恋色な日々は突然に:3 (吉祥寺恋色:Short:佐東一護) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
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日々の出来事など。

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毎日個人指導ってわけにもいかないようだった。


「佐東、○○、放課後だけど…」


眉間にしわを寄せ申し訳なさそうな鴻上の表情は日に日に増えていく。


まぁそりゃそうかも、いくら赤点取らさないようにって言ったって着任早々生徒二人の為だけに時間は取れないんだろう。


「あぁ、はいはい。」


だけど鴻上は帰ろうとする俺と***を必ず引き止めて


「今日分。出来たら職員室持ってきて。」


「は。」


「こっちが○○分。こっちが佐東。」


「げ…。」


決して俺らを解放しようとはしなかった。どうやってでも課題をこなさせようとして…


「やっぱり厳しいね、大和先生。」


唇を尖らせペラペラとプリントを捲る***は逃げ出したくて堪らないよう。


「ったく…めんどくさ。」


同感だとダルそうに座る俺だけれど まぁこっちからしたら願ったり叶ったりで。


いると思っていた鴻上がいない。


ハルや剛史、空気を読めないリュウ兄も こいつにすぐに抱きつく理人に父親面して小うるさいマスターも


「さっさとやれよ。置いて帰るぞ。」


「分かんないよ、いっちゃん教えてよぉ。」


いねーんだよな、俺の独占状態。


泣きつく***を手で払いながらも気分は良かった。


夕焼けに染まる二人きりの教室。開け放たれた窓から時に入る風に ***の髪から甘い香り…


「いっちゃんが先生だね。」


「ちゃっちゃとやってサッサと帰ろうぜ。」


こいつと二人きり。そんな小さな幸せを与えてくれた鴻上に多少なりとも感謝して。


あいつは結構考えていた。だって俺と***、全く違う課題を毎日出してきたから。


俺がわざと白紙でだしたってバレてるらしい。俺にはソコソコに頭を使う応用問題で。


「いっちゃんの難しそう。」


「お前のが簡単すぎるんだよ。」


俺と***、それぞれの問題に目を通しているうちにお互いの予習復習なんてことにもなる。


ただ残させるだけじゃなく結構的を突いた鴻上のその課題に ちょっとだけ俺も真面目にむかったりした。


「まだ解けないのかよ…。」


時間を縫っては教室に顔をだす鴻上。


「これ難しすぎるんじゃねぇの。」


拗ねる俺と


「先生、できた!」


目を輝かせる幼なじみ。


「佐東 お前、○○に追い抜かれるぞ。」


ニヤニヤ笑う鴻上に


「こんなバカ女に?ありえないから。」


「もう!いっちゃん!」


生意気な口利いちゃう俺だけど 自然と…そう、自然と 鴻上に笑顔を向ける回数が増えた気がした。



・・・・


結局佐東に○○を任せたようなカタチになったな…。


職員室から見える夕焼けを見ながら 教室で課題をこなしているだろう二人を想う。


「ふぅ~…。」


なるべくあいつらを気にしてやりたかったけれど試験が近づけば近づくほどこっちこそ学校に振り回される。


それでも必ず一回は教室に顔を出していた。


元々オレが言いだしたこと…なのに中途半端な形でしか達成できていない。そんなもどかしさがあったからだ。


けれどそのわずかな時間に見直し教えてやることでこの二人は随分と問題をこなせるようになった。


「ヤバい…俺、試験100点かも。」


最初こそ突き刺す視線を向けていた佐東だって日に日に表情が緩んでいく。


もちろん、躓いていた問題が解ける、なんて達成感もだが、それもしかり


きっと○○との距離が多少なりとも縮まったんじゃないか。まだ成就はきっとしていないだろうが、


佐東の態度が変わったことはこの時間は無駄ではなかったことが伝わった。


「そろそろ…」


二人同時に解放してやるか。…なんて…思っていたけど。


・・・・


試験が三日後に迫った放課後。


いつものごとく○○と佐東が補習をしているだろう教室へと足を向ける。


「あれ?佐東は?」


だけれど夕焼けに染まり始めた教室には○○しかいなかった。


「あれ?入れ違ったのかな?もう課題終わったから先生に出してくるって職員室持っていったよ。」


○○はもう鞄を手に持ち佐東待ちのようで…


「そうか。部活動で外にいたからな…」


そう運動場を指さした時


「…ねぇ、先生。」


「ん?」


○○は顔を伏せ目をキョロキョロとさせる。


その頬が赤く染まったような気がしたのは夕日のせいか


「どうした?」


○○はふぅ…と細長い息を吐きスッと顔を上げた。そして


「…あの…先生。」


「うん。」


「…あの…」


・・・・


…彼女の話を聞きながら 佐東の笑顔が目の奥でチラついて仕方なかった。



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