中村 勘三郎さん | cardioのブログ

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大学院生でもあり、専門医を持つ医者でもある、そんな人って何をしているのだろう・・・そんなブログ。


中村 勘三郎さん、亡くなりましたね。ご冥福をお祈り申し上げます。

死因は急性呼吸促迫症候群ARDSとのことです。
肺炎を契機に、ARDSになったのでしょう。

ARDSは、酸素化が急に悪くなって、心不全と同じようなレントゲン像を取ります。
ARDSの定義として、心不全ではないというのもあったと思います。
心不全と似ているが故に、よく循環器内科医が呼ばれます。
心不全かそうでないか、調べてください、みたいな。
正確には、カテーテルを静脈から心臓内に入れて検査して確定することが多いです。

診断をつける時点で、そうとう重症で、
すでに人工呼吸されてたり、100%酸素投与でも、呼吸状態が悪かったりするので、
検査も一苦労なのですけど・・。

ARDSになると、ほぼ助かりません。
きれいな草原を想像してみてください。これを肺とします。
緑があって、空気がきれいです。
そこに火事が起こって、残ったのは焼け野原のみ。
これでは、空気をきれいにできません。
ARDSはそんな火事が起こったような状況です。
火事が運良く収まっても、肺のダメージは大きく、元のような肺機能ではありません。
重い、呼吸不全が残ります。

まだ有効な治療法はありません。

ARDS自体、肺炎、輸血、外傷などから発症するもので、
原因がはっきりしている訳ではなく、何らかの原因で、体中の免疫状態が変な風に応答して、
肺に大きな炎症を起こす・・・こんな感じでしょうか。

まだ50代での早すぎる死。
もちろん、歌舞伎界のスーパースターであり、その損失は計り知れないようです。
病はやはり恐ろしいです。