空海と 『いろはにほへと』 | ⋆

空海は、仏教のさまざまな宗派だけではなく、

神道、儒教、道教などさまざまな宗教をも関係ない世界というのを目指していたのです。


高野山 では、身分や生前の因縁を越えて、いろんな方のお墓があるのですが、

それは、現世にも必ずやあらわること、とわたしも信じています。


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●いろはにほへと


『涅槃経(ねはんきょう)』の

「諸行無常 是正滅法 生滅滅己 寂滅為楽」を表すと云われる。



いろはにほへと ちりぬるを


わかよたれそ  つねならむ


うゐのおくやま けふこえて


あさきゆめみし ゑひもせすん




色は匂へど 散りぬるを



香りよく色美しく咲き誇っている花も、やがては散ってしまう。
諸行無常(しょぎょうむじょう)


我が世誰そ 常ならむ



この世に生きる私たちとて、いつまでも生き続けられるものではない。
是生滅法(ぜしょうめっぽう)


有為の奥山 今日越えて



この無常の、有為転変の迷いの奥山を今乗り越えて
生滅滅己(しょうめつめつい)


浅き夢見じ 酔ひもせず



悟りの世界に至れば、もはや儚い夢を見ることなく、

現象の仮相の世界に酔いしれることもない安らかな心境である。
寂滅為楽(じゃくめついらく)



※「いろはにほへと」や片仮名は、空海作という説があります。


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●綜藝種智院(シュゲイシュチイン)

   

庶民のための学校を創設し、教える者にも学ぶ者にも「衣食を調える」という世界でも類例ない学校。



   「素晴らしい料理は一つの味からは生まれないし、名曲は一音からでは成らず


    まして人の心は動かせない。人も幅広く学ぶことで成長し、国も栄える。


    しかし今は寺院では仏教のみしか学ばず、大学では儒教しか学べない。


    物の興廃は人による。人の昇沈は定めて法による」


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空海は、学んだだけの密教には満足していなかった。


密教は仏教の中での完成点、到達点ではあった。しかし空海はさらにその臨界点を超えようとしていた。



仏教の中だけで完成させても、他の思想宗教を含まなければ真の完成にはならない。


アジアには他の宗教や思想を取り込むという許容性があった。



空海は若い頃から、他の思想にも深い興味と正しい理解をもっていた。


唐長安では、世界中の宗教思想に触れていた。


そのすべてを矛盾なく包み込む、巨大な思想の大マンダラを見ていた。




◆阿部龍樹 『空海の詩』


にほんごであそぼ ほか