しかし、彼は到底皇位に相応しくない男。人の心を見抜く目はありませんでした。
大山守皇子は、オオササギも自分と同じ気持であると勘違いしていたのです。
野心家であるくせに、自分の力に今一つ自信を持てない大山守皇子には、オオササギの協力が必要です。
大山守皇子から、ウジノワキイラツコ殺害計画を打ち明けられたオオササギは、黙っていました。
「お前も協力するだろう?なぁ?」
早口に同意を迫る大山守皇子の赤い口を見詰めながら、
「ここで、私が反対すれば、大山守皇子は卑怯な手でウジノワキイラツコを殺そうとするだろう。しかし、疑い深い大山守皇子のことだ。私がウジノワキイラツコ殺害に同意すれば、私が裏切ることのできないようにするだろう」
オオササギはぶるりと震えてみせました。
そして、わざとらしく唇を震わせ、こう言ったのです。
「わかりました。私は大山守皇子が皇位を奪うことを黙認しましょう。しかし、ウジノワキイラツコはもう天皇であらせられます。天皇を殺すことは反逆罪。私はそのような大罪を犯すのは恐ろしい。しかし、大山守皇子も恐ろしい。どうぞ、私を見逃してください」
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