2009年3月6日(金) 中日新聞より引用・転載

認知行動療法のすすめ

不安なとき 悲しいとき 別の考え方や新しい行動を


認知行動療法が注目されている。悩みを抱えやすい人が考え方や行動を変えることでつらい症状を治していく精神療法だ。認知行動療法的な考え方は、日常生活の悩みやストレス対処に生かすヒントになる。(野村由美子)

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考え方のレパートリーを増やす一例

【状況】帰り道、友人に「バイバイ」と声を掛けたら、友人が走り出した
 ダウン
【気持ち】悲しい
 ダウン
【背景の考え】・私が声を掛けたから走ったのかな
         ・友人に嫌われたのかな
 ダウン
【別の見方】・聞こえなかっただけかもしれない
        ・次の電車の時間が迫って急いでいなのかも
        ・別の友人に呼ばれたのかもしれない
        ・昨日も今朝もメールでは普通に話したし
 ダウン
【新しい考え・行動】・今度は必ず分かるように手を振って
             あいさつしてみよう
            ・今晩メールしてみよう

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  人は何かあると、体、感情、考え方(認知)、行動の四つの側面で反応する。四つは互いに影響を受ける関係。例えば大変な状況に直面したとき、体は重くなり、感情は不安で悲しく、閉じこもって泣いて、「自分は駄目な人間だ」と考える。
  認知行動療法はこの中の考え方と行動を変えることで、個々の状況に、より上手に対応できるようにしていこうという治療。患者ごとに無理のない考え方や行動の仕方を医療者が伴走して一緒に発見していく。
  「その場その場でより無理のない、より現実的な対処法を積み重ねて、ストレスへの対処法のレパートリーを増やそうという治療」と古川壽亮(としあき)名古屋市立大大学院教授(精神・認知・行動医学)。古川教授は同大学病院精神科でパニック障害と社会不安障害の集団認知行動療法を実施している。
  個人かグループで一回一時間前後のセッションを十~二十回持ち、患者の悩ましいと思うテーマを検討する。検討で出てきた新しい考え方や行動を実生活でも「練習」して力と自信を付けていく。
  例えば「パニック発作が出たらと心配で地下鉄に乗れない」場合、「地下鉄で気分が悪くなったら発作が起きるのでは」という不安をあおってしまう考えを、「今まで地下鉄で車酔いしたことはない」「緊張して不安にはなるだろうが、パニック発作までにはならないだろう」など、少し直していく。また家から駅まで行ってみる、改札口まで行ってみるなど、少しずつ行動を増やしていく。
  短時間で効果が見えやすく、多くの精神疾患に対応できることから、日本でも1990年代以降注目されるようになった。うつ病では薬と併用で、パニック障害では薬に代わって、それぞれ再発予防も含めて有効とされる。
  ただ、現在実施しているのは一部の病院だけで、古川教授は「専門家を養成する体系、導入しやすい診療報酬制度が確立していってほしい」と話している。

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日常生活のヒントに


健康な人でも悩みが続いたり、強い不安から、柔軟な対応ができなくなることもある。認知行動療法の考えを日常に生かすヒントを紹介する。

【コップの水】
コップに水が半分。「もう半分しかない」と「まだ半分もある」。どう考えるかで気持ちは違うが、前向きがいい、ではない。両方の考え方があると思うことができればいい。

【書く】
①大変なとき、どんな状況で、どんな気持ちか、なぜそう思うかを書き出す。メモ帳などに一行だけでも構わない。状況への別の見方がもしできたら、それも書いてみる。
②問題に直面したとき、自分が取り得る対処方法を書いて、それぞれのメリット、デメリットを書き出すと解決法が見えてくる。

【友人アドバイス法】
同じ悩みを友人があなたに相談したら、なんとアドバイスするか考える。

【ちょっと何かをする】
例えば、憂うつでずるずる寝てしまう人は、起きたら冷たいジュースを一杯飲んでみる。出張続きで疲れた人は、帰りの新幹線で、マンガを買って読んでみる。旅行までは負担でも会社帰りに旅行のパンフレットを持って帰ってみる。

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  悲しみや苦しみそのものを取り除くことができなくても、いや、取り除くことができないからこそ、人間が生きる知恵として知っていたほうがよいことがたくさんあります。
  その知恵は、あるときは宗教の教えとして、あるときは学問の学説として、あるときは映画の一シーンとして、私たちの前に提供されます。
  もしあなたが、日常生活に疲れ果て、無限に続く日常に嫌気がさしているのなら、一服の清涼剤を心に与えてみてはどうですか?
じっくりと読書をしてみては?素敵な映画を観てみませんか?素敵なお芝居を観てみませんか?素敵な音楽を聴いてみませんか?躍動感あふれ、心弾むスポーツをしてみませんか?

  あともう少し、踏ん張ってみようと思えるかもしれません。
  あともう少し、生きてみようと思えるかもしれません。

そして、あなたの話をじっくりと聞いてくれる友や家族がいるとしたならば、それだけで十分な救いになると私は思います。

あなたは決してひとりではない。
あなたは決してひとりではない。

大丈夫、なんとかなる。

今を見つめることから、冷静に見つめることから始めてみましょう。



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家族のための パニック障害 サポートブック①/④気づく

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