今日の愛ルケ(#297) | にっけいしんぶん新聞

今日の愛ルケ(#297)

この記事は渡辺淳一先生の連載小説「愛の流刑地」を記者が個人的な視点で読み解く記事で、性的な描写かなり出てまいります。そのような記述を好まない方、ネタバレを嫌う方、並びに15歳未満の方はご遠慮ください。
なお、記者がまとめたあらすじ中の灰色文字部分は、作品のテイストをできるだけ伝えるために原文をそのまま引用した部分です。


<あらすじ>花火をともに見た一夜、作家の菊治(55)と人妻の冬香(37)は、互いの鬱屈した事情を振り払うように、激しく求め合う。だがその絶頂の際、求められるままに、菊治は冬香の首をいつもより強く絞めすぎて死なせてしまう。突然の死にとまどう菊治。このまま遺体を運び去られるより、一緒に死のうと一度は考えるが・・・。(日経新聞掲載分そのまま)


#とうとう「村尾」「入江」って苗字もなくなっちゃいましたね。

ところで、話題になったので最近「愛ルケ」を読み始めたという方。
互いの鬱屈した事情というと何か不条理なことがあったかのように誤解されるかもしれませんが、簡単に説明しておきます。

菊治の事情=時代錯誤なへっぽこ小説を書いて出版社に持ち込んだら断られた。
冬香の事情=不倫にかまけて夫と子供をほったらかしてたら出て行けといわれた。

それで冬香がセックス中に「死にたい」「殺して」と訴えて、喉を絞められて「げおっ」となって「ごわっ」となってジ・エンドです。
まあ、ざくっとそんな感じだということでご理解ください。

さあ、そんな事情はさておき、気になるのが最後の一文です。

一緒に死のうと一度は考えるが・・・。


やっぱ死なねえのかよ!!


まったく、本文読む前から分かっちまったじゃねえかよ・・・。



風死す 六

これを胸に突き刺せば死ねるのか、と手にしたナイフを左胸に当ててみる。ひと思いにさせばと自分にいいきかすが、正確に刺せるかどうかなどと迷ううち、「ためらい傷」という言葉がよぎる。急所を外して致命傷に至らず、ぶざまに生き残る
自分も刺す勇気がない。ならば飛び降りるか紐をぶらさげてそれで首を絞めるかとも思うが、怖くてできそうもない
どうすればいいか迷ううちに冬香に逢いたくなって寝室へ戻ると、冬香は浴衣につつまれたまま寸分たがわず横たわり、「ふゆか」と呼んでも答えない。
やはり冬香は死んでいるが、だが話したい。ベッドに両手をついてきいてみる。
「ごめん、一緒に死にたいけど、死ねないんだ」
「・・・」
「俺だけ生きていていいの?お前を殺して、俺だけ勝手に生き残って…」
「でも、誰よりも冬香が好きで、お前があんまり快くて、死にたいといったから殺した。それだけはわかってくれるだろう」

冬香の口元が軽く開き、うなずいているようだ。
「俺、本当に殺す気なんかなかった」
菊治は冬香の胸にすがりついて、訴える。



#うーん、本日のキモはやはり<あらすじ>だったでしょうか。
記者、「怖くて死ねずに冬香の死体にすがりつく菊治」、たったこれだけの話をいじるのは非常に困難です。

一人殺っちゃったくせにためらい傷すらつける根性はなく、そのくせリスカやってる方々を罵倒して、でも飛び降りもできない、紐で首を絞めるのも怖い、みごとなヘタレっぷりを発揮してめめしく冬香にすがりついて・・・

あ、でも死体に話しかけるってのは菊治らしいですね。


「ごめん、一緒に死にたいけど、死ねないんだ」


いきなり冬香を裏切るような語りかけ、冬香の答えはどうでしょうか?


「・・・」


絶句してます・・・。

それでも菊治は語りかけ続けます。


「お前があんまり快くて、死にたいといったから殺した」


かなり言ってる意味がわかりませんが・・・。
あ、ちなみに「愛ルケ」を最近読み始めた方、渡辺ワールドでは「快い」は「よい」と読んで、「性的に気持ちよい」の意味ですので、よろしくお願いします。
どっちにしてもよく分かりませんが。


「わかってくれるだろう」


だからわかんねえよ、ふつう。


菊治がきくと、冬香の口元が軽く開いて、うなずいているようである。(原文)


わかるんかい!?


え、そうじゃないだろ?
冬香の口元が開いてうなずいて見えるのは菊治の妄想だろって?

それがそうとはいいきれないのですよ。
なんてったて菊治、口に出さなくても肌と肌が触れ合っていれば冬香の言いたいことは分かってしまう、ボディランゲージの達人なんですよ。(参考:#141)

もっとも今回のボディランゲージ、冬香は違った意味のBODY(死 体)になっちゃってますけどね・・・。


こうしてボディランゲージを展開する菊治、うなずく冬香に訴えかけるのですが・・・


「俺、本当に殺す気なんかなかった」


どっちやねん!?

お前、たった今「死にたいといったから殺した」っていったばっかりやんけ。

・・・まあ正直どっちでもいいのですが、こういいながら浴衣をかぶった冬香の胸にすがりついて訴える菊治のほうは、コメント欄でみなさんおっしゃるとおり、


あいかわらずフ○チン


です・・・。



※なお、<あらすじ>はNIKKEI NETでも見られますが、「今日の愛ルケ」の過去ログをご覧になりたい方は、のっきーさんのブログで順にまとめていただいております。よろしければご利用くださいませ。