ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」


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頭痛というと、

脳外科でも内科でも、様々な科が扱う症状です。


誰もが一度は自覚したことのある症状でしょう。


今回は冬の頭痛についてです。


ここ最近というものの、とにかく頭痛の患者が外来に多いように思いますので。。



さて、その前に、今回もちょっとお知らせです。


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さて、本題に入ります。

頭痛があると、

何か頭や脳に異常があるのではないか??


と心配されて脳外科を受診する患者さんが多いです。

一番の受診理由は、

脳に何か異常が起きていないか??という心配があるからでしょう。

頭痛が起きやすい冬場では、

特にそういった患者さんが多いのです。

しかしながら、

頭痛の原因が脳にある人はそういった患者さんのうち、100人に1人もいません。

実際に外来をやっていても、非常に稀です。

多くの患者さんが、

頭蓋骨の外側に頭痛の原因を持っています。

つまり、

実は、頭痛で脳外科を受診し、頭部のCTやMRIを行ったとしても、

その原因が見つかることなんて、めったにないのです。


「脳には特に異常ありませんね。頭痛はあったとしても命に別状はないですよ」

と、説明されて終わりでしょう。

それでも、患者さんは

「まあ、脳に問題がないのであれば、一安心」

ということで帰って行きます。

それでは、

多くの頭痛は何が原因かというと、


頚部や肩の筋肉に原因があることがほとんどです。

重い頭部を支えている筋群です。

寒いところにいると、

首や肩周りの筋肉に自然と力が入りますよね?

それによって普段より肩こりや首の筋肉の痛みや疲れを意識される人も多いのではないでしょうか?

年末で仕事が忙しくなる。忘年会で寝不足になる、なども頚部や肩こりの原因かもしれません。

僕はそれらこそが、

冬場に頭痛を訴える方が多い最も大きな理由だろうと思います。


首の周囲の筋肉にこりがあると、

その関連痛が側頭部やこめかみ、後頭部からの痛みとして感じられるのです。

これが、

一般には、緊張型頭痛と呼ばれ、

頭痛の最も多くを占める病型です。


脳や頭蓋骨の内側に原因があるのではなく、

その頭部を支える周囲の筋肉群の疲れこそが、多くの頭痛の原因なのです。

一方で、

本当に脳に原因があって頭痛が起こるときは、

たいてい、なんらかの他の神経症状が付随して起こることが多いです。

たとえば、脳腫瘍、脳出血やくも膜下出血、

硬膜下血腫など、

これらの病気の場合には頭痛だけでなく、他の症状も起こることがほとんどです。

よって、

今も体は普通に動いて、日常生活や仕事もできるけれど、

頭痛がある、という人のほとんどは”脳の病気”を心配する必要はなく、


いかに首や肩の筋肉群の疲れを取ってあげるか?

が頭痛の改善には重要となるのです。

さらに、

人によっては頸椎に問題があって、

これらの肩こりや頚部の筋肉の負担が多くなりやすい方、

また、

実は痛みそのものの原因が頸椎にある方もいます。

つまり、

脳外科や内科ではほとんど評価しない頸椎にこそ原因がある場合も多いのです。

それらについて、次回に続きます。


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ガンマナイフの記事もいったん、今回でさいごにしようと思います。

今回は、


動静脈奇形や、その他の病気に対するガンマナイフ治療についてです。


本題に入る前に、

今回も少しお知らせがあります。



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ここ何回かお知らせしたのですが、


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さて、それではその他のガンマナイフ治療について書きます。


まずは、動静脈奇形のガンマナイフ治療ですね。


動静脈奇形の治療はそもそもコンセプトが腫瘍とは異なります。

どう違うかというと、


腫瘍では腫瘍増大を制御することが目的だったことに対して、


動静脈奇形の治療の目的は出血の予防だからです。


動静脈奇形は痙攣発作の原因となることはありますが、

ただ存在するだけでは、致命的となることはありません。


問題になるのは、

動静脈奇形が出血したときです。


出血を起こすと周囲の脳組織を広範に破壊するため、

後遺症を残すことも少なくなく、場合によっては寝たきり、致命的にもなりえます。


つまりは、

動脈瘤と同じで、いざ出血を起こすと致命的となる爆弾のような病気が動静脈奇形なのですが、


これが出血する前に治療するというのが、

予防的治療としてのコンセプトです。


手術治療と血管内手術による塞栓、そしてガンマナイフが治療の選択肢として上がります。


小さな血管内奇形であれば手術でも、ガンマナイフでも根治可能なのです。


しかし、

大きくなってくると治療のリスクが高く、少なくとも手術は勧められず、


もし治療を行うとしたら血管内手術やガンマナイフを複合的に用いたりもするのですが、

合併症をきたすリスクが3割に及ぶという報告があり、リスクが高いので、治療をしない方がいいという報告もあります。


つまり、大きな動静脈奇形、リスクの高い動静脈奇形は、

どんな治療をするにも高いリスクを伴います。


一方で手術やガンマナイフを勧められるのは一般的には、

比較的小さな動静脈奇形です。


ガンマナイフの場合は3センチ以下の動静脈奇形が治療の適応となります。


腫瘍と同じで、3センチ以上の物は基本的には適応になりません。


手術に対するメリットはやはり、患者負担が少ないことですので、

60歳以上などの高齢の方は特にガンマナイフが勧められることが多いです。


治療の目的は、

動静脈奇形からの出血がなくなるように、


動静脈奇形を閉塞させることにあります。


20Gy程度の強い放射線をあてて、血管奇形に炎症や変性を起こし、

最終的に閉塞させることが目的になります。


ところが、

この閉塞はすぐに起こるわけではありません。


一般的には3年程度かかると言われています。

3年で80%前後の動静脈奇形が閉塞します。


つまり、治療をしてから、じわじわと効いてくる治療なのです


閉塞が達成されるまで、

動静脈奇形は出血のリスクが残り続けますから、


ガンマナイフで治療したからといって、すぐに出血予防となるわけではなく、

その後数年の経過で閉塞が確認されて、ようやく治療が完了したこととなります。


このあたりが、

腫瘍の治療とは異なる点ですよね。


腫瘍の場合では腫瘍増大の制御が目的でしたので、

ガンマナイフ治療を行って、その後腫瘍が大きくならなければオーケーというものでした。


動静脈奇形の場合は、

ガンマナイフを行ってもその後数年は治療経過を祈りながら観察する必要があります。


また、

動静脈奇形へのガンマナイフ治療には、

副作用のようなものもあります。


一つは動静脈奇形の嚢胞化です。


治療を行った部位が、数年から10年以上の経過で嚢胞化し周囲の脳を圧迫し始めると、

結局手術をしなければいけなくなることがあります。


あとはガンマナイフに一般的な副作用として、

放射線をあてた周囲の放射線壊死が起こりえます。


このように、治療効果が表れるまで時間がかかることや、

嚢胞化などの副作用が稀に起こり得るといって、

デメリットもあるガンマナイフ治療なのですが、


やはり、

手術を行う大変さとリスクを考えると、


それでも動静脈奇形の治療の選択肢として勧められることが多いのです。


さて、最後に、

その他の病気ですが、


世界でガンマナイフ治療が行われているその他の病気の一つとして、

三叉神経痛があります。


これは三叉神経に放射線をあてて、

三叉神経が原因で起きる顔面痛を和らげるものです。


手術に代わる治療法として注目されています。


他にも、

群発頭痛というきつい頭痛に対しても治療が行われている例があります。


顔面にある神経節に対して放射線をあてることで治療を行うのです。

痛みのコントロールとしてガンマナイフ治療が使われているのですね。


また、振戦に対する治療として視床に放射線をあてるなど、

脳実質そのものに放射線をあてて、定位機能外科的な治療として行われている例もあります。


これらはいずれも神経細胞やその伝達路に放射線をあてて、

局所的な興奮を低下させることによって、


症状を和らげようという方法です。


ただし、

残念ながらこれらの神経に放射線を当てる治療については、

保険適応がありません。


ガンマナイフの治療には60万円かかりますから、

これらの治療を行うとしたら、全額自費となってしまいます。


腫瘍や血管奇形など、

病気そのものを狙う治療以外は保険適応がないんです。


さて、

ここまで何回かガンマナイフについて書いてきましたが、

ガンマやサイバーなどの治療のメリットは、


開頭することなく、頭の中の病変だけを狙い撃ちできるというところです。


もちろん、完全な狙い撃ちではなく、周囲の組織にも被ばくがあるのが弱点ですが、

開頭手術が必要なく、開頭手術につきもののリスクがないというのは最大のメリットです。


そのメリットが最大限得られる場合に、

これらの定位放射線治療が勧められます。


もし今後、

周囲の被ばくがほとんど無視できるほどに少なくなるような、

さらに放射線を集中させる”狙い撃ち”が可能となれば、


ほとんどの腫瘍は定位放射線治療で治療されるようになり、

手術の役割は減っていくでしょう。


そういった時代は少しずつ近づいてきているように感じます。



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今回もガンマナイフの話の続きになります。


前回の記事では最もガンマナイフ治療が多く行われている転移性脳腫瘍について書きました。


今回は他の疾患について書きましょう。


転移性脳腫瘍の他に多いのは、

やはりその他の腫瘍ということになってくるのですが、


多くは良性腫瘍です。


良性腫瘍以外にも、

たとえば膠芽腫などの悪性腫瘍に行われることもありますが、


膠芽腫などは辺縁が不明瞭で、

かつサイズも大きいことが多いため、


あまりガンマナイフ治療には向きません。


一方で良性腫瘍に関しては、

まず辺縁がしっかり分かる点が有利です。


手術の届きにくいところの腫瘍であったり、

手術で取りきれなかった部分の良性腫瘍に関しては、


ガンマナイフ治療が行われることも少なくありません。


一番多いのは何か?


きちんとした統計の結果ではありませんが、

僕個人の経験上では、


髄膜腫と聴神経腫瘍、

そして、もう一つが、腫瘍ではなく血管の奇形ですが、動静脈奇形です。


まず髄膜腫については、

頭蓋底部の手術難易度が高い部分の腫瘍に対してであったり、


手術を行ったものの、摘出が困難だった部分について、追加治療として行います。


これらの治療の目的は、


「腫瘍をおとなしくする」ことがメインです。


要はこれ以上腫瘍が大きくならないように放射線を当てるのです。


もともと、それほど増殖能が強くないから、

良性腫瘍なのであって、


その増殖のスピードを抑えてあげることが目的です。


そういった理由もあって、悪性腫瘍に対する放射線量よりは、少な目の線量をあてます。

これは後述しますが、周囲の組織への被ばくを抑えたいという理由もあります。


もちろん、消えてなくなればそれにこしたことありませんが、


死ぬまで腫瘍が大きくならなければ、

それも一つのゴールなのです。


すでに腫瘍による圧迫などが原因でなんらかの神経障害が出ていた場合、

それを改善させることは難しいですが、新たな症状を出すことなく、現状維持できればよいという考え方がメインです。


症状が出始めて間もない頃であれば、

手術で腫瘍を摘出して神経への圧迫を取り除くことで、症状を改善できることもあるのですが、


普通、ガンマナイフではこうはいきません。

放射線によってよっぽど腫瘍が縮めば改善することもありますが、


そういうことは良性腫瘍では基本的には稀だからです。


また、神経が腫瘍におされているような場合、

当然、腫瘍に放射線を当てる際に神経にもあたってしまいます。


なるべく当たらないように治療計画をデザインするのですが、


それでもやはり腫瘍近傍への被ばくはゼロになりませんから、

治療から数か月以降で神経障害が現れることもあります。


こういった点をふまえても、

腫瘍の近くにある神経の障害については、


ガンマナイフで良性腫瘍による神経障害を改善させるというのは難しく、

よくて現状維持でしょう。


特に、ガンマナイフ治療を依頼される髄膜腫に関しては、

頭蓋底の、脳神経がからんでいるような場所が多いですから、


治療計画は神経と脳幹部への被ばくが少なくなるように、注意しての治療となります。


これは髄膜腫に限らず、神経や脳幹と近い部位の腫瘍の治療全てに共通して言えることです。

放射線は腫瘍には当然効きますが、通常の組織にとっても毒だからです。


脳幹付近の腫瘍などでは、

脳幹に放射線が極力及ばないようにしなければならないので、


腫瘍の辺縁を12Gyやそこらで囲うのが限度ということが多いです。


ただ、繰り返しになりますが、

それでも良性腫瘍の場合は増殖が抑えられさえすればよいのです。


もう一つの聴神経腫瘍については、

この神経を守るという点がより重視される腫瘍といえます。


なぜなら、

聴神経腫瘍という腫瘍自体が、いわゆる聴神経、

さらに細かく言えば、バランスや方向感覚に携わる前庭神経から発生するからです。


前庭神経のすぐ傍には聴覚の伝導路である、蝸牛神経があります。

この蝸牛神経を損なうと聴力が低下します。


そして、同じく近傍に、

これは異なる神経ではありますが、顔面神経があります。


顔面神経の機能を損なうと、顔の筋肉が麻痺してしまい、

障害があった側だけ表情が作れなくなってしまいます。


聴神経腫瘍の定位放射線治療については、

これらの神経に最大限配慮して、腫瘍に放射線を集中させます。


とはいっても、

もともと腫瘍が出来ている発生源の前庭神経の被ばくは避けられませんし、


近くの蝸牛神経についても、どうしても障害が起きやすいのです。

約半数近くの方が、治療後の経過中に聴力が低下するのが現状です。


一方、顔面神経についてはほとんどの人が機能を温存することが出来ますので、

たとえば聴神経腫瘍のガンマナイフ治療を受けたとしても、顔が麻痺することはほとんどありません。


これも、腫瘍の増大をコントロールするというのが、

治療の目的になります。


聴神経腫瘍は手術の難易度が高いとされます。

手術でも顔面神経の麻痺が起きることは比較的稀ですが、


やはり聴力を温存するとなると、

腫瘍が大きければ大きいほど難しくなります。


最後に動静脈奇形についてですが、

これは腫瘍とは考え方が異なるので、また次回に続きます。


動静脈奇形と、

あとはガンマナイフで治療しうる他の病気について、


もう一度記事を書こうと思います。



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