その時、
「ワカヒコ!!」
叫びながら自分の脚に縋った老女がいます。
彼女の目は涙で曇っていました。
「私はワカヒコではありません」
「いえ、ワカヒコです。ワカヒコ。ワカヒコ、戻ってきたんだね」
「よく見てください。私は葦原中国からやってきました」
一瞬、老女の身がこわばりました。
「それでは、あなたは敵・・・」
途端、アジスキタカヒコネの顔に蒼い怒りが稲妻のようにひらめきました。
「あなた方にとっては私が敵か?」
「だれがワカヒコを殺したのか考えてみるがよい。私はワカヒコと親友だから葬儀に来たが、生きているものを死者と間違えるような失礼な家族は、敵も味方もわからぬらしいな」
そう叫ぶと、ズンズンとその場を去ってしまいまったのです。
ワカヒコの遺族はみな、その場に崩れ落ちました。
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