「狂人アレクセイ」
夜の窓の外は黒煙、僅かに灯る暖色は、
季節を違えた宙をたゆたう羽虫の鱗粉、
階層下に伸びる十字路、使い古しの家具と鉄、
再び刻む時計は夜を、軋んで告げる鐘は沈痛、
毛羽立つ紙のテーブルクロス、焦げちまって気分が悪い、
印刷された一語一句はどこかの古い神の方便、
眠る前を彩った、
アルファベットをaから象るグラスは19、
床の板を転がってたり、逆さに埃をかぶっていたり、
そいつを使った記憶ごと、
ひとつひとつ床に投げつけ、
散らばる様はやり切れなくも、なぜか背筋にひりつく快楽、
本能には抗えない、
最期の地点に及んでさえも、
攻撃、破壊を誘う衝動、
aから始まる出来事すべてを瞼に描く、
19で足りるわけもなく、それでもしないよりはいい、
記憶は抹殺できずに残光、
余熱と響く破壊音、
跳ねる破片が頬を裂く、
カーペットには赤が数滴、
移り住んだ土地の地図に滲んで見えた、
彼にはもう遺したいものもない、
窓に映るその顔は、子供のころに恐れた狂人、
消せずに居座るその者にしか、
狂人にしか映らなかった、
アレクセイは最期になって、夜に恐れた悪魔となった、
━━━━━━━━━━━━━━━
LINKS
【PR】
流星ツアー/田中 ビリー
¥1,365
Amazon.co.jp
あの人への想いに綴るうた/渡邉 裕美
¥1,470
Amazon.co.jp
Copyright (C) 2013 copyrights.billy tanaka All Rights Reserved.