イヌを「叱る」がうまくいかない理由 その3 イヌを叱るのほんとのところ6 | わんこも、そして飼い主さんも

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「イヌを『叱る』が、うまくいかない理由 その3」です。
その1は「正しい叱り方は存在しない」で、その2は「結果的に褒めてる」でした。
3つ目も、1つ目2つ目と、大体同じようなことです。

イヌを「叱る」が、うまくいかない理由 その3
「うまくいった」と錯覚しちゃう


錯覚するのは、もちろん人間側です。
どういうことか、もう少し詳しく見てみましょう。

「叱ってるのにうまくいかないランキング(TaKaYaMa調べ)」で、毎年上位にランクインするのが、いわゆる「無駄吠え」です。
というか、ほとんどの飼い主さんは「無駄吠え」を「叱って」らっしゃいます。
が、結果的に減るどころか増えちゃうので、ご相談に見えられます。
「叱ってるのに減るどころか増えちゃう」のは、前回のエントリにも書いた「結果的に褒めてることになってる」のが原因なんですが、なぜか「叱る」のをやめません。

「叱る」のも「行動」です。
ということは、そこにはなんらかの「行動が起こる理由」というものがあります。

さて、今あなたのすぐ側に「わんわんわんわん」と吠えているイヌがいるとします。
ひょっとしたら、まさに今、吠えている愛犬のそばでこのブログを読んでいる方もいらっしゃるかもしれません。

うるさいです。
とってもうるさいです。
本やネットでは「無視をする」ということがよく書かれているのを何度も目にしたあなたは、極力無視をしようと頑張ります。
でも、「吠え」は止まりません。
うるさいという状況は、非常に嫌悪的です。
近所迷惑にもなるかもしれません。

ああどうしよう。
今すぐにでも止めたい。

そんなことを考えていたら、いくつかの言葉を思い出しました。
ネットで読んだのか、本で読んだのか、近所の人に教わったのか忘れましたが、それらはこんな言葉でした。

 「悪いことをしたら、きちんと叱らないといけない」
 「無視をしたところで、イヌは反省しない」
 「時にはガツンと言ってあげることも優しさであり、愛情」
 「間違っていることは間違っていると教えてあげるのが、
  その子のためになる」
 「イヌは、毅然としたリーダーに従う生き物」


そうだ。
そうだよ。
「ちゃんと叱ってあげる」ことが、この子のためにもなるんだ。
無視なんて甘っちょろいことしてるから、この子はどんどん増長するんだ。
でも、さすがに殴ったりはなんか嫌だから、まずは「ダメ!」と言ってみよう。

そして、言いました。
イヌの方に向き、しっかりと目を見て、「ダメ!」と。
するとどうでしょう。
先ほどまでしきりに吠えていた愛犬が、黙っているではないですか。
しかも、なんだか反省しているかのようにも見えます。

やった!効いた!うまくいった!
こうして、あなたは「静かな暮らし」を手に入れたのでした。
めでたしめでたし……とはならないんですよこれが。

何度も書きますが、行動には理由があります。
イヌの「吠え」にも、理由があります
大体、「無駄吠え」ってネーミングがよくないんですよねー。
なんか「意味のない吠え」って感じがしますでしょ?
あくまでも「人間にとっては意味のない吠え」なんであって、イヌにはものすごく意味のある吠えなんですよ。
「無駄吠え」って言葉なんかなくなっちゃえばいいのに。

ちょっと話がそれました。

さて、「ダメ!」と叱りました。
イヌは黙りました。
「黙ったってことは、叱られたってことがわかったんじゃないの?」と思うかもしれませんが、実はそうではありません。

簡単な話です。
「オモチャ買ってー!ゲーム買ってー!お菓子食べたーい!ジュース!ジュース!ジュースゥゥゥゥゥゥ~ッ!!!」と喚く子供。
そんな子に「オモチャ」や「お菓子」や「ゲーム」やなんやかんやを与えたら、はいその子はもっとわめくでしょうか?

「そりゃ、またそのうち喚きますよね?そうすればわがままを聞いてもらえるって覚えるから」

いえいえ、ここで聞いているのは「与えた瞬間」の話。

 買ってもらえない-喚く-買ってもらえた

この後、その子はどうしますかね?
買ってもらったにもかかわらず、喚き続けますかね?
喚き続けませんよね?
黙りますよね?

イヌも吠えてますね?
叱ります。
黙りました。

おやおや?
なんだか似てませんか?

駄々をこねる子供に何か買ってあげるのと、「無駄吠え」という名のイヌにとっては無駄ではない目的を持った吠えを叱るのとは、実は「同じこと」だったりするんです
これは、前回のエントリの「褒めてることになってる」という話そのままです。

しかし、「叱った側」は、そうは思わなかったりします。
だって「黙らせるために」「叱った」わけです。
すると、実際に「黙った」わけです。
ここで「錯覚」が起こるんですね。

 イヌ目線
  構ってもらっていない-吠える-「ダメ!」と構ってもらえる
 飼い主目線
  吠えててうるさい-「ダメ!」と叱る-静かになる


「褒める」と同様、その瞬間だけでは、その対応の正誤はわかりません
大切なのは「その後」です。

もしもイヌを叱って、また別の日の同じような場面で、叱ったはずの行動がまた起こっているのだとしたら、その「叱り」はまったく無意味です。
飼い主さんの「ダメ!」は、まさに「無駄吠え」なんですね。

でも、「叱ったその瞬間」は、黙ってくれたりします。
イタズラをやめてくれたりします。
なんなら、お腹を見せることもあるかもしれません。
そして、「錯覚」するわけです。

この錯覚にはまらないようにするためには、「繰り返しの視点」を持つこと。

 「また同じ行動が繰り返されるかどうか?」

このことに注意しながら、行動をじっくり見ていくわけです。
もしもまた繰り返されたらどうするか?
そりゃあ、より強い刺激を与えるか、叱るのをやめて、別の方法を探すかです。

ただ、「より強い刺激を与える」という選択をする前に、「そんなことをするためにイヌと暮らし始めたの?」と、自分の胸に一度聞いてみていただければ幸いです。

もしもその答えがNO!だったのなら、お手伝いできることはたくさんあると思います。
もしもその答えがYES!だったら、もうちょっとこのブログを読み続けてもらうか、メールかなんかください。

というわけで、なんかやけに長くなりましたが、「イヌを『叱る』がうまくいかない理由 その3 錯覚しちゃう」でした。

続きます