ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」


テーマ:

私は脳外科医なのですが、在宅医療にもかかわることがあります。


在宅医療というのは、

いわば外来診療+αのことを病院に通うのが困難な患者さんのために、

医師が患者さんの自宅や施設を訪問するような形で行うものです。


軽自動車で、患者さんのところを一軒ずつ回るような感じになります。


具体的にどんな感じかというと、

たとえば一人一軒ずつであれば、午前中の半日で5-6か所を回ります。


集団で一か所で10人近くみるようなこともありますが、

複数箇所を車で回るとなると、


やはり5-6軒が限界です。


診療自体には実はそれほど時間はかかりません。


それもそのはず、普通の外来診療にしたって、

特にかわったことがなければ、再診の場合は5分もかからないのが普通だと思います。


3分診療という言葉がありますが、

実際に継続内服薬の処方だけのようなときは、


3分どころか1分で診療が終わることだってあります。


在宅で回る場合は、

聴診や検温、血圧、血中酸素飽和度の測定など、

一通りのVital signの検査も行いますので、


やはり、患者さんの状態にとくに変わりがない場合であっても、

少しお話をしたりするのも含めて5-10分ほどです。


そうすると、複数の箇所に回る場合は、

実はほとんどの時間は移動時間だったりするんですね。


30分以上かけて車で向かって、

実際に診察自体は5分、というようなことがざらです。


なんだか、

車で移動することが一番大変だったりします。


もちろん、

それでも病院に通えない患者さんのために必要な医療であることは間違いありませんし、


とくに変わりない状態であっても、

定期的に僕らが通う事によって患者さんが安心するのであれば、何よりとは思います。


でも、いくつか不可解な点もあります。


これは診療報酬の話になるのですが、

つい昨年、在宅医療の診療報酬が下げられたのが話題になりました。


これまでは月に2回訪問するということで、

一人あたり管理料として46000円の収入になり、


また訪問ごとに特定施設などでは4000円の診療報酬を得ていました。


ところが、昨年の改訂で、

同じ建物内で複数の患者さんを診る場合には、


管理料についても訪問料についても、

診療報酬が半減以下となりました。


まあ、

月に2回訪問で、管理料46000円+訪問料8000円というのは、

いささか高すぎたのかもしれませんが、


改訂で随分と下がったことが事実です。


その後に月に1回までは同一建物でも訪問料が下がらないなどと緩和されたようですが、

昨年から厳しくなったことは事実でしょう。


このあおりを受けて、

収入確保のために、ややおかしなことが起きています。


本当であれば、

同じ建物内に複数の患者さんがいれば、


同じ日にまとめて診た方が効率がいいに決まっています。


これは、毎回車で通うコストも手間についてもです。


でも、同じ日に同じ建物で月に2回以上、複数診てしまうと、

訪問料が下がるということで、


いっぺんに診れるところを、

あえて日を変えて別々の日に診たりしているのです。


これは患者さんのため、というのではなく、

医院側の収益のためということです。


同じ日に同じ施設に2人以上の患者さんがいたとしても、

医師が2人いれば、別々に回ったりもします。


なんだか、

医療費を抑制するために、国がおこなった改訂と、


その抜け穴を探そうとする在宅医療機関側の、せめぎ合いですよね。


結果として、現場の移動にかかわる手間は増え、

診療に関する所以外での労力が増えてしまっています。


確かに在宅診療がもうけ過ぎていたということはあるとおもうのですが、


それを改訂するにしても、

もうちょっと賢い方法がなかったのかな?


と思ってしまいますよね。


結局下げたあとに緩和策も出しているわけですし。。。


なんだか、

国立競技場の件もそうですが、


日本の省庁のつくる制度というのは、現実にそくしていないというか、

改訂をしたときに、実際に医療機関が収益を維持するために、どのように動くか?


ということを全く考えていないような気がしてなりません。


なんだかなぁ、

といつもいつも思ってしまいます。


もし、何か同じようなことを思った人や、

在宅に関わっている方がいたら、ご意見お待ちしています。


拙著、「続 誰も教えてくれない脳と医療の話」がAmazon Kindleで絶賛?販売中です。

その他の書籍も↓


興味がある方は是非 ↓

続 誰も教えてくれない脳と医療の話/R&M
¥398
Amazon.co.jp


名月の電子書籍と紙の書籍の紹介↓

誰も教えてくれない手術の話/R&M publisher
¥300円
Amazon.co.jp
誰も教えてくれない脳と医療の話 改訂電子版/R&M publisher
¥300円
Amazon.co.jp



サクッと読める!「脳」の話/名月論

¥300円
Amazon.co.jp

紙の書籍↓ 誰も教えてくれない脳と医療の話 脳神経外科の現場から/名月 論 ¥1,365 Amazon.co.jp
誰も教えてくれない脳と医療の話
¥1,365
楽天

読んだらクリックしてね↓

このブログの順位がわかります↓

人気ブログランキングへ


AD
いいね!した人  |  コメント(7)

テーマ:

今回はめまいについて書きます。


めまいという症状で病院に訪れる人は、特に僕らの脳神経外科などではとても多いのですが、

多少でもみなさんが知っているといいということがあるからです。


僕は、

耳鼻科医ではありませんので、

めまいの専門家ではありません。


なので手前味噌なことを書いてしまうとひょっとして怒られてしまうようなこともあるかもしれませんが、

ここでは一般診療のレベルとして、めまいについて書いていこうと思います。


まず、めまいという言葉はとても曖昧なものです。


というのも、

同じめまいという言葉の中にも、様々な症状があるからです。


たとえば、

目の前がぐるぐるとまわってしまうというのは、回転性めまい。


体がぐらぐらと揺れているように感じてしまってまっすぐ歩けない、というのは動揺性めまい。


なんだかふわふわと浮いているような気がするというのは、浮動性めまいです。


他にも、

貧血症状のような、たちくらみのような症状のことをめまいとして訴える患者さんもいます。


つまり、これらの症状はどれも、めまい、として表現されるので、

僕たちはめまいと聞いてもそれだけではなんともわかりません。


めまい、という言葉にはこれだけの多様な症状が含まれているのですね。


ここからがポイントですが、

これらのめまいのほとんどは軽症です。

軽症というと、どういうことかというと、特に悪化したり命にかかわるようなものではないということです。


そして、ほとんどに対して、特に著効する治療法というのはありません。


つまり、先に結論から言いますと、


めまいの多くについては脳外科としてアドバイスはできても、

患者さんが病院に来るメリットがそれほどあるものではないのです。


それは何故か、ということについてこれから書いていきます。


まず、先ほどのめまいの内訳を見ていきましょう。


まず、回転性めまいです。

これは、多くが内耳、三半規管の異常で起きているとされます。


頭を動かしたときに起きるのであれば良性発作性頭位変換性めまい(BPPV)、

耳鳴りや難聴を伴うということであれば、メニエール病、


などと、どれも耳鼻科が専門科となる病気です。


これの病気は症状こそ辛い物の、特に命にかかわるわけでもなく、

治療法もそれほど著効するものもなく、


ほとんどが、時間がたてば自然とよくなるもの、つまり日柄物の症状です。


だから、病院に来てもらっても特にできることはないのですね。


ただ、勘違いしないでください。

治療薬がないわけではないのです。


治療薬は数種類あるのですが、ところが、どれもそれほど効かないのです


そういうわけで、

薬も気休めほどの効果しかないことが多いですから、


まあ、ほとんどの場合病院にくるメリットが少ないということになります。


病院にくるメリットはなにか?


というと、

ごくごく稀にこういった回転性めまいの中にも、聴神経腫瘍が隠れているということでしょうか。


これはMRIやCT検査をすることによって発見することができます。

こういった検査は当然病院でしかできないので、そういう意味では病院にいくメリットは、


万が一の病気を見つける意味、ともいえるでしょう。


しかし、聴神経腫瘍も多くは難聴症状によって発見されることが多いので、

病気の頻度も低いですし、やはり相当稀と言わざるを得ません。


回転性めまいの方の多くがやはり軽症で、

しばらく休んでいれば良くなる、ということには変わりないのです。


もう一つ病院にくるメリットがあるとすれば、

それはめまいが原因で、嘔気が強く、水も飲めない場合です。


脱水症状は危険ですので、この場合は点滴が出来るという意味で、

病院での治療を受ける意義があるでしょう。


次に動揺性めまいです。


この動揺性めまいは小脳などに異常があると言われているので、

ぐらぐら揺れてしまっておかしいという場合には、検査をした方がいいとは思うのですが、


とはいえ、

ほんとうにこの動揺性めまいの症状のある患者さんがどのくらいいるかというと、

とても少ないです。


動揺性めまいかと思いきや、実は回転性めまいだったり、

それほどはっきりした症状がなかったりします。


実際に毎日めまいの患者さんを診ますが、

小脳や脳の中に異常が見つかることは、ほとんどありません。


考えられる病気としては代表的には小脳の脳梗塞、脳出血、腫瘍、などがありますが、

やはり稀です。


めまいとしていらっしゃる患者さんの中に、

100人に1人もいないでしょう。


また、めまいと言いつつ実は多いのが、

立ちくらみのような症状です。


たとえば、起き上がった瞬間や立ち上がった瞬間にふらっとする、という症状を、

めまいとして訴える方ですね。


これらの症状の多くは起立性低血圧と呼ばれる病態で起きています。


心臓の機能が低下し、動脈硬化が進むとこの症状は起きます。


頭の位置が高くに移動した際に、十分な血流を脳に送ることが出来ず、

ふらっと、立ちくらみが起きるのです。ひどいと、失神することもあります。


この症状をめまいとして訴えていらっしゃる方は多いんですね。


この起立性低血圧に関してはまずは、ゆっくりと起き上がるようにするなど、生活のアドバイスをします。


症状が強い場合には内服薬を飲むこともあります。ほんとうに毎回失神してしまうような方の場合には手術治療も有効とするような報告もあります。


まあしかし、

これもほとんどはアドバイスのみとなることが多いですし、脳に何かの異常があるわけではないのです。


浮動性めまいについては、

これも脳の異常があるようなことは少なく、

多くはただの過労であったり、ストレスが原因だったりします。


やはり、

回転性めまいの患者さんが一番多く、そして起立性低血圧が結構まぎれており、


たまに浮動性めまい、そしてさらに稀に動揺性めまい、といった感じでしょうか。


回転性めまいや起立性低血圧、

そして浮動性めまいについても、


ほとんどは実は脳とはあまり関係のない症状なのですが、

現実には皆さん、こういっためまいがあると脳の心配をしていらっしゃいます。


もちろん、

先ほど書いたように聴神経腫瘍がめまいに隠れていることもゼロではありませんから、

検査をする意味がないということではないのですが、


やはり難聴症状がないのに聴神経腫瘍があるということも稀です。


そして頻度の多い回転性めまいについては、

耳鼻科が専門科となりますので、


実は、めまい症状については、脳神経外科の出番というのは少ないのです。


そもそも脳が原因のことが少なく、

そして、脳外科でなければ治療できない、というような場合は本当に少ないんですね。


動揺性めまい以外のめまいの大半は、

脳とはまず関係がないと思っていいのではないかと思います。


大分長くなりましたが、

めまいについて、普段の診療から感じることを書いてみました。


脳外科ではめまいと聞くだけでMRIをとるような病院もあるのですが、

その結果はほとんどが異状ありません。


それは、

そもそも患者さんの大半が末梢性めまいだからです。


めまい症状の診療について、

なんとなく、分かっていただければ幸いです。


なんだか乱文になってしまってごめんなさい。


最後に、

性懲りもなく、もう少しだけ宣伝させていただきます。


拙著、「続 誰も教えてくれない脳と医療の話」がAmazon Kindleで絶賛?販売中です。

もし読んだ方がいらっしゃったらレビューをお願いします。




興味がある方は是非 ↓

続 誰も教えてくれない脳と医療の話/R&M
¥398
Amazon.co.jp


名月の電子書籍と紙の書籍の紹介↓

誰も教えてくれない手術の話/R&M publisher
¥300円
Amazon.co.jp
誰も教えてくれない脳と医療の話 改訂電子版/R&M publisher
¥300円
Amazon.co.jp



サクッと読める!「脳」の話/名月論

¥300円
Amazon.co.jp

紙の書籍↓ 誰も教えてくれない脳と医療の話 脳神経外科の現場から/名月 論 ¥1,365 Amazon.co.jp
誰も教えてくれない脳と医療の話
¥1,365
楽天

読んだらクリックしてね↓

このブログの順位がわかります↓

人気ブログランキングへ


AD
いいね!した人  |  コメント(13)

テーマ:

大分期間がまたあいてしまいました。

今回は、


顔面神経機能、聴力の温存について書いていきたいと思います。


これらの神経の機能を守ることが、

この手術では最も重要な点であるということについてはこれまでも書いてきました。


いかにこれらの神経機能を守りつつ、

腫瘍を取り去るか。


それこそが聴神経腫瘍の手術の骨子です。


では、これらの神経の温存率がどのくらいか?


ということですが、


よく学会での報告などでは、ぱっとみると、

顔面神経機能温存97%、聴力温存60-70% なんていう数字を聞くことが多いです。


しかし、

これらの数字をうのみにしてはいけません。


それもそのはず、

これらの神経の温存率は腫瘍の大きさによって異なるからです。


まず、

死守しなければいけないのは顔面神経です。


これを傷つけると、何度も書いてきましたが、顔が左右非対称になってしまい、

なおかつ、目を閉じることもできなくなってしまいます。


ですから、

顔面神経はあらゆる手をつかって温存しなければなりません。


腫瘍を全部取りきるということよりも、

顔面神経機能を温存することの方が優先されます。


きっとどんな脳外科医もその選択をするはずです。


顔面神経機能の温存のために活躍するのが、

神経機能モニタリングです。


これについてはまた、詳しく書くと長くなるため、今回は割愛しますが、

電気刺激と顔面筋の筋電図を用いて、手術中に顔面神経機能やダメージを確認する目的で行われます。


これを見ながら、出来るだけ腫瘍を摘出するわけですね。


当然ですが、これらのモニタリングができない施設で、

この手術を受けるべきではありません。


小さい腫瘍。

まあ、おおまかに言って2センチ以下程度の腫瘍であれば、


モニタリングの準備が整っていて、術者が十分に注意して手術を行えば、

まず顔面神経は温存できると思われます。


これは本当に、冒頭に書いた97%ではないですが、

90%台後半以上の可能性で大丈夫だろうと思うのです。


しかしながら、

腫瘍が大きくなってくるとなかなかそうもいかない場合があります。


顔面神経と腫瘍の位置関係のある程度の推測はたちますから、

腫瘍が大きくても、多くの場合は大丈夫なのですが、


ときに神経の位置を見誤ることもなくはありません。


そういったリスクは腫瘍が大きくなればなるほど、大きくなります。


ですから、

たとえば3センチ以上の大きな腫瘍でも、ほとんどのケースで顔面神経が大丈夫かと言えるかというと、

そうではありません。



僕の印象では、この腫瘍をライフワークとしているような十分に経験を積んでいる医師が執刀したとしても、


大きな腫瘍の場合では、

1/3から1/2くらいの患者さんに術後一過性の顔面神経麻痺が出現し、


1/10くらいの方では後遺症として程度の違いはありますが、多少の麻痺が残ってしまう、というような印象です。


腫瘍が大きい場合には、とてもほぼ全員の人が大丈夫!

と言い切れるものではありません。


時間がたって、ほとんど気にならないくらいに回復すれば問題ありませんが、


逆に、術直後はよかったのに翌日、翌々日から麻痺が悪化したり、


手術中いつの間にか神経が切れて完全麻痺になってしまうようなこと見ていますから、


やはり顔面神経機能温存もそう簡単ではないのです。


どんな脳外科医も、発表などで対外的に見せているデータの内容よりも、

実際はもうちょっと成績が悪いことが多いものですから、


この手術を受ける患者さんはやはり、

顔面神経の麻痺がおこるリスクもあるということを考えなければいけません。



さて、

次に聴神経機能ですが、


これについては温存が可能なのは小さい腫瘍の場合のみと考えて、ほぼ間違いありません。


3cmを超えるような腫瘍の場合、

術前からある程度聴力が損なわれていることが多い上に、


手術によってそれが維持、もしくは回復することは非常に稀だからです。


2cm以下の小さな腫瘍の場合だって、

やはり、聴力が維持されるかは五分五分。


術前よりよくなることは、

やはり稀で、よくなったらラッキー、というような程度です。


聴力をつかさどる蝸牛神経は腫瘍と近いために、

その温存は顔面神経よりももっと難しいんですね。


だから、

手術を受ける以上は、手術側の聴力が悪くなることは覚悟しなければいけません。


術後に耳鳴りが起きる、というような人もいます。


聴力温存はやっぱり今の時代でも難しく、

そして聴力回復はさらに厳しい、というのが実際なのです。


手術をすれば聴力が戻るかも!

というような期待をして手術を受けることは間違っていると言えるでしょう。


ここまで手術治療について書いてきました。


次回はもう一つの治療法、

ガンマナイフによる聴神経腫瘍治療について書いてみます。



最後に、

性懲りもなく、もう少しだけ宣伝させていただきます。


拙著、「続 誰も教えてくれない脳と医療の話」がAmazon Kindleで絶賛?販売中です。

もし読んだ方がいらっしゃったらレビューをお願いします。




興味がある方は是非 ↓

続 誰も教えてくれない脳と医療の話/R&M
¥398
Amazon.co.jp


名月の電子書籍と紙の書籍の紹介↓

誰も教えてくれない手術の話/R&M publisher
¥300円
Amazon.co.jp
誰も教えてくれない脳と医療の話 改訂電子版/R&M publisher
¥300円
Amazon.co.jp



サクッと読める!「脳」の話/名月論

¥300円
Amazon.co.jp

紙の書籍↓ 誰も教えてくれない脳と医療の話 脳神経外科の現場から/名月 論 ¥1,365 Amazon.co.jp
誰も教えてくれない脳と医療の話
¥1,365
楽天

読んだらクリックしてね↓

このブログの順位がわかります↓

人気ブログランキングへ


AD
いいね!した人  |  コメント(3)

AD

Amebaおすすめキーワード

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス

ランキング

  • 総合
  • 新登場
  • 急上昇