今回は子供の頭部打撲について書きます。
ちょうど歩き始めた頃の子供は、まだ運動機能や注意機能が発達していないので、
よく転びます。
また、歩き始める前の時点でも子供は椅子から転がり落ちたり、または親の不注意で落下してしまったりします。
その際に多くの場合は頭もぶつけてしまうのが問題です。
子供が頭をぶつけたら心配に思うのは親であれば当然のことです。
残念なことに、通常、小児科は頭部打撲は診てくれないので、
そうすると親御さんたちは頭をぶつけたかわいそうな子供を脳神経外科に連れてきます。
小児科にいったとしても、
「脳外科でみてもらってくださいねー」と言われてしまうのだそうです。
まあ、これは、頭をぶつけた子供が鼻かぜをひいていたとしても、
僕らだって「風邪は小児科でお願いします」と言ってしまうものですから、
正に、どっちもどっちですね。
そうして訪れる小児の頭部打撲を僕ら脳外科医は毎日のように診るわけですが、
いつも考えさせられるのは頭部CTについてです。
実際、たとえ頭をぶつけても、その後の子供の状態が特に問題のない場合、
CTを撮って異常が見つかることはほとんどありません。
稀にひどい頭部打撲をした際に骨折が見つかることくらいはあるのですが、
脳のまわりに出血を起こしていたり、脳がひどく腫れたりしていることはまずないのです。
小児の頭部打撲では重症例がほとんどない、ということではなく、
重症の場合、やっぱり一目見て何かおかしいことが分かるのです。
ただし、新生児や乳児の場合はもともとしゃべることが出来ないので、
成人のように簡単に意識状態を確認する訳にはいきません。
たとえば、ぐったりしているとか、元気がないとか、
普段との違いで判断します。
その第一印象で、「これは何かおかしい」と思うようなことがあれば、
それは重症の可能性があると思いますし、CTを撮影することに何の躊躇もありません。
しかし、
「元気だし特に悪そうにないな」と感じることが実際はほとんどです。
そして、繰り返しになりますが、
そういった場合に頭部CTを撮っても、ほとんどのケースでは何の異常もありません。
大きく予想を裏切って、予想外の重症なCT像だった、というようなことは、
少なくとも私自身のこの10年の経験では1例も記憶にないくらいです。
だからこそ、
常に「ほんとうにこの子の頭部打撲でCTが必要なんだろうか??」と疑問に思ってしまうのです。
じゃあ、そんなこと言うなら、CTなんか撮らなきゃいいじゃないか!
と、ここまで読んで思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、
脳外科医が結局はCTを撮影する方向に流れてしまう理由はいくつもあります。
それについて次回に続きます。
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