イヌを叱るがうまくいかない理由 その4 イヌを叱るのほんとのところ7 | わんこも、そして飼い主さんも

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「イヌを『叱る』が、うまくいかない理由 その4」です。

とりあえず、これまでのエントリを以下に並べておきます。
一応、通しで読んでいただけると幸いです。

イヌのしつけと体罰(罰)
「イヌを叱る」のほんとのところ
「叱るメリット」 イヌを叱るのほんとのところ2
「叱るデメリット」 犬を叱るのほんとのところ3
イヌを「叱る」がうまくいかない理由 その1
イヌを「叱る」がうまくいかない理由 その2
イヌを「叱る」がうまくいかない理由 その3

では、早速まいりましょう。

イヌを「叱る」がうまくいかない理由 その4
そもそもすごく難しい


「なんだそんなことかよ」とお思いかもしれませんが、結構見落としがちなことでもあると思います。

プロの中には、とても「叱る」のが上手な方というのがいらっしゃいます。
プロではない方の中にも、上手な方というのがいらっしゃいます。
生まれ持ったセンスというものもあるでしょうし、毎日のように自分を「訓練」して、できるようになったという方もいるでしょう。
元々センスがあったという人(そしてそういう人は、しつけで困ることがほとんどない)は別として、そうではない人が「叱る技術」を身につけるのは、一朝一夕では難しいと思います。

何度も書いていますが、「叱る」というのは「行動の最中、または直後になんらかの刺激を与えて、その行動を減らす行為」です。
そして、その「なんらかの刺激」というのは、イヌにとって「デメリット」である必要があります。

 「どんな種類の刺激ならデメリットになるのか?」
 「どんな強さの刺激ならデメリットになるのか?」

こうしたことを、瞬時に見極めて、「適切なタイミングで」与えることができなければ、なかなか「叱る」というのは成立しません。
大体の場合「その場では収まっても、後日また同じことを繰り返す」ということになります。

しかしそうなると、前回のエントリでも触れたように「その場では収まっている」ので、叱った側は「叱ったのがうまくいった」と「錯覚」してしまい、後日同じことを繰り返したときも、再び「叱る」という対応を取りがちになります。
すると、段々とその刺激に馴れていきますから、「その場でも収まらない」ということになります。
あとはもうおわかりかと思いますが、段々と「強い刺激」を与えていく流れに乗ってしまう可能性が出てくるわけです。※1
そして、イヌは飼い主のことが苦手になり、最悪の場合「飼い主への攻撃行動」が出てしまうと。※2
しかし「攻撃行動」は「悪いこと」ととらえられることがほとんどですから、ますます「叱る」ことになるわけです。
時々「しつけは戦いだ」という言葉を見たり聞いたりしますけれども、それは違うと思います。
わざわざ戦いに持ち込んでるだけ」だと思うんです。

※1
「うまくいっていたことが、うまくいかなくなった」
こういう状況になると、大体は「行動の頻度や強度が増加する」というプロセスを辿ります。
専門的には「消去バースト」と呼ばれる現象です。
この場合は「それまでうまくいっていた叱り方が、うまくいかなくなった」となるので、「より強く叱る」という現象が起こるわけですね。


2
「刺激が強くなっていく」ということは、すなわち「段々とイヌに痛みを与えていく」ということに繋がっていくことが多いです。
そして「痛み刺激」は、攻撃行動を誘発する可能性が高いことが、すでにわかっています。
僕がよく言うたとえは「タンスの角に足の小指」です。
タンスは悪くないのに、タンスを「攻撃」してしまったりしますよね。


じゃあ、こういう状況にならないように「叱ろう」と思ったら、どうしなければいけないか?
それは俗に言う「一発で決める」ということを目指す必要があります。

つまり。
「1回の叱りで、今後その行動が繰り返されないような強さの刺激を、適切なタイミングで与える」
これが求められます。

で。
それって、できますか?ということなんですね。
センスがある人、そういう技術を持っている人は、できるんだろうと思います。
でも、そうでない人は、そういう技術を身につけるために「練習」する必要があります。

誰で?

自分のイヌで?

自分のイヌを叱る練習?

やりたいですか?そんなこと。

多分嫌だと思うんですよね。

そうなると、なかなかそういう「技術」は身につきませんから、当然「叱る」のもうまくいきません。
そしてこれがそのまま、「イヌを『叱る』がうまくいかない理由」の4つ目になります。

難しいんですよ、叱るのって。

多分ですけど、思うんです。

 「叱りたくて叱ってる人なんていない」

あなたは、どうでしょうか?

 「叱らずに済むんなら、それに越したことはない」


こう思いませんか?

 「でも、叱らないとダメなときもあるんでしょう?」

実はその前提が、違っていたらどうですか?

 「叱らずに済む方法があるの?」

あるとしたら、どうですか?

続きます