私の連続3周野宿の旅のハチャメチャ珍道中を連載中!

目次:【序章】&【第1章】&【第2章】 & 目次:【第3章】

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■3章:遍路3周目■深まる絆

            5. 走れ!逃亡中の遍路は逃げて逃げて逃げまくる!

 

DAY88-4

 

誰が私を救助しに来たと言うのか?

それにしても、その男性の声は、緊迫している。

 

私「あ、はい!」

 

私は、トイレの外に向かって大声を出した。

 

男性「あ!Noisyさんですか!?」

私「あ、はい!」

男性「ちょっと、安否の確認をしたいので、直ぐに、一旦、出て来てもらっていいですか!?」

私「え?あ、あの・・・。」

男性「とにかく、救助に参りましたので、すみません!一旦安否の確認だけさせて下さい!女性用のトイレなので歩けるようでしたら、一旦、姿を見て無事を確認させて下さい!」

私「あ、あの、出て行きたいんですけど、今、全身ビキニなんですけど、そんな変な格好でもいいですか?」

男性「かまいません!とにかく、まず安否だけ確認させて下さい!」

私「あ、わかりました!」

 

私は、一体、誰が救助をよこしたのか不思議に思いながら、その男性の緊迫した声に急かされて、ビキニ姿のままトイレの外へと出て行くと、知らない40代後半くらいと思われる男性が立っていた。

 

男性「Noisyさんですか?」

私「あ、はい。」

男性「お怪我はないですか?」

私「あ、怪我はしてません。」

男性「あー。よかったー!」

 

その男性は、心底安心したようだ。

 

私「え?あの誰が救助を呼んだんですか?」

男性「作田さんです。」

私「え?作田さん?」

男性「あの香川県にお住いのお遍路関係の事を色々されてる方ですよ。」

私「え?あの。その方の話は他の人から聞いてますけど、その人と直接話したことはないんですけど・・・。」

男性「とにかく、その格好では寒いだろうから、とりあえず、服を着て、僕のおうちへ来てください。そこでお風呂に入って、今日は、僕の家だと気を遣うでしょうから、もう宿を手配してあるんで、そこへ連れて行きます。」

私「え?いや、あの私、もう大丈夫ですよ!ここで寝れますから!」

男性「いや、作田さんからお願いをされているので、そういうわけにはいきません!とにかく、僕の家へ一旦、移動しましょう。ちょっと、家族と2世代で住んでるんで手狭ですけど。ここの水道ではなく、うちの温かいお風呂に入って下さい!」

私「うわ~!ありがとうございます!」

男性「そしたら、明日、その宿から、ここのトイレへもう一度連れてきてあげるんで、自転車はそのまま置いといたらいいから。」

 

私は、直ぐに支度をして、その男性の車で家へと向かう。

 

私「あの、私、ちょっと訳がわからないんですけど・・・。一体、誰が?」

男性「僕も、今日、作田さんから電話があって、ここの水車で立ち往生している広島から来てる自転車遍路をしてる子がいるって聞かされたんですよ。それで安否確認に行ってほしいって。」

私「でも、私、作田さんと今日どころか、話したこともないんですけど。」

男性「作田さんもある男性から電話を受けたそうなんですよ。で、その男性が名乗る前に切羽詰まった声で『Noisyが、水車で立ち往生してる!助けてくれ!』とだけ言って切れたそうなんですよ。」

 

私は、一体、誰がそんな電話を作田さんにしたのか考えてみた。

 

あ!そうだ!勝さんに違いない!

 

実は、この後、色んな人から聞かされた話なのだが、勝さんは私と電話で話した後、四国中の人に電話をしまくったらしいのだ。

私が水車で立ち往生しているから助けてほしいと。

 

私「それ、もしかしたら勝さんかもしれないです。」

男性「それが、一瞬で電話が切れたから、作田さんも、さっぱり誰だったのかわからなかったみたいなんですけど、Noisyさんの話は他から聞かれてたみたいで、とにかく水車でNoisyが立ち往生してるって事だけわかったようで。」

 

作田さんの事は博士から聞かされていたので、きっと作田さんに博士が私の事を話していたのだろう。

 

私「作田さんは、四国中に連絡できる凄い交友関係の方だとは聞いてます。」

男性「そうでしょ。あの方、四国の至る所、隈なく色んな方を知ってらっしゃるんで。じゃあ、その勝さんって方も思いつかれたんでしょうね。それで、作田さんから電話があって、水車やったら近いよって言うて、直ぐに家を飛び出してきたんですよ。」

私「そうだったんですね!ありがとうございます!今回は、私の連続3周遍路の旅の中で最大の危機だったんですよ。もう、どうにもならないって思ってたら、助けてくれる人が現れて、一応、あの水車へ戻って来れて、最悪な状態からはなんとかなるところだったんです。」

男性「いやあ、僕も慌てましたよー!一体、どんな状態になってるんやろーって。でも、よかった!」

私「今日こそ最悪の日になるはずだったのに、今日こそ、まるで天から助けが舞い降りてきた気分です!」

男性「あ、僕は、木村です!いや~、それにしも、あの時は自分の中で、その女の子がどんな状況になってるんやろう思って、場合によっては、救急車も呼んだ方がいいなあと思いながら行ったんでね、とりあえず、無事を確認しなきゃと思って、Noisyの無事を確認してホッとして、何にも思わんかったけど、今、こうやって落ち着いて、よう考えてみたら、ドライブインの公衆トイレから、ビキニの人が出て来るって可笑しいよね。」

私「でしょ!はははは!だから、私は、変な格好だって言ったんだけど。でも、1分1秒を争うような感じで声がすっごい緊迫してたから、慌てて出て行って、その時は私も必死だったから特に何も思わなかったけど、今思ったら、可笑しいでしょ?ははは!」

木村「ははは!!ほんまやなあ!もう、これは一生語り継がれるくらいの出来事やったわ!」

 

この木村さんという男性は、高知市内でサロンを経営されているらしく、人当たりもよくて営業マンにはもってこいと言うよりも、営業マンとしては天下一品で情の厚い話の上手な素敵な人だった。

木村さんは、私を家へ案内してくれ、直ぐにお風呂へ案内してくれる。

私は、土砂降りの雨に打たれて冷え切った身体を湯船で温める。

 

あーーーー!

助かったー!

冷え切ったまま、寒空の下で雨の中、トイレで寝るのかと思ってゾッとしてたけど、本当にありがたい!

そっかー。

勝さんかーーー!

あの時、最悪のタイミングで電話をくれた勝さんだけど、逆にお蔭で私はタクシーで大師堂へ行くこともなく、今日、こうやって木村さんにも会う事ができたんだな~。

勝さん、ありがとう!

 

私は、勝さんが私を遍路仲間として、そこまでしてでも助けてくれたことが嬉しかった。

勝さんに電話を折り返したいところだが、勝さんは電話を持っていない。さっきの電話も公衆電話からだったのだ。

勝さんは、托鉢をしながら周っているので、なけなしのお金しか持っていなかったはずだ。それなのにそのお金を使い切ってでも四国中に片っ端から電話をかけてくれたことになる。もしかしたら、勝さんは今夜、私を助けるために電話代に全てを使い、この雨の降る四国の寒空の下でお腹を空かせているのかもしれなかった。

高知市内で遍路仲間と家族のように過ごしたあの時間は、勝さんにとって、本当に心のよりどころでもあったのかもしれない。だから、家族を守るかのようなほどの事をしてくれたのだろう。

ふと、胸のあたりが熱くなる。

 

勝さん・・・。

 

 

私は、身体も温まりさっぱりしてお風呂から出ると、木村さんは、私が気を使うと疲れることを気にしてくれ、旅館へ連れて行くと言う。

 

私「いやいやいや!悪いので、私は、お風呂に入れたし水車へ連れて行ってくれれば、十分です!」

木村さん「いやいや!そうは、いかないよ!気にしなくていいから!それに、ここに泊まってくれても全然かまわんのやけど、ここにいたら気を使って疲れるやろうから、自由にできる旅館へ行った方がええやろ思って、もう予約も入れたから。お金ももう払ってあるから!」

私「えーーー!ありがとうございますー!何から何まで!」

 

木村さんは、とにかく私に気を使わせないよう、おむすびを持たせてくれ、旅館へと送り届けてくれた。

 

私「本当に、ありがとうございます!最低の日になるはずが、最高の日になりました!」

木村さん「よかったわあーー!それなら!やっと、安心できるよ!」

私「でも、何より木村さんに出会えてよかった!」

木村さん「いやあ、実は、僕もそう思ってて、こんなオーラを持ってる人がおるんや思って!とにかく明日の朝、8時に迎えに来るから、水車まで連れて行ってあげるし、ゆっくりして!」

 

木村さんは、私を旅館へ送り届けると、また車で帰って行った。

あれやこれやと色々な危機に直面して、ようやく旅館にたどり着いた時には、既に夜の9時だった。

心の底からホッとして、宿に泊まっていた人達としばらく戯れ、心底疲れ果てた体を旅館の布団で休める。

 

ああ・・・。

布団は、ありがたい・・・。

結局、大師堂でお婆ちゃんに会いたかったけど、会えなくなってしまったな・・・。

でも、代わりに今日は、素敵な出会いの連続だったよ!

 

今日の走行距離は、大師堂まで戻れなかったから、合計95キロだった。

 

つづく・・・   

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