私の連続3周野宿の旅のハチャメチャ珍道中を連載中!

目次:【序章】&【第1章】&【第2章】 & 目次:【第3章】

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■3章:遍路3周目■深まる絆

            5. 走れ!逃亡中の遍路は逃げて逃げて逃げまくる!

 

DAY90-3

 

せっちゃんは、まだまだ半泣きの状態で『どんと』の店内で話をする。

 

せっちゃん「それでな、高ちゃんが亡くなってしまった時も、Noisyは、一緒におってくれて助けてくれとったのにな、シクシク、ほんまにワシは、どんだけアホやねん思ってな。え~ん。ヒックヒック。それで気が付いて、これは追いかけな!ほんまに遍路中に追いついて謝らな、ワシ、ほんまに取り返しがつかんなー思って、必死に追いかけてん!」

私「そうだったんだね。」

せっちゃん「でもな、追いかけても追いかけても中々追いつけへんかってな。シクシク。で、なんで追いつけへんねやろう?思って、毎日毎日、謝りたいと思ってお寺を回ってるのにな、全然追いつかへんから、ほんまにほんまに必死やってな!わあああ~~~~ん!」

 

それはそうだろう。

それは、私が追いつけないように逃げていたからだ。

でも、その逃げている時間が長ければ長い程、せっちゃんは、毎日、反省する時間も長かったと言う事だ。

私は、もう十分だろうと思った。

 

私「せっちゃん。もういいよ。わかったんなら。」

せっちゃん「Noisy、ほんっまにごめんやでーーー!!許してやーーーー!!わあああ~~~~ん!」

 

せっちゃんは、店内で他の人が何事かとチラチラと見ている視線など気にならないようだった。

 

私「せっちゃん。もう、いいって!」

せっちゃん「ほんっまに、ワシ、アホやああああ~~~!!わあああ~~~~ん!」

私「せっちゃん!もう、いいよ!何事も自分自身が気づかなければ、何にも変わらないけど、せっちゃん自身が気づいて、こうやって追いかけて来たわけだから。」

 

せっちゃんは、ふと顔を上げて、涙目の顔で私に聞く。

 

せっちゃん「許してくれんの?」

私「許すも何も、せっちゃん自身が気づいて、これからどうするかだから。当然、せっちゃんが勝手な人なら、私だけじゃなくて、誰でもせっちゃんから離れて行くだろうし。それは友達であろうと彼氏であろうと。だから、せっちゃんが本当にこれからどうするかだよ。確かに1周目のせっちゃんは、本当に自分勝手だったと思うよ。でも、それを私がいくらせっちゃんに言ってみたところで、せっちゃんが気づかないなら何の意味もないわけで。だから、私はそれを待ってたから。だから、せっちゃんがこうやって気づいたなら、私は、それでいいんだよ。」

せっちゃん「ありがとうーーー!!わ~~~ん!」

私「せっちゃん!もう、いいって!食べようよ!」

せっちゃん「そやな!食べよう!」

 

3周目の目的は、私は、1周目の屈辱を精神的にも体力的にもひとり晴らすことだった。

本元の精神的苦痛は、1周目の時のせっちゃんから来ていたので、せっちゃんにそれをお返しするのではなくて、ひとり旅を楽しむことで解消しようと思っていたのだ。

しゅんちゃん、戸田君、勝さん達やその他、出会った人達との楽しい時間でひとり自由に旅を楽しむ事で少しずつ解消されつつはあったのだが、結局、まさかここへ来て、3周目の本元の苦痛の原因が取り除かれるとは夢にも思っていなかった。

体力的には、ここへ来るまでにかなり思う存分走っていたところもあって、その部分は、ほぼ満足に達しようとしている。

 

本当にお遍路は不思議だ。

私が3周目にしたかった事が、ここでほぼ叶ってしまった。

せっちゃんは、私が逃げるように走っていたことで、中々私に追いつけず、毎日反省する時間が確かに増えてしまった。ただ、それはそれで、せっちゃんにとっても必要な時間だったと思う。

簡単に追いついて簡単に謝って、明日から何も変わらないくらいなら、心の底から「しまった!」という気付きを心に焼き付けながら、せっちゃんがお寺巡りをする事で、今日、ここで人目を気にする余裕がない程、せっちゃんの心の奥底からの叫びが私に十分に伝わったのだ。

これは、お遍路だけではなく、普段の生活の中でも結局、何事も望んだ通りになってしまうと言う事だろう。

私は、確かにせっちゃんから逃げた。

でも、1周目の時にもせっちゃんが自分で気付くことを願いつつ、「解散宣言」をして、待ってもいたわけだ。

ただ、1周目の時は、待ったものの最後の高野山で振り出しに戻っただけで、せっちゃんは何も変わってなんかいなかった。だから3周目は、せっちゃんの事を抜きで、自分一人で精神的にも体力的にも満足がいくようにと追い求めたわけだし、せっちゃんに3周目の早い段階で関わって欲しくなかったわけだけど、まさかその3周目に求めていたことが完全なる形で叶ってしまうとは。

あと、叶っていないのは、もう少しだけ自転車で走りたいのともう少しだけ旅を楽しみたいと思っているだけだ。

 

私「で、せっちゃん、あのパンクはどうなったの?」

せっちゃん「あんなあ、大分時間かかるかな思ったら、直ぐに直ってな。」

私「うん。びっくりしたよ!5分かかったっけ?ってくらいの勢いだったよね!」

せっちゃん「そんな早かった?ワシ、もう、必死やったからーーー!!え~~ん!」

私「ははは!せっちゃん、もう、いいってーーー!!」

せっちゃん「ははは!ほんまやなあ!ははは!」

 

私達は、お昼ご飯を食べ終わって、久々の再会を祝してパフェで乾杯することにした。

 

私「パフェだけど、乾杯!」

せっちゃん「乾杯!」

私「あ、せっちゃん、この後、クジラ大師へ行くんだけど、せっちゃんも行く?」

せっちゃん「行くでー!」

私「で、博士も行きたいって言うから、今、香川県からずっとこっちへ向かって車で来てると思うから!」

せっちゃん「え!博士も行けんの!?それは、楽しいなあ!」

私「でしょ!夕方のフェリーで行こうと思ってるから。あ、そしたらゴンちゃんに連絡しておかなきゃいけないね。」

 

私は、ゴンちゃんに連絡して、博士とせっちゃんと私の3人で行くと伝えておいた。船は、16:40発の船があると言うので、それで行くことにする。

 

せっちゃん「クジラ大師、楽しみやなあ!」

私「でしょ!和尚さんも奥さんもすっごくいい人らしくて。で、お酒を飲ませてくれるってゴンちゃんが言ってたけど、朝の5時にはちゃんと和尚さんが読経をされるらしくて、朝が早いよって。」

せっちゃん「そうなんやー!そしたら、どんなに飲んでもちゃんと起きなあかんなあ!」

私「うん。でね、その和尚さん、他のお経はあれだけど、般若心経は滅茶苦茶速くてホーミーみたいらしいんだよね。だから、それも聞きたいなと思ってるよ。」

せっちゃん「ホーミーって!ははは!!」

私「ホンヤーホンヤーホンヤーホンヤーホンヤーホンヤーしんぎょう!チーン!って感じじゃない?」

せっちゃん「ははは!!聞いてみたいなあ!」

 

久しぶりに会ったので他の話でも色々と盛り上がる。

 

私「あ、せっちゃんも別格6番の龍光院へ行くよね?」

せっちゃん「行くでー!」

私「そしたら、港も近いし、寺も近いから、4時過ぎに船に間に合うように行ったらいいよね。」

せっちゃん「そやなあ。それまでここにおろや!」

私「あ、博士に船の時間を連絡しないと!」

 

私は、博士に電話をかけて、16:40分発の船で行くことを伝え、博士にも間に合うかどうかを確認すると、なんとか16:30頃には港に着きそうだと言うので、ギリギリだけどホッとしていた。

 

私「博士は、ギリギリになりそうだけど、なんとか間に合いそうだよ!」

せっちゃん「よかったなあ!」

 

せっちゃんとドリンクバーをしながらあれこれ話していると、3時過ぎになったのでそろそろ私達は、龍光院へお参りに行くことにして、お会計を済ませ店の外へと出る。

出発しようと自転車の所へ行くと、せっちゃんが私を呼びとめた。

 

せっちゃん「あ、Noisy!」

 

私は、振り向いてせっちゃんを見ると、せっちゃんは祈るような顔で何かを私に手渡した。

 

せっちゃん「もしかして、もしかして・・・もう、持ってるかもしれんけど・・・。」

私「ん?何?」

せっちゃん「これ!寺を回りながら、Noisyに謝りに行った時に絶対に渡そう思ってここまで持って来たんや!」

 

私は、手渡されたものを見た。

 

私「あーーーーー!!海岸寺の念珠玉じゃーーん!」

 

せっちゃんは、心配そうな顔で私に聞く。

 

せっちゃん「Noisyは、あそこの念珠玉だけ買えてへん言うてたやろ?やから、Noisyに会った時に渡そう思って、Noisyのも買ったんやけど。」

私「わーーー!せっちゃん、ありがとうーーー!!実は、私、2周目に戻った時に買いに行こうと思ってたら、結局、買いに行けなかったんだよねー!」

せっちゃん「よかったー!そうなんやー!まだ、買えてなかったんやなあ!」

 

私は、マントラでゴンちゃんとの騒動があり、翌朝すぐに出発してしまったから、海岸寺へ寄って念珠玉を買えなかったのだ。

それよりも何よりも、せっちゃんが、私に謝って、この念珠玉を渡したいと思って買って持って来てくれた事が、嬉しかった。

 

私「ありがとう、せっちゃん!なんか、このせっちゃんの気持ちがこもった海岸寺の念珠玉も増えたから、これで数珠を作ったら、すっごい思い入れの深いものになるわあ!嬉しいよ!」

せっちゃん「喜んでくれてよかったわー!もしも、もう買っとったらどうしよーと思っててん!」

 

 

この事もそうだが、私がああやって、2周目の時にも念珠玉を買いそびれたのは、この結末が来ることを私の運命は既に定められていたのかもしれない。

 

つづく・・・   

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