走り続けた移動者は、地平の果てにて旗を持つ、
静止した時間のなかで、景色は止まってさえいるよう、
微かに動くのは風で、流れるそれを横目に追う、
空の青みも見慣れてしまった、沈みかけたか昇るのか、
燃えずに浮遊する太陽、
鳥は縛りつけられて、呼吸さえもしていない、
岬に打つ水飛沫、弾けて砕けたその波が、
泡のままでかたまっていた、時の止まった景色では、
音のひとつも鳴らないらしい、砂時計は傾いたまま、
薄い月が見張るように弧を描く、
走りぬけた先に手繰り寄せた最期の世界、
枯れた花と萎れた緑、それでも倒れることはない、
到達した証に彼は、その地に旗を突き立てようと、
いまだ先を見据えてやめる、遠くには銃声が、
そしてまた悲鳴さえ、どこかに聞こえる、
そんな気がした、
使者を名乗る者たちが、この地を穢しにくることを、
微かに流る風が伝える、再び戦地に還るよう、
最前線に流れる血、それを見届けゆくように、
<click!!>
⇒来ないバスとガールフレンド
⇒赤眼のマルコ
⇒“morphine”