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設問A「1885~1899 女性工業労働者の賃金上昇理由とその影響」)の解説に移ります。

まず、本問(2016東大日本史本試Ⅳ)全体についての講評設問Aの解説前半部から。

 

解 説

 

本問はやりにくい。

その最大の要因は、設定されたスパンがやや長く、経済情勢の変動が激しい点にある。

 

たとえば、設問Aで対象とされた「1885~1899年」は松方財政期後半から日清戦争期前後にあたり、設問Bに登場する「1930年代」の経済政策は井上財政高橋財政統制経済と転変する。

与えられた題材との対話を忘れずに、それぞれの時期を貫く特徴は何かをじっくり考えたい。

 

類推と分析(設問A・その1)

 

設問Aの問題の要求は、「1885~1899年」にかけて女性工業労働者の賃金上昇がもたらされた原因と、女性工業労働者の賃金上昇が及ぼした社会的影響を説明すること。

 

は、引用された文章(横山源之助『日本之下層社会』)を一読すれば解答できる。

「下女(住み込みの女性使用人)が不足している」「以前ならば下女として雇われていた若い女性が、皆、工場に向かうのは当然である」といった表現から、「1885~1899年」ごろの女性工業労働者をめぐる状況を正しく類推したい

 

『日本之下層社会』にも、問題では省略された部分に、「(各地に小工場ができたため)以前は女中となった農民、漁民、職人の少女も、女工となるものが増えてきた。しかもなお女工が不足し、高岡紡績会社のように女工を得るため大いに苦しんでいるそうだ」と記されている(カッコ内は引用者が補った)。

 

の最大の注意点は、典型的なトートロジー(同義語反復)を避けることだろう。

 

引用された文章に「下女の不足とは……下女の社会的地位を高めるもの」とある。

したがって、事実上の問題の要求は、『日本之下層社会』には「社会的地位を高める」とあるが、女性工業労働者の賃金上昇は「どのような社会的影響を及ぼしたか」ということになる。

「賃金上昇は女性工業労働者の社会的地位を高めた」などと記しても、ほとんど意味がない。