私の連続3周野宿の旅のハチャメチャ珍道中を連載中!
目次:【序章】&【第1章】&【第2章】 & 目次:【第3章】
これまでのあらすじをざっくりと!→2章までのあらすじ
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■3章:遍路3周目■深まる絆
5. 走れ!逃亡中の遍路は逃げて逃げて逃げまくる!
DAY90-5
私達3人は、更に歩き続ける。
せっちゃん「なあ、なんでワシらがクジラ大師へ行くって知ってんの?」
私「さあ?ってか、知らないんだろうけど、せっちゃんと私が遍路服着てるし、博士も島の人じゃないから、そう言う人はクジラ大師へ行くしか、この島で他へ行く所もないんじゃない?」
博士「ははは!そやろね。やから、皆、和尚さんの所へ行くと思っとるんや!」
私達が更に5分程、話しながら歩いていると、向かいからママチャリに乗ったおじいちゃんがやって来た。
おじいちゃんは、一旦、私達の前で自転車を止め、話しかけてきた。
おじいちゃん「クジラ大師さん?」
私「そうです!」
おじいちゃん「和尚さん、あっちへ行ったよ!あっちあっち!」
私「あ、さっき会ったので大丈夫です!」
おじいちゃん「あ、ならよかった!」
おじいちゃんは、自転車をまた漕ぎ始めた。
せっちゃんと博士は、クスクスと笑っている。
すると直ぐにおじいちゃんは、「あ!」と叫んで、戻って来た。
おじいちゃん「あ、これ持って行って!あげるから。」
おじいちゃんの自転車の前のかごには、みかんが満タンに入れられていた。
私「え!?いいんですか!?」
おじいちゃんは、ニコニコしながら答える。
おじいちゃん「いいよ!はい!」
私達は、この島で採れたであろうみかんを頂くことが嬉しくて心弾んだ。
おじいちゃん「あ、ちょっと待って!これ!あ、あったあった!」
そう言って、ポケットからスーパーのビニール袋を取り出して、なんと、かごの中のミカンを全部詰めてしまった。
私「あ、いやいやいや!1個ずつで十分ですよ!1個で!」
おじいちゃん「いやいやいや!全部あげるよ!それじゃあ!」
おじいちゃんは、なんと、かごの中のミカンを全部袋に詰め、私達に渡すと直ぐに立ち去ってしまったので、振り向いておじいちゃんにお礼を言った。
私達「ありがとうございま~っす!」
そして、再度、進んでいる方向へ私達は向き、3人で顔を見合わせてしまった。
私達「え?重い・・・。ははは!!」
私「でも、せっかくもらったから、持って行こう!和尚さん達にもあげたらいいし!」
せっちゃん「そやな!」
博士「じゃあ、とりあえず、2個ずつくらい食べれば、軽くなるよ。」
私「そうしよう!」
私達は、おじいちゃんにもらった美味しいミカンを食べながら、更に道を進む。
3分程、歩いたところで、また数軒家が現れ、同じように椅子が並べられて、数人が集まって井戸端会議を楽しんでいるようだった。
すると、例にもれず、ここでも同じことを皆が心配してくれた。
おばあちゃん「ちょっとー!和尚さん、あっちー!」
おじいちゃん「そうそう!あっちやあっちや!」
私「ははは!会ったから、大丈夫です!ありがとうございま~っす!」
おばあちゃん「そうかあ。それならよかったわー!」
またおばあちゃん達は、何事もなかったかのように井戸端会議へと戻る。
私達は、あまりにもフレンドリーな島の人達に心温まりながらも、笑えて来る。
せっちゃん「ははは!なんか、可笑しいなあ!皆、和尚さんがどっちへ行ったかまで、知ってんで!」
私「ははは!ほんとだよー!今度は、私達が、こっちへ行ったことが皆に知れ渡ってるよね。」
博士「ほんとや!ははは!!」
そうこうしている内に、お寺の看板が出てきたので曲がって少しだけ上るとお寺があった。
振り返ってみると、太平洋が見え、なんとものどかで素敵な所だった。
私「わーーー!海が見えるねーー!!」
せっちゃん「ほんまやなあ!ええとこやん!」
博士「うん!」
そうこうする内にすぐ、和尚さん達が車で戻って来た。
私達は、改めて挨拶を済ませ、寺の中へと通される。
私は、密かにここの和尚さんの顔は、私の尊敬する長野の親分に似ているなあと思ったりして、またふと親分が懐かしく思い出された。親分は、鼻筋が外国の人のように通っていて、いかにも元プロボクサーらしく厳つい雰囲気なのだが、ここの和尚さんは、それを柔らかにして優しそうにした感じだった。
私達は、寺の一室に通されると、和尚さんは、心静かにお茶をたててくれる。
せっちゃんも博士も、この張りつめたような空間に少し緊張しているようだ。私は、お茶などを正式な方法で頂いたことはなく、作法など知らなかったのだが、この和尚さんの作り出す雰囲気が、とにかく居心地のいいものだった。
和尚さんは、お茶をたて終わり、静かにお茶を私に差しだした。
和尚さんの身のこなしに無駄もなく、穏やかで綺麗な動きには、その教養の深さを思わせるのだが、その人間の優しさや包容力からくるのだろう。それは、相手を緊張させるものではなく、包み込むようなものだった。きっと、教養もあり勉強もされているのだと思うのだが、もっとずっと奥深くの何かを悟られているかのように、修行も積み重ねてこられたに違いなかった。
和尚さん「どうぞ。」
隣でせっちゃんと博士が、どうしていいのかわからないと言ったような一瞬緊張するのを私は感じた。
ただ、私は、よくフレンチなど行くと緊張だけして疲れると世間様で聞くことがあったのだが、あれはあれで慣れれば、あの緊張するような空気が反って心地よいものである事を知っていたし、作法がわからないのであれば、相手に失礼にならないように聞けばいいのだ。
そもそも作法とは、相手に嫌な思いをさせないと言う事が原点だと思うからだ。
私は、きっとこの和尚さんなら、そんな私をも包み込んでくれるほどの作法や心をお持ちだと察した上で、私は、一言和尚さんに言葉を発した。
私「和尚さん、私は、申し訳ないのだけど、お茶の作法を全く知りません。もし、失礼な事があったらお許しください。ただ、私は、こうやって折角たてて下さったお茶を美味しく頂かせてもらいたいと思います。」
すると和尚さんは、直ぐに片手に反対の手を肘にあてるかのようにしながら、丁寧に言葉を発しながら、お茶をすすめて下さった。
和尚さん「そのような事は、お気になさらず、どうぞ召し上がって下さい。」
私は、この和尚さんとの会話が、心に響き、静かで癒される時間が流れる。
私「では、いただきます。」
私は、器を持ち上げ、静かにお茶を口に一口入れる。
その瞬間、なんと、時間が止まってしまった!
わからない!
何なのだろう?
この極上の時間は!
まるで永遠にこのままなのではないかと錯覚をするようなそんな時間。
きっと、私がこのお茶を3回程度で飲み干すだけの時間なのだけど、今、ここで動いているのは、このお茶を飲んでいる私だけで、この宇宙全ての空間は、何もかも静止して、止まってしまっているのではないかと言うような不思議な感覚。
それはまるで、私一人、異次元へ迷い込み宇宙空間と繋がり、聞こえてくるのは自分の鼓動の音だけのような無音の世界に迷い込んだかのようだ。
私は、お茶を飲み終り、静かに和尚さんに言葉を発する。
私「和尚さん。ありがとうございます。とても美味しかったです。」
和尚さん「それは、よかったです。喜んでいただけて。」
和尚さんは、静かに包み込む笑顔で答えてくれた。
直ぐに、せっちゃんや博士にも順番にお茶をたてて下さり、緊張気味の二人もお茶を飲み終った。
私は、人生でこんなにも時間が止まってしまったかのような素敵な空間を体験したことがあるだろうか?
楽しさの感覚として似ているとすれば、高級フレンチなどを食べに行った時のあの緊張感を楽しむのに似ていたのだが、それとは明らかに違ったのは、この和尚さんの作り出す不思議な光に包まれて時が止まったと勘違いをするほどだった事だ。
明らかに、この極上の時間と空間を生み出していたのは、この和尚さんのお人柄に違いなかった。
お蔭で私は、いまだにあの時と同じ感覚を味わいたくて、お茶にも興味がある。
いや、正確には、お茶に興味があっても、作法と言う物を形だけではなく、本当の意味で心得ている程の相手でなければ、あの時と同じ感覚は得られないのだろうとも思う。
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