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「○○***。佐東一護。」


放課後残らせた二人。


教台の前で突っ立つ姿 ひとりは俯きひとりはそっぽを向いている。


対照的な二人を 教台に肘を付け顎を手の甲にのせたまま見上げるオレは相当イラついた顔をしているだろう。


「○○は30点。佐東は…」


朝一やらせた小テスト。答案用紙を目の前に翳して見せる。


「0点。」


「え?」


途端に緊張した面持ちだった○○が目を見開いて佐東を見つめた。


「…苦手なんですよ。物理。」


オレを斜め上から見下ろす視線はやけに尖っている。


「ふ~ん…。」


めんどくせぇヤツがいたな…。


小刻みに頷きながら その尖った視線を見返した。


・・・・


クラス全員の成績は昨日夜に目を通していた。


○○は基礎を叩き込まなきゃならない奴だってことは納得。けれど佐東に関しては早々に省いた生徒だ。


「全部空欄ってなんだよ。」


「全っ然分からないっすね。というより物理自体に興味ないっていうか。」


そう言って鼻で笑って


「俺、ケーキ屋だから。将来必要ないでしょ。」


…こいつのこの言葉の裏に何があるのか。


「まぁそれでもそれなりの点数取らなきゃ進級も出来ないし。補習受けますよ。」


「…。」


何考えてんだ、こいつ…。


まっすぐに向けられる瞳を見つめ返す。


少なからず 佐東は一対一で教える必要がない奴だった。


クラスの中じゃ成績は上位組 物理が得意科目とまではいかないまでもこのペースでいってくれりゃぁ良い奴


それなのに敢えての空欄?オレと一対一での指導を希望とは。


「よろしくお願いしまぁ~す。」


そのダルそうな態度と声…何考えてんだんだって表情を通してこいつの心理を読もうとした時


「いっちゃん、お腹痛かったの?」


「は?」


○○が恐縮した様子で佐東に話掛けた。


「だっていつもいっちゃん、物理私に教えて…」


「うるせぇ。お前よりは出来るってだけだろ。」


「え、でもこないだのテストだってハルくんより…」


「黙れ、ブス。」


「またブスって言った。いっちゃんいっつもブスブスって!」


「ブスだからブスって言ってんだよ。こっち見るな。」


目の前で繰り広げられる二人の会話 遠慮ない言葉に 呆気に取られる。


「子供の頃から意地悪ばっかり。」


「お前がトロいからだろ。」


…はぁ~ん…。


頬を膨らませる○○に 目を泳がせる佐東…そんな二人に今度はオレが鼻で笑う番。


佐東の心理は彼女へと向けられる視線ではっきりする。


個人指導確定な彼女に合わせて敢えての空欄…ふ~ん。


「…なるほど。」


…そういうことか。


大きく息を吐き立ち上がり 二人を見据えた。


「期末まで放課後ここで待ってろ。課題も出すからそれも提出するように。」


えぇ~…とため息をつく○○は確かに可愛い子だった。


成就していない恋はなかなかの男前な佐東を苦しませているらしい。


子供の頃からだと…初恋の相手?まぁ分からないけれど、たぶんそんなとこなんだろう。


「もう補習の必要がないとオレが判断するまで毎日だからな。」


まさかのオレがキューピッド…って、悪いがそんな生徒の恋に付き合ってるほど暇じゃねぇ 


「どっちが先に解放されるか競争だな。」


オレのその言葉に佐東はピクリと目元を動かす。


どっちにしても嫌なんだろう。彼女をオレと二人にするのも オレと二人になるのも。


「どっちが先だろうな。まぁ頑張れよ。」


ハイ!と元気良い返事を返す○○と まるで睨むかのような佐東。


どんな理由だろうと空欄で提出するっていうその行動が気に入らなかった。


ちょっとぐらいの意地悪し返したって文句は言わせねっつの。


「ビシビシ、やるからな。」



・・・・



「大和先生って厳しそうだよねぇ。」


商店街への帰り道 愛しの幼なじみと歩幅を合わせる。


「あ~あ。物理じゃなかったらなぁ。」


「…。」


***の言葉ひとつひとつがムカつく。


鴻上先生ではなく大和先生。物理ではなく例えばお前の得意な現代史だったら嬉しくて堪らない放課後なのかって。


「あ~あ…。」


思わず出るため息…俺と一緒でどうこうなんてちっとも気にされていない。


「ねぇ、いっちゃんお腹痛かったの?だから答え書けなかったの?」


ヤキモチ妬いたから、だなんて全然分かっていないこいつに


「…超痛かったんだよ。」


俺ってなんかダサくね。


・・・・


それでもこうして毎日二人で帰ることが出来るなら気持ちの一握りでもこいつに伝わることを願う。


でないとわざわざ残って勉強なんてしたかねぇし…

ってことより、


「…にしても鴻上ムカつく。」


「え?」


「なんかムカつく。見透かしたような目で見やがって。」


俺に向けられた上から目線の笑み。こいつではなく鴻上に俺の気持ちはバレてしまった気がした。


「マジムカつく。」


ナメられたような…そんな気がして。けれど***の発した言葉にそんな気持ちは吹っ飛ぶ。


「…でも良かった。」


「あ?」


「いっちゃんが居てくれて。やっぱり一人じゃ虚しいし。」


少しだけ頬を赤らめた***がめちゃくちゃ可愛い…。


「…ブスでバカって最悪だもんな。」


「もう!いっちゃん!」


・・・・


明日から始まる個人指導。


俺らの距離がちょっとでも近づくように少しだけ…期待した。



next

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