いよいよ最終章!私の連続3周野宿の旅のハチャメチャ珍道中を連載中!
目次:【序章】&【第1章】&【第2章】 & 目次:【第3章】&【最終章】
これまでのあらすじをざっくりと!→3章までのあらすじ
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■最終章:終わりなき遍路■人生の遍路道はまだ続く
1. 遍路3周目結願へと向かう楽しい長い道のり
DAY106
朝、起きると、せっちゃんが出発の準備をしていた。
せっちゃん「ワシ、今日、松山辺りまで走って、明日には広島に着くようにせなあかんから、そろそろ行かな。」
私「そうだね。」
せっちゃん「明日の朝には広島から車で長野へ向かえるようにしたいから。」
私「わかったー。せっちゃんも気を付けて帰ってね!まあ、まだここから大部あるけど。」
せっちゃん「そやなあ!」
せっちゃんは荷物を自転車に積み込み出発の準備が完了したようだ。
皆にも軽く挨拶をして、外へ出る。
私「それじゃあ、また長野へは行くことがあると思うから、会おう!」
せっちゃん「そやな!まあ、いつになるかわからんけどなあ!」
私「うん。そうだね。とりあえず、年明けから春までは広島で身動き取れない予定が色々入ってるから、どんなに早くても来年の春以降だわ。」
せっちゃん「わかったー!Noisyも気いつけてな!」
私「うん!せっちゃんも!」
せっちゃん「ほなな!」
せっちゃんは、勢いよく自転車を漕ぎながら、私に大きく手を振って走り出した。
私は、せっちゃんが見えなくなるまで手を大きく振り返して見送る。
せっちゃんが、見えなくなった。
そうか・・・。
せっちゃんと始めたせっちゃんの遍路旅は、本当にこれで終わりかあ・・・。
まだ、私にはもう少しだけ残りがあるけど。
でも、私ももうすぐ終わるよ。
私は、しゅんちゃんのアトリエへと入って行き、皆と戯れていると、博士から電話が入ったので外へと出て電話に出る。
私「あ、博士!」
博士「あの~・・・。」
私「ん?何?」
博士「あの・・・もしかしたら、Noisyも行かんかなと思って電話したんやけど・・・。」
私「何処に?」
博士「バイト。」
私「え?バイト?」
私は、バイトをここでしている暇があったら、しゅんちゃん達と最後、これ限りにおもいっきり遊んで、遍路も終了して帰ることの方が優先だと思いながら、念のため何のバイトか聞いてみた。
博士「みかん狩り。」
私「え~~~~!!みかん狩り~~~!行きたい~~~!」
私は、みかん狩りをした事がなかったので、バイトと言うよりも、まるで行楽へでも行くかのような気持ちになり、みかん狩りを体験してみたくて興奮した。
博士「ははは。そしたら行く?」
私「行く!行く!」
博士は、その後、給料の話などを私に聞かせていたのだが、私は「バイト」と言うよりも、「みかん狩り」に行くつもりでいるのであまり聞いていない。
博士「それで2日間なんやけど。」
私「わかったー!」
博士「それじゃあ、朝、そこへ迎えに行くから明日!」
私「うん!明日ね!」
私は、しゅんちゃんのアトリエへと入って行き、皆にみかん狩りのバイトへ行ってくることを伝える。
しゅんちゃん「おお!博士とバイト!僕は、Noisyがここにいる限り、ずっといるから大丈夫だよー!明日からみかん狩りのバイト頑張って!」
私「ありがとう!一応、2日間だから、それ終わった頃に出発しようかな!」
しゅんちゃん「僕は、いつまでいてくれてもいいから!」
明日からみかん狩りのバイトへ行くことになった私は、今日1日を皆とまったり過ごす。
私は、もうここしゅんちゃんのアトリエを後にすれば、残りの52番~59番までを打ちながら広島へと帰るだけだ。
どうしても思い残しのないよう、私の長かった遍路3周の旅の最後を真剣にしっかりと満足いくよう皆と遊んでおきたかった。
とりあえず、私の予定は、年内、何もない。年明けから春までは埋まっているのだが、それまでは私にとっては自由に使える残りの時間でもあった。
私「ねえねえ!しゅんちゃん!昨日、買って来た脱色剤で、しゅんちゃんのモヒカンを金色にしようよ!」
しゅんちゃん「やろう!やろう!」
私は、自分の髪の毛の黒く伸びた辺りを脱色し、しゅんちゃんのちょこんとのっているモヒカンも金色にしてあげた。
私「ははは!しゅんちゃん、似合ってるよ!」
しゅんちゃん「きゃははは!僕のもNoisyと一緒になったね!」
まるで子供達が遊んでいるかのように戯れているしゅんちゃんと私を見て、戸田君が一言いう。
戸田君「お前ら、何をしよるんやあ?金髪コンビになったのお!ははは!」
こんな具合に1日が過ぎ、お昼過ぎに電話がなった。
バイクで無期限の引っ越し旅を沖縄までしているマスターからだった。
マスターとは、堂山大師堂から杖が淵公園で夜を一緒に過ごし、最後、せっちゃんと道後温泉で足湯をしに行く所で偶然出くわして以来だ。
私「はい。」
マスター「あ、Noisy。あ、俺です。」
私「うん。どうしたー?」
マスターの声は、何故かとても改まっていて、何か大事な話をしたいかのように声が真剣だと気づく。
マスター「今、何処にいるんですか?」
私「あ、今、遍路仲間の家にいて、香川県の善通寺にいるよー!マスターは何処にいるの?」
マスター「俺は、佐田岬にいます。今日、着きました。」
マスターは、四国を遍路まがいしながら周り、最終的には愛媛県の佐田岬から、九州へ船で渡ると言っていたはずだ。
佐田岬とは、四国の地図を日本の地図で見ると左上の九州へと飛び出した細長い半島の突端にある岬だ。
飛び出した半島の付け根辺りから突端までは、約50キロもあり、本当に佐田岬へ向かうためだけに伸びているかのような細くて長い半島だ。
私「あ!それじゃあ、これから四国を後にして九州へ渡るんだ!」
マスター「一応、そのつもりでここまで来ました。」
私「一応?」
マスター「はい。まだ、決めてません。決断する前にどうしても伝えたいことがあって。」
マスターの声は、真っすぐ真剣だ。
私「決断する前に伝える事?何?」
マスターはしっかりとした声で自分の思いをぶつけるかのように口を開く。
マスター「俺は、佐田岬へ着いて、Noisyに伝えようと決めて、ここまで来ました。」
私「うん。」
マスターの声はただ事ではない声色だ。
マスター「佐田岬でNoisyに伝えようと思っている事は、俺は・・・俺は・・・Noisyが好きです!」
え?
予想外!
マスター「Noisyは、カッコいいっす!生き方も考え方も。俺は・・・そんなNoisyに惚れました!」
うっわ~~~!
カッコいい!
マスター「クラエーーー!コノヤロウーー!!」
私「ははは!そう言ってくれるのは、嬉しいけど、何を決断するの?それで。」
マスター「俺は、これから船に乗って九州へ向かえるよう佐田岬へ来たけど、もし!もし!Noisyが、俺を必要としてくれるなら、俺は、ここから船に乗るのはやめて、今すぐ、Noisyのいる所へバイクで向かおうと思ってます。でも、もし、Noisyが俺を必要としないなら、俺は、このまま船に乗って佐田岬から九州へ渡ります!」
私「ああ、そうなんだあ。」
マスター「俺は、Noisyが来てくれと言うなら、今すぐに向かいます!俺の行き先は、これまでわからなかったけど、俺の中で行き先はNoisyだと思ったから。でも、Noisyが必要じゃないと言うなら、九州へ行きます!」
私「そっかー。」
マスターの真っすぐな言葉は、とても心に響いて感動すらした。
マスター「Noisy、覚悟はできてます!俺の行き先は、Noisyですか?それとも九州ですか?」
私は、心の中で祈った。
マスター頑張れ!
カッコいいよ!
私「マスターの行き先は・・・沖縄を目指して九州だよ。」
マスターは、一段と声を張り上げて真っ直ぐに答える。
マスター「ありがとうございましたーーーー!!」
マスターは、どうやら受話器の向こうで声を殺して泣いているようだ。
私は、更に心で祈る。
マスター!
頑張れ!
今、滅茶苦茶カッコいいよ!
少しの間、涙で声が出せないのか黙りこみ直ぐにきっぱりと決断するかのように大きな声で真っすぐに言う。
マスター「ありがとうございましたーーーー!!クソーーーー!クラエーーーー!!コノヤロウ!」
ほんの少しの間、マスターが「ウッ、クッ・・・」と声を殺して泣いているような音が電話から漏れていた。
マスター「Noisy!出会えて良かった!お蔭で、決断できました!俺は、これから次の船に乗って九州へ行きます!」
私「そっか!わかった!頑張れよ!」
マスター「はい!ありがとうございます!Noisyも残りの遍路を楽しんで!」
私「うん。ありがとう!」
マスター「本当に楽しかったです!」
私「私もよ!」
マスター「それじゃあ、俺、行きます!」
私「うん!じゃあね!」
マスター「クラエーーーー!コノヤロウーーーーーー!」
そう言って、電話は切れた。
私は、こんなに真っすぐに自分の気持ちをぶつけられるマスターがカッコいいと思った。
結果、振られることになってしまったのだが、その決断をこの短い電話の間でしなければいけなかったのは、とても辛かっただろうと思うのだけど、マスターは私に格好いい所だけを見せて、四国を後にして九州へと旅立って行った。
杖が淵公園で、マスターが「Noisyは、カッコいい!俺の行き先を教えてくれ。」と言っていたのは、私に着いて来いと言って欲しかったのかもしれないと、後から思う。
でも、あの時私は、「自分の行き先くらい自分で考えろ!」と言い捨てたはずだが、それをマスターは、自分なりに考えて出した自分の行き先の結果がこれだったのだろう。
ああ・・・。
旅人だな・・・。
マスターには、今後素敵な出会いがあるといい。
それにしても、今夜も勝さんは戻ってこなかった。
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