ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」


テーマ:

前回の続きになりますが、


ここからは僕のこれまでの経験から、

ざっくりと脳外科手術にはどの程度のリスクがあるのかを、

書きたいと思います。


これまで、

僕は年間手術件数が100例程度、200例程度、400-500例程度、と

様々な病院で勤務してきました。


この中で、

直接的に病気のせいではなく、

手術による合併症と考えられる事例のリスクについて、僕の実際の印象を書きます。


もし同業の方がこれを読んだときに、

「こんなのは多すぎる、うちの施設はそんなに合併症は起きてない」


と感じるか、

もしくは、

「少ないな、これはほんとだろうか?」


と感じるかはわかりません。

「まあ、妥当なところだな」


と感じていただければよいのですが、

こればかりは施設間によって違いもあるでしょうから、何とも言えません。


しかしながら、

たとえば年間400-500例も脳外科手術がある病院となると、


それはある程度”症例の集まっている病院”ということですから、

一般的に考えて、国内では高水準な施設ということになると思います。


それに、僕個人の経験は限られているとはいえ、

いくつかの病院を経験しているものですから、


それが国内の平均と比べてそれほど極端に差があるとも考えにくいです。


だから、

まあ、実際だいたいこれくらいだろう、と僕が考えている水準だと、お考えください。


前回、

リスクについて、高度、中程度、軽度に分けたと思いますが、


まずはやはり一番気になる高度のリスクからです。


これは、

寝たきりや意識障害、死亡など、

極めて重度の後遺症、それまでの生活を全く不可能にしてしまうレベルのリスクです。


命にかかわるリスク、ということです。

この高度の後遺症に関するリスクについては、

それが病気そのものが原因ではなく、手術自体が原因とすると、

いずれも”起こるはずではなかった合併症”によるものとなります。


これは当たり前ですよね。


「病気自体が致命的ですから、手術をしても意識がよくなるかどうか、、、」

というように、病気がそもそも重い状況ならまだしも、


「この手術をしたら死亡するか植物状態になることも十分に考えられます」

というような条件で手術が行われることはまずないからです。


手術をする脳外科医も、「注意して手術をすればまず大丈夫だろう」と思うから手術を行うのであり、


こういった高度のリスクが起きてしまう確率は十分に低く、勝算があるからこそ、

手術が治療として成り立つのです。


しかし、

やはりそれでも高度の後遺症はゼロにはなりません。


それが手術中に起こった何らかのミスであれ、

全く予期せぬ、直接的には手術と関係のないような原因であれ、


一定の確率で起こるものです。


問題はこの一定の確率がどの程度かということですが、

これは、1%前後と思われます。


おそらく脳外科の医師の多くが同様の認識を持っているのではないでしょうか。


400-500例の規模の病院にいた際にも、

常にだいたい年間5例前後はこのような怖い症例がありました。


年によって多少数に違いはありますが、

ゼロだったことはありません。


また、100-200例の病院にいたときも、

やはり年間で1-2例はそういった症例の経験があります。


術中のトラブルによるものもあれば、

術後に肺炎で亡くなったり、予期せぬ心臓の急病を発症するようなこともあります。


もしかすると、

1%よりは少し多いかもしれません。


しかしそれでも、

1-2%くらいの確率のように思います。


ただし、これは、

簡単な手術から難しい手術までひっくるめて、


だいたい年間に一つの施設でこのくらい、という感じですので、


一例一例全ての症例にあてはまるわけではありません。


ゼロに限りなく近い手術もあれば、

実際には10%近く、こういった怖いリスクがあるかもしれないなと思うような難しい手術もあります。


ただ、そういった極めてリスクの高い手術は、

どこの病院もそう多くあるわけではありません。


数百手術がある病院でもせいぜい年間に数例でしょう。


その程度ですので、こういった症例のリスクが高かったとしても、

まあ年間で見てみると薄まって1%前後となるのです。


ところで、

脳外科医が患者さんに説明をする場合、


やはりこういった寝たきりや死亡などの怖いリスクについては

「1%程度で怖いことが起こる」と説明することが多いように思います。


さきほどの"10%近い"というように、誰が見てもよほどリスクが高く、

それでも手術をしなければ命が危ういというような場合は別として、


その他の1%というよりはもう少し危なそうな症例については

実際に個別の症例がどの程度リスキーかは別として、


とりあえず、

「一般的には1%前後です」


と説明した上で、

「ややするとこの症例の場合はもう少しリスクが高いかもしれません」


と言っているパターンが多いかもしれません。


というのも、

この1%という数字は多くの脳外科医が、一般的な脳外科手術に関して認識している数字である一方、


それよりもリスクの高い手術については、

具体的な数字のデータがそもそもあまりはっきりしていないか、知らないことがほとんどだからです。


とはいえ、

あんまり高い数字を言って患者さんを不安にさせたくもないし、


それでもリスクの高い手術であることを伝えるために、

あいまいな言葉でぼかしながらもリスクを強調せざるを得ないという点があります。


このブログを読んでいる方の中で、

ご自身や家族が手術を受けた方がいらっしゃったら実際にどのような説明だったか、


思い出してみてください。


思い当たる節はあったでしょうか??


さて、

次は中程度の後遺症を残すリスクについて書きます。


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脳外科の手術を受ける際に、

誰もが最も心配するのは手術のリスクだと思います。


治療効果とリスク、

これが手術を受ける上で一番大切な情報ではないでしょうか。


リスクというと、

なんらかの好ましくない後遺症のことを指しますが、


リスクといっても、レベルによって様々です。


たとえば皮膚に少し違和感の残る、というようなものは、

開頭手術であればほぼ必発です。


これはリスクというよりも、

手術を受ける上で必ず覚悟しなければならない代償のようなものと言えるでしょう。


よって、

我々が一般に手術のリスクというのはこれより上の有害事象を指します。


軽度のものとしては、


一時的な皮膚の感染や、創部の炎症。

また、脳外科の場合では一時的な髄液漏や髄膜炎なども軽度の部類に入るでしょう。


これは、

患者本人の精神的、肉体的苦痛を伴い、

入院期間の延長を余儀なくされるものの、結果としては治癒する部類の物です。


次に、


中程度の物としては、

軽い四肢の脱力、感覚障害、聴力障害、顔面神経麻痺、眼球運動障害、など、


何らかの永続する後遺症が残り、生活にもある程度の支障をきたすものの、

自立した生活が送れるものです。


高度のリスクというのは、

脳外科の場合では、寝たきりや死亡など、


もはや自分の力では生きていくことすら出来なくなってしまうような、

恐ろしいリスクです。


さて、

これら、怒り得るリスクのレベルは様々ですが、


実際に、

どの程度の割合でこうった合併症は起きるのでしょうか?


当然、

それは手術の難易度やレベルによって様々ですので、


一概には言えません。


手術によって怒り得る後遺症のリスクは異なります。


しかし、これは、

主には中程度のリスクに関してです。


ところが、

脳外科の手術の場合ではどんなに簡単な手術においても、


想定外も含めて、高度のリスクも怒り得るのが事実です。


そして、

逆にどんな手術であっても、軽度のリスクに関しても起こりえます。


これらが実際にはどの程度起きていて、

そして、実際に脳外科医が手術の前にそれをどのように説明していることが多いのか?


それらについて、

次回に続きます。



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最近、いろいろと考えさせられるコメントがあったので、

少々、医師がブログを書くということそのものについて、考えていました。


私がブログを書いている目的は、

医学や医療の実際を広く知ってもらって、

少しでも医師と患者のギャップを埋めるためです。


ただ、

当然ながら、限られた文面では私が意図していることを伝えるのは難しいですし、


受け取り側によって、

記事から受ける印象も、解釈も変わってきてしまいます。


特に医療制度に関わる記事では、

その制度を良く言おうが、悪く言おうが、


恩恵を得ている人と、負担を強いられている人で、

受け取り方が真逆になってしまいます。


たとえばその例をあげると、


なんらかの病気を患っていて、

医療制度による恩恵を得ているとして、


その負担をその国民全員で負っているとしましょう。


それが年間通じて相当な医療費に相当する場合、

やはり医療経済的な問題が起きてきます。


そこで、その病気が、

本人の注意や努力とは無関係と考えられる遺伝性の物や、

確率的な物であれば別ですが、


長年の生活習慣をどこかで変えれば防ぎ得たものだった場合、

そこには様々な意見が生まれるのは当然と思います。


事実としてこういった状況が存在するのは真実ですし、


世界的な視点から見ると、

日本の医療制度は未だに十分に手厚いものとなっているので、


いざとなっても十分な医療が受けられるという安心感から、

生活習慣病に対する危機感が薄いような気もします。


こういった日本の医療の現状を広めることも、、

普段から生活習慣を気を付けるように危機感を持っていただくためには有用だとは思いますし、


実情を伝えることは間違っているとは思っていなかったのですが、


それと同時に、


はたして、

医師の立場でこういうような記事を書いてよいものなのか?と昔から思ってはいました。


なぜなら、上に書いたような記事の場合、


「これから病気になる人が少しでも減ってほしい」

「そのために最低限、生活習慣に気をつけて欲しい」

「予防の意識を多くの人が持てば医療費の問題も改善される」


というような思いで記事を書いたとしても、

すでにその病気で辛い思いをしている人が記事を読めば、


決していい気分はしないからです。


実際、苦情と言えるような書き込みや、手厳しい指摘も多くありました。


医師の立場にある人間が、自分の発言の影響も熟慮せずに、

ネット上にこのようなことを書くべきでない。


というような指摘もありました。


これに関しては、

決して記者やマスコミではなくて、実情を知る医師にしか正しく伝えられないことはある、

とも私は思っているのですが、


たしかに、医師の発言ということで、

傷ついてしまう人も多くいらっしゃったことを思うと、


正しい意見だと思います。


僕自身は出来るだけ客観的に、

これからも実情に対する理解を広めるような記事を書いていきたいと思いますが、


このブログを読んでくださっている方の中で、

何らかのご意見があれば、ぜひ教えてください。


デリケートな話題には極力触れないというのも、一つの考え方なのかもしれませんが。。。

それもちょっとこのブログの主旨に反するようにも思うのです。


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