$圏外の日乘-『アイドル・ミラクルバイブルシリーズ/宍戸留美』
(Sony Music Direct MHCL-686、2005.11.30)

ソニーレコード在籍時の
シングル曲を集成したものに
2枚のアルバムから5曲を収めた
アイドル時代のベスト盤です。

『ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・
 シ・シ・ド・ル・ミ』
(1990)の1曲目が
デビューシングルのタイトル曲と
4th シングルのタイトル曲の
コラボであることを知り
オリジナルを聴きたいなあと思っていたら
Amazon でまだ在庫があったので
ソッコーで買いました(苦笑)


いやあ、すごかった(笑)


デビューシングルの
『コズミック・ランデブー』(1990)こそ
普通のアイドル曲ですが
セカンド・シングルの
『ナクヨアイドル平成2年』(1990)あたりから
もう、オカシくなってくる。
(いや、いい意味でいってますから。念のため)

いってみれば、小泉今日子の
「ヤマトナデシコ七変化」(1984)や
「なんてったってアイドル」(1985)の
平成ヴァージョンですけど
そのカップリング曲が
「恋のロケットパンチ」だからなあ。


サード・シングルが
こちらでもふれた
『Panic in my room』(1991)で
これをシングルカットする
スタッフの感覚がすごい。

カップリングは「コンビニ天国」で
これも『ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・
シ・シ・ド・ル・ミ』に入ってますが
コンビニ自体が珍しい時代に作られながら
(だと、どこかで読んだ気が……)
現代でも通用する名曲であります。

まあ、Hな雑誌は今では
紐がかかったりシールで封印されたりしてて
簡単に立ち読みできなくなりましたが(笑)


4th シングルの『地球の危機』(1991)は
こんな歌だったのかー!
と、びっくりでありました。

特撮ファンと
戦闘少女ものファンは必聴か、と(笑)


5th シングルの『おとこのこ』(1991)は
今をときめく角野栄子の作詞ですが
これは角野の小説
『アイとサムの街』を原作とする
ドラマの主題歌だったからみたいです。

そのカップリング曲が
「Here Comes the るみちゃん」で
M. C. ハマーのカバーのようですが
これがタイトル曲とは真逆の雰囲気の
ぶっ飛び曲でして
「ナクヨアイドル平成2年」の
過激バージョン、という感じ。

アイドルの曲なのに
ピーと伏字が入るって……

それをカップリングにして出す
スタッフの感覚が(以下同文)


6th シングルの
『男のコが泣いちゃうなんて』(1991)も
すごいですが
(これもカバーなんですけど)
カップリング曲の「ダンスの神様」は
『ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・
 シ・シ・ド・ル・ミ』に入っている名曲
「ロックの神様」の姉妹編というか
別バージョンの歌詞で、これは(これも)すごい。

当時は『いかすバンド天国』(1989-90)
通称「イカ天」が放送されたあとで
たぶんロック少年やバンド少年が
いっぱい輩出したんでしょうね。

「ロックの神様」や「ダンスの神様」は
そういう世相を背景にしてるんだと思うと
なかなか深いものがあります(うんうん)


7th シングルが、前にも紹介した
『恋はマケテラレネーション』(1992)です。

カップリング曲の
「なかよしお泊り倶楽部」の発声は
まるで瀬川おんぷそのものな感じ。


その他に
『ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・
 シ・シ・ド・ル・ミ』から
傑作の「るみちゃんの危機」と
「秘密よ DIET」、
バラード調の
「二人は映画みたいにいかないね」が、
そして『プンスカ』(1992)から表題曲と
前にもふれた「ママ、悩んでるよ」が
収められて、全19曲です。

「プンスカ」は
シングルカットされても
おかしくなかった曲だと思いますが
聴くたびに
「いいもん」というタイトルの曲かと
思ってしまう、というのは
まあ、ここだけの話です(笑)


宍戸留美がデビューした頃は
いわゆるアイドル冬の時代にあたり
おニャン子クラブによって平民化したのと
芳賀ゆいという架空アイドルが
人気を呼んだのとの相乗効果で
主にテレビを媒体とするアイドルの
受難時代だったようです。

宍戸留美と同期の高橋由美子が
「20世紀最後の正統派アイドル」
といわれてたりしてた時代です。

まあ、自分は例によって
あまりテレビは観てなかったので
こういうのは後に本などから仕入れた
知識なんですけどね。

宍戸留美がテレビの歌番組に出て
このCDに収められている曲を歌っているのとか
営業でファンの前で歌っている場面とかは
まったく知らずに過ごしてました。

ちょっとテレビで歌ってるのを
観たかったかもなあ(苦笑)

正統派アイドルが成立しにくい時代なので
必然的にバラドル化していく流れもできました。

バラドルというのは
バラエティ・アイドルの略で、
歌がメインというより
バラエティ番組での語りや
キャラの面白さで勝負するアイドルのことです。

宍戸留美はバラドル化を拒否して
事務所から干されるような事態を招いたようですが
このCDに収められている曲を聴けば
バラドル路線を示唆されたのも
分からないではないですね。

ただ、歌ではキャラとして
バラドルっぽい演出を受け入れても
それは自分とは違うという
強い意志があった
ということになるわけでしょうか。

本CDのライナーに載っている
直筆コメント(を印刷したもの)にも
「私的には優しい歌が好きだったけど」
と書いてあるのが印象的ですね。

なにはともあれ
そういう冬の時代に
正統派ではなく
独特の個性を出した一人のアイドルの
軌跡を辿るのに好個の一枚
と、まとめると、綺麗すぎますけど
まあ、今聴いても面白いです。
それは確か。保証します。


ちょうど宍戸留美がソニーを離れた頃
バブルが弾けるんだよねえ。

そういう時代世相も
アイドル受難に棹さしてるように思いますが
そこからライブ・アイドルに転身し
声優業を経て
今の地位を築いているんだから
これはすごいよね。脱帽です。