命とお金の話 ③ 具体例 「胃ろうによる延命」 | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

今後社会保障費としての医療費にメスが入っていった場合、

どう、日本の医療が変わっていくのか?


について、

今回は「胃ろうによる延命」をテーマに書きます。


今回からはひとつずつ、

テーマを決めて書いていこうと思います。


今の日本では、胃ろうなどの延命医療に関して、

具体的な決まりはありません。


つまり、

こういう状況であれば延命をする、しない、といった議論はないのです。


ただ単純に、

患者、家族、医療者の三者によって決められています。


患者本人に意識があり、意思がある場合では、

それは延命が行われて当然だと思いますので、


これに関しては今回は論じません。


問題なのは、

この三者のうちの患者が抜け落ちて、意思決定をしなければいけない状況です。


つまりは、

患者本人はすでに意思決定不能な状態となっている場合です。


たとえば重度の認知症であったり、

その他の脳疾患、脳卒中などの後遺症によって意識障害のある、


植物状態のようになっているケースです。


そのうちでも、


意識の回復が望まれるような状況である場合はまだしも、

高齢者の認知症であったり、回復を望むべくもないケースというのも少なくありません。


こういった状況だとしても、

現在の日本では、


家族が強く望む場合や、

医療者が勧める場合に、


胃ろう造設が行われることがあります。


おそらく、「回復が望めないケースでの胃ろう選択」というのは

海外では考えられないことだと思います。


この胃ろうによる延命はすでに日本でも問題になっており、

NHKで取り上げられて話題にもなりました。


よって、

メスが入れられる可能性の高い分野だとは思います。


具体的には、近い将来、


胃ろう増設や延命医療に関して、

医療保険適応の決まりが明文化されるのではないかと思います。


賛否両論あるでしょうが、

そうせざるを得ない状況にそのうちなっていくのではないか?ということです。


たとえば、

「今後意識状態の回復の見込める状態と医師が判断した場合」


というような条件が加えられたらどうなるでしょうか?


おそらく、

現在日本で行われている胃ろうによる延命医療の半数以上が、

この一文にひっかかるようになるでしょう。


新規の胃ろう増設の数はだいぶ減るだろうと思います。


なぜなら、


高齢者認知症や、不知の脳悪性腫瘍による意識障害のケースのすべてが、

この一文によって除外されるからです。


それでも延命医療を、という場合は全額自費となります。


この変化は一見すると残酷なようにも思えるかもしれません。


しかし、

今後このように変わっていく可能性は高いのではないか?


と思います。


この変化によって今より国民が不幸になるか?


ということに関しては必ずしもそうではないように感じます。


いろいろな声を聞く限り、

かえって今の日本のように、


「どのような状況でも胃ろうという選択肢がある」


ということが家族を悩ませているように感じることもあるからです。


意識の回復が望めない状況であったとしても、

延命につながると思われる方法があるのに、それを「敢えてしない」という選択を選ぶことは、


家族にとって辛いことだからです。


悩んだ末に胃ろうによる延命を望んだ場合でも、

その後、実際に延命や胃ろうの現実を見て、さまざまなトラブルにも直面し、


さらに苦しむ、ということが多いです。


はじめから、

「この状況では胃ろうは国の決まりで造れない」


と決まっていれば、この悩みが生まれることはありません。


この変化は近いうちに必ず起こるのではないか?

と思っています。


次回も別の具体例を紹介します。




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