今回は人間が頭をぶつけてしまうと、
何故死に至ってしまうのか。というテーマです。
いまだに交通事故の頭部外傷というのは成人の死亡原因の中でも上位ですからね。
頭をぶつけると危ない!
という一般認識はあるみたいですが、
どういうメカニズムで危ないのかはあまり知られていないようです。
なので頭をぶつけた!
というだけで動転して病院に来る方も少なくないのです。
腕をぶつけたり、脚をぶつけたりしても、
骨折でもない限りあまり問題にはならないのですが、
頭の場合はそうでないことがあります。
では何が頭の場合問題になるのでしょうか?
一番のキーポイントは、
脳が固い頭蓋骨におおわれているということです。
頭蓋というほぼ、密閉された空間内に脳が入っているということです。
葉は逃げ場がないわけです。
怪我などの外傷によある頭の病気を考えるとき、
脳圧という言葉が最も重要なキーワードとなります。
脳の固さを想像してみてください。
どのくらいの柔らかさでしょうか??
といっても、これはなかなか一般の方には想像しずらいでしょう。
日常生活の中でヒントがあるとしたらカニみそくらいでしょうか。
実際の脳はどこかでも書いたかもしれませんが、
プリンくらいの柔らかさです。
よく、たとえられる例えとしては、お豆腐です。
パックの中に浮かんでいる豆腐を想像してください。
きょっと吸引管とかをあててしまうと、脳自体がずるずると吸えてしまうくらいの柔らかさなのです。
当然、ちょっとした圧力にも弱いです。
なので、逃げ場のない頭蓋内で血があふれたりすると、
たちまち脳は圧迫されて崩れてしまいます。
頭蓋内を占めているのは 脳実質、髄液、流れる血液 の主に3種類のものしかありません。
ある程度の圧力までは髄液の移動で緩衝されますが、
それ以上頭蓋内で圧力があがると、もう直に脳に圧力がかかるわけです。
しかも、
たちが悪いことにダメージを受けた脳の周囲はさらにむくんで膨れるようになっております。
ダメージを受けた脳が逆にしぼむような仕組みであれば、
どれだけの人が助かるんだろう。と思うことも少なくありません。
膨れてむくんだ脳はさらに脳圧をあげ、周りの正常な脳をも圧迫します。
こうやって一度脳圧が上がると、
後は転がり落ちるように脳圧が上がり、脳が壊れていくわけです。
まさに、負の連鎖ですね。
さて、こういった基本的な原則を踏まえたところで、
たとえば、
頭を強打した時どういったことが起こるでしょうか?ということを考えてみます。
まず、
内部の脳が内側の頭蓋骨にたたきつけられるような格好になります。
そうするとダメージを受けた脳自体がむくむと共に、脳に出血が起こったりして、脳圧が上がります。
これがよく言う、脳挫傷の状態ですね↓
また、脳実質自体のダメージは別にしても、
脳表の静脈が切れたりすることがあります。
お年寄りの場合は血管がもろいのでこの出血が起こりやすいです。
そして血があふれて脳が表面側から圧迫されている状態が急性硬膜下血腫という病気なわけです↓
あとは、頭蓋骨の骨折がおこった場合に骨の内側の表面の動脈が切れることがあります。
そして動脈から血が溢れると、
脳を覆っている固い膜である硬膜ごと、外側から脳が圧迫されます。
これが急性硬膜外血腫と言われる状態です↓
ここまでにいろいろ病気の名前が出てきましたが、
いずれも、出血や脳の浮腫みが原因となって、
頭蓋内で脳が圧迫されて脳圧が上がる状態となります。
こういったケースでは脳が上方からどんどん圧迫されて、
下に下に圧迫が強まります。
そして、重要な線維がのきなみ通っていて、
意識や呼吸の中枢でもある脳幹を圧迫することによって、
死に至るわけです。
以上が頭部打撲で人が死に至ってしまうメカニズムです。
次回は、
どういうときにこういった危ない状態を疑うべきなのかを、
簡単に書こうかと思っています。
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