私の連続3周野宿の旅のハチャメチャ珍道中を連載中!

目次:【序章】&【第1章】&【第2章】 & 目次:【第3章】

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■3章:遍路3周目■深まる絆

            4. 追われる身の私の隠れ家は家族のような仲間達だった

 

DAY86

 

光明庵で皆それぞれに目覚めると、半田さんは、既に朝早くに出発していた。

また昨日再会できた喜びが、今日また、お別れかと思うととても寂しく、耐えがたい気持ちになっていると、皆も同じ気持ちなのか、誰一人として出発の準備を始めない。

 

私「ねえ、今日は皆、どうすんの?」

勝さん「あ・・・うん・・・。」

私「しゅんちゃんは?」

しゅんちゃん「僕は・・・はっきり言って、もうちょっと皆と一緒に居たいです。できることなら行きたくない。」

戸田君「まあ、皆が、結局戻って来たっちゅうのは、誰も行きたくないんよ。」

私「うん。そうだよね。まあ、離れると寂しいしね。」

 

しばらく、沈黙が続く。

結局、一人残らず、誰も出発したくないのだ。

というより、出発してもいいのだろうが、皆がバラバラになるのが寂しすぎるから、もし、皆、この先同じ方向へ同じ速度で進むなら、皆でむしろ出発しているのかもしれない。

これが、順打ちか逆打ちの人達の出会いであり、別れでもある。

歩きや自転車、バイク、車など速度の違いも早い方が遅い方に合わせない限り、出会ったら直ぐにお別れを迎えることになるのだ。

当然、ここにいつまでもとどまっていてはいけないことくらい、皆一人残らずわかっている。

 

そんな重たい空気を消すかのように戸田君が提案をした。

 

戸田君「ほいじゃあ、誰も離れとうないみたいじゃけえ、わかった!」

私「ん?何がわかったの?」

戸田君「こうしようやあ!あのの、今日は、皆、出発せん。ここで皆と気持ちよく思う存分1日一緒におって、その代りに、絶対、明日は、一人残らず、全員出発するちゅうのはどうや?」

 

今日、一日でも皆と一緒に居られることが嬉しいのか、しゅんちゃんが直ぐに答えた。

 

しゅんちゃん「僕は、そうしたい!」

 

勝さんも実は、皆と離れたくないから、わざわざ昨日歩いて戻って来ている程だ。

とても嬉しそうな顔で答える。

 

勝さん「そうだな!今日一日は、一緒にいてーよな!でも、明日には絶対に全員出発って事で!」

戸田君「ほいじゃあ、お前はどうするんや?」

 

皆が息をのむように私の答えを待つ。

私は、はっきり言って、このまま皆と一緒に居たかったのだが、今にも迫りくるせっちゃんの事が頭をよぎり、気持ちが焦る。ただ、だからと言って、折角の私の旅をせっちゃんが迫りくると言う理由で台無しにもしたくない。そうか・・・。1日伸ばすことで、この後、走るのがきつくなってしまうだろうけど、折角、こんな出会いがあって、皆の気持ちも一緒なのにそれを壊したくはなかった。

そうか・・・。

明日からは、がむしゃらに走りまくるしかない。でも、今日は、今日1日は、ここに皆といよう!

 

私「そうだね!今日は、ここにいるよ!明日、全員出発って事で!」

 

その瞬間、皆、ホッとした顔になり、喜びが隠せない程、顔がほころんでいる。

 

戸田君「よし!じゃあ、決まり!って事で、トランプしよーやー!」

私「え!?このタイミングで発言する事!?」

皆「ぎゃはははははーーー!!!」

 

また、皆にいつもの笑顔と笑いが戻って来た。

 

私「じゃあ、大富豪しようよ!」

戸田君「大富豪はやめようやあ!」

私「なんで!?自分が弱すぎて皆に勝てないからでしょ?」

戸田君「何、言いよるんやーーー!皆にええ思いをさせとっただけよお。ワシが負けることで楽しかったじゃろ?勝てて。はははは!!」

私「じゃあ、負かしてくれていいから、大富豪する?」

戸田君「え~ですよ~!はははは!!」

勝さん「おい!戸田!ごちゃごちゃいいから、やれよ!ケラケラケラ~。」

 

こうして、ぎゃあぎゃあ言いながらのトランプ大会が始まる。

それにしても、戸田君付きのトランプ大会は本当に面白い。

戸田君は、年上の勝さんに気を使っているのか、しゅんちゃんのようにプロレス技で羽交い絞めにはしないのだが、勝さんをからかって、小柄な勝さんを押しつぶそうとしていると、勝さんも笑いが止まらないのか、まるで子供の様にはしゃいでいる。

 

勝さん「ケラケラケラ!おい!戸田―――!!やめろーー!!!はははは!!きゃ~~はははは!!」

私「ちょっとー!おい!そこの声のデカいの!お前の番だよ!」

戸田君「何言いよるんやあ!お前もええかげん、声がでかいっちゅうねん!」

私「あんたのよりは、小さいよ!」

戸田君「お前も負けとらんでーーー!!」

しゅんちゃん「いや、戸田さんの方が、はるかに大きいよね。」

勝さん「ほんとだぞ!もう、この小屋、戸田の声で倒れるんじゃねーか?」

戸田君「またー!もう!勝さんまで!」

皆「ぎゃはははははーーー!!!」

 

また勝さんは、戸田君に押しつぶされそうになって笑い転げている。

戸田君は、私には気を使っているのか、プロレス技をかけたり、押しつぶしたり、近寄って来ることはない分、言葉攻めにあう。

なので、時々、本気で腹が立つこともあった。

すると、余計にこちらも戸田君に冗談で悪態をつくと、更にその悪態の冗談が反って来て、私と戸田君の会話はどんどんエスカレートして白熱していく。

しゅんちゃんが、私と戸田君の方が仲がいいと思ってしまうのは、これが原因だろう。

お昼になり、また皆で一緒に近くのうどん屋さんへうどんを仲良く食べに行って、小屋へ戻って来て食休みをしたり、皆で話をしたりして時を過ごす。

 

私「ねえ、しゅんちゃん。」

しゅんちゃん「なに?」

私「しゅんちゃんの頭には、ちっちゃいモヒカンのってるけど、そこ、金髪にする?」

しゅんちゃん「あ!Noisyみたいにしようかな?僕も。」

私「絶対、いいよー!二人で金髪コンビになろうよ!」

しゅんちゃん「いいねー!」

戸田君「しゅんちゃんのは、モヒカンっちゅうか、ちょこんとボンボンのっとるみたいじゃの~!」

私「うるさいよ!戸田君は!」

しゅんちゃん「ははは!ね、僕のは、ニワトリみたいでしょ~。ははは!!」

私「まあ、イカツイモヒカンではないよね。可愛いのがちょこっとのってるって感じだよね。でも、しゅんちゃんのイメージにはあってるよ。」

しゅんちゃん「そう?僕は、よくチャボとか言われたよ。この頭のせいで!ははは!!」

私「ははは!そうなんだ!」

 

しゅんちゃんといる時は、幼稚園の友達と遊んでいるような気分になり、戸田君と話している時は、どこかに拒絶の線を引きつつ、冗談で返し、勝さんといる時は、勘がいい勝さんと顔を見合わせたりしながら、気持ちを共有し合ったりして、時間を過ごした。

夕方に近づいて行った頃、電話が鳴ったので外へ出る。

 

私「はい。」

せっちゃん「あ、Noisy!やっと、もうちょっとで高知県へ入れそうやねん!まだやけどな。」

 

え!?

もう、高知県?

確か、高知県からは、せっちゃんが行かなくてはいけない寺数は、かなり少ないはずだ。

 

私「そうなんだ!私は、まだ高知市内でゆっくりしてるけど、明日には出発するよ。」

せっちゃん「まだ、そこにおるんや!そしたら、高知市内過ぎて、その先の何処かで追いつきそうやな!」

私「ああ、そうね・・・。」

せっちゃん「とにかく追いつくわあ。ほなな!」

 

せっちゃんは、直ぐに出発したいのか、あっという間に電話を切った。

そうか・・・。

せっちゃんが、本当に後ろに迫って来ている。

明日には、いずれにしても、皆、出発することはわかっているので、そこへの焦りはないのだが、明日から、相当に気合を入れて前へ進まなければ、あっという間にせっちゃんが追いついてきてしまう事を知った。

明日から、本当に走りまくらなくてはならない。

今日の所は、それを考えてみたところでどうなるわけでもないし、折角の楽しい時間が楽しくなくなってしまうので、このことは明日以降に考えることにして、今日は皆と楽しむことだけを思い、また遍路小屋へと入って行った。

 

 

戸田君「おい!誰と電話しよったんやあ?」

私「誰でもいいでしょ!あんたには教えない。」

戸田君「ははは!はいはい!誰も、お前の交友関係なんかどうでもええんですよ~!ははは!!」

しゅんちゃん「僕は、聞くよ。誰だったの?」

私「しゅんちゃんなら教えてあげる!せっちゃんよ!」

戸田君「おお!せっちゃんかあ!そろそろこの辺に来るんか?」

私「ちょっとー!今、しゅんちゃんに教えたのに、なんであんたが答えるの?」

勝さん「はははは!!ほんと、お前らのやり取りは、なんでこうなんだ?」

戸田君「なんか知らんけど、そこの角の生えたおばさんがぎゃあぎゃあうるさいけえですよ~!勝さ~ん!」

 

皆は笑ったけど、私の心は笑わなかった。

角の生えたおばさんって・・・。

おばさんって、誰にも言われないのに・・・。

こいつだけは・・・。

 

ただ、皆の場を崩すのも嫌だし、当然、戸田君に悪気もなくただの冗談だとはわかっているので、笑って流す。

戸田君が作り出す雰囲気も好きだし、皆への冗談もびっくりするほど面白いのだが、何故だか、私個人へ向けた冗談だけは、笑えない事が多かった。

とは言え、戸田君付きのトランプ大会は、面白すぎる。

結局、こんな調子で晩御飯を一緒に食べ、楽しいトランプ大会でこの夜はふける。

 

つづく・・・   

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