【Pool 小西 利行氏インタビュー②:自由自在に動けるという身軽さ】
CAネットトレンド研究室の独自インタビュー第2弾。
今回は日産自動車 セレナ「モノより思い出」キャンペーン、プレイステーション
「暮らし、イキ!イキ!」キャンペーン、サントリー「伊右衛門」などを手がけられた
コピーライター/クリエイティブディレクター、小西利行氏をインタビューさせていただきました。
Q 「なんとなくモヤモヤした悩み」に対する回答としては、MBAホルダーがたくさんいる、コンサルティング会社がやるような、ばーっと数字出してきて、現在の売上がこうで、市場規模的にいくとこうなので、御社のココとココが課題ですという、アプローチもありますよね?
もちろん、そういうやり方もあると思います。
ただ、その世界でトップに立っている経営陣クラスの人たちは、すごく頭が良くて、情報もたくさん持っています。だから、そういう人達に「市場規模がこうで、売上構成がこうで」っていう外部からの提案とは違ったものを求めるケースもあるわけです。
僕らがやっているのは、数字的ではないかもしれません。
もっとざっくりしているというか。
「あなたの会社はこういう色ですよね。ちなみに、世の中こんな感じです。だからこうするのが、いいんじゃないですか?」という提案をして「そうそう、まさに!それなんです!」ってなるような。数字というより、その経営者の実感を言い当てるっていう感じですかね。
Q 「何かわが社の悩みに対する良い処方はないですかね?」と相談されたときに、広告会社で培ったスキルが役にたっているわけだけど、広告会社にいるときよりも自由にそのスキルを発揮できるようになった?
実は、昔から世の中のいわゆる「広告」の概念がすごく狭いなと思っていて。
媒体と紐づいているのが基本になっているんですよね。
「この企業の悩みには、テレビはこの企画で、新聞はこういう原稿で、」と返さないといけない。
でも媒体と紐づけずに自由に考えると、「じゃぁ、今回は御社の工場のみなさんの制服を新しいデザインにするだけで、別に媒体を買っての広告はしないで良いじゃないですか」とかいう発想があってもいいですよね。
それも「広告」と考えると、広告の概念が広がるじゃないですか。
必ずしも媒体を購入した上での「広告」である必要はないなと。
それでも十分コミュニケーションできる、むしろ、媒体を使わないほうがいいケースだってありますよね。
もちろん、媒体を使ったほうが効率的な場合もありますから、そのときはそういう提案をすればいいわけですし。
課題に対する解決策を選定するときに、もっと自由に考えられるようになりました。
Q 逆に今でもドーンとテレビCMを大量に流すのが一番いいケースもありますしね。
そうですね。やっぱり、二極化するんですかね? タレントをズラーと並べて、テレビCMバーン!みたいな、豪華絢爛なことをやるか、地道に少しずつ効果のある手法をとるか。
でも、意外にピンポイントで小さく突いたところから、カタカタカタってドミノみたいに世の中が変わるやり方もありだよな、と感じています。そういう小さな方法で大きく世の中を動かすっていうダイナミズムもあるし、それも気持ちいいなあと思いますね。
Q 例えば可士和さんが、明治学院大学のブランドを変えたのって、ビールのCM大量オンエアみたいに「今日の話題」「今日の売上」には直結しないかもしれないけど、そこで学んで4年間の大学生活を経た若者が、世の中に出て行っていくことがもたらす変化と、どっちが大きいか、って単純に比較できる話じゃないですよね。
そうですね。3ヶ月の集中投下キャンペーンで、世の中が、ガーっと変わるのと、大学のロゴやら制服やらが変わってロングスパンでずーっと変わるのと。比較できる話じゃないですからね。
これまでの広告は、どうしてもキャンペーン志向なんでしょうね。
もちろんキャンペーン型のアプローチも広告の重要な役割ではありますけども。
何かを、小さくてもいいから変えることで、時間はかかるけどジワジワと将来的には大きく変わるというのをやりたいクリエイターたちもいるし。そういうのを望むクライアントさんもあるし。
凄いお金をかけて豪華にやっても、「世の中を騒がしたのも3ヶ月だけだよね」とか「この後どこまで続くかな?がんばっても1年だよね」とか言われちゃう。そういう一過性の話題作りで終わるのは、僕には違和感があります。
それって、「みんな、こういうことやろうぜー」ってCMであおって、みんなが「おー!いいね!」って反応が返ってきた頃に、言い出した本人が「じゃあ俺は次があるんで。興味が無くなりましたっ」って去っていくような(笑)。
そういう話題作りは、商品やサービスによっては、大切な手法ではあるんですけどね。でも、一過性なのはやっぱり苦手かも。話題がつくれて、しかも一過性じゃなく、その企業のブランドを上げるのに貢献するのが一番かもしれません。
だからもちろん僕も、必要があればそういう話題作りもしますけど。
Q 小西さんはどちらの相談にも今はのれるということですね。
メーカーさんとかと話していると意外によく聞くんですけど、世の中の流れを見て、どんどんそれに合った商品開発を続けているんだけど、ある時「はて?うちの会社はそもそもそういう商品を生む企業だったっけ?」「うちの企業は、何をする企業だったっけ?」という疑問にかられる。
世の中を見すぎて「結局、私達は何?」っていうのが自分たちでわからなくなるケースがあるわけです。
そこで、僕なんかが、くわしく話を聞いて、整理して「御社のいちばんの中心点ってこれですよね」と提示してあげる。
それをベースに商品を眺めてみたら、「これとこれは良いけど、これはダメだね」って会社の経営における判断基準にもなりますしね。
外の人間で、初対面だと、当然、最初はすごく警戒されるんですけども、ちょっとした悩みとかを聞いて、感じたままを本音で返すと「あー、なるほど、たしかにそうだ」って言ってもらえて。その瞬間心が開けたり、信頼されたり、ということはあります。
でも広告会社の人間として対峙してた時は、メディアがひもづいているのでは?って思われて、相手の警戒が大きくなってたかもしれません。「結局、メディア費が目的なのでは?」って相手が思ってしまうのを感じたこともありました。
凄く残念でしたね。ほんとは違うのにって思ってた。ただ、今の僕のような立場だと、「あんたは別にメディアを売ろうとしてないよね? だったら言うんだけど、こういう悩みがあって」っていう風に、ストレートに話ができる。そういうのが結構ありますね。
世の中を「うおー!」と盛り上げる大広告キャンペーンと、企業内のモヤモヤを整理して自浄作用をうまく促すような施策は全く別軸ですよね。
どちらに対しても、フラットな立場で考えられるクリエイターが、時代にマッチしてきたのかもなぁ、と思ったりします。
(了)
【関連】
【Pool 小西 利行氏インタビュー①:先端クリエイターの最近の仕事】
【Pool 小西 利行氏インタビュー③:広告の概念が変わってきた】|CAネットトレンド研究室ブログ
今回は日産自動車 セレナ「モノより思い出」キャンペーン、プレイステーション
「暮らし、イキ!イキ!」キャンペーン、サントリー「伊右衛門」などを手がけられた
コピーライター/クリエイティブディレクター、小西利行氏をインタビューさせていただきました。
Q 「なんとなくモヤモヤした悩み」に対する回答としては、MBAホルダーがたくさんいる、コンサルティング会社がやるような、ばーっと数字出してきて、現在の売上がこうで、市場規模的にいくとこうなので、御社のココとココが課題ですという、アプローチもありますよね?
もちろん、そういうやり方もあると思います。
ただ、その世界でトップに立っている経営陣クラスの人たちは、すごく頭が良くて、情報もたくさん持っています。だから、そういう人達に「市場規模がこうで、売上構成がこうで」っていう外部からの提案とは違ったものを求めるケースもあるわけです。
僕らがやっているのは、数字的ではないかもしれません。
もっとざっくりしているというか。
「あなたの会社はこういう色ですよね。ちなみに、世の中こんな感じです。だからこうするのが、いいんじゃないですか?」という提案をして「そうそう、まさに!それなんです!」ってなるような。数字というより、その経営者の実感を言い当てるっていう感じですかね。
Q 「何かわが社の悩みに対する良い処方はないですかね?」と相談されたときに、広告会社で培ったスキルが役にたっているわけだけど、広告会社にいるときよりも自由にそのスキルを発揮できるようになった?
実は、昔から世の中のいわゆる「広告」の概念がすごく狭いなと思っていて。
媒体と紐づいているのが基本になっているんですよね。
「この企業の悩みには、テレビはこの企画で、新聞はこういう原稿で、」と返さないといけない。
でも媒体と紐づけずに自由に考えると、「じゃぁ、今回は御社の工場のみなさんの制服を新しいデザインにするだけで、別に媒体を買っての広告はしないで良いじゃないですか」とかいう発想があってもいいですよね。
それも「広告」と考えると、広告の概念が広がるじゃないですか。
必ずしも媒体を購入した上での「広告」である必要はないなと。
それでも十分コミュニケーションできる、むしろ、媒体を使わないほうがいいケースだってありますよね。
もちろん、媒体を使ったほうが効率的な場合もありますから、そのときはそういう提案をすればいいわけですし。
課題に対する解決策を選定するときに、もっと自由に考えられるようになりました。
Q 逆に今でもドーンとテレビCMを大量に流すのが一番いいケースもありますしね。
そうですね。やっぱり、二極化するんですかね? タレントをズラーと並べて、テレビCMバーン!みたいな、豪華絢爛なことをやるか、地道に少しずつ効果のある手法をとるか。
でも、意外にピンポイントで小さく突いたところから、カタカタカタってドミノみたいに世の中が変わるやり方もありだよな、と感じています。そういう小さな方法で大きく世の中を動かすっていうダイナミズムもあるし、それも気持ちいいなあと思いますね。
Q 例えば可士和さんが、明治学院大学のブランドを変えたのって、ビールのCM大量オンエアみたいに「今日の話題」「今日の売上」には直結しないかもしれないけど、そこで学んで4年間の大学生活を経た若者が、世の中に出て行っていくことがもたらす変化と、どっちが大きいか、って単純に比較できる話じゃないですよね。
そうですね。3ヶ月の集中投下キャンペーンで、世の中が、ガーっと変わるのと、大学のロゴやら制服やらが変わってロングスパンでずーっと変わるのと。比較できる話じゃないですからね。
これまでの広告は、どうしてもキャンペーン志向なんでしょうね。
もちろんキャンペーン型のアプローチも広告の重要な役割ではありますけども。
何かを、小さくてもいいから変えることで、時間はかかるけどジワジワと将来的には大きく変わるというのをやりたいクリエイターたちもいるし。そういうのを望むクライアントさんもあるし。
凄いお金をかけて豪華にやっても、「世の中を騒がしたのも3ヶ月だけだよね」とか「この後どこまで続くかな?がんばっても1年だよね」とか言われちゃう。そういう一過性の話題作りで終わるのは、僕には違和感があります。
それって、「みんな、こういうことやろうぜー」ってCMであおって、みんなが「おー!いいね!」って反応が返ってきた頃に、言い出した本人が「じゃあ俺は次があるんで。興味が無くなりましたっ」って去っていくような(笑)。
そういう話題作りは、商品やサービスによっては、大切な手法ではあるんですけどね。でも、一過性なのはやっぱり苦手かも。話題がつくれて、しかも一過性じゃなく、その企業のブランドを上げるのに貢献するのが一番かもしれません。
だからもちろん僕も、必要があればそういう話題作りもしますけど。
Q 小西さんはどちらの相談にも今はのれるということですね。
メーカーさんとかと話していると意外によく聞くんですけど、世の中の流れを見て、どんどんそれに合った商品開発を続けているんだけど、ある時「はて?うちの会社はそもそもそういう商品を生む企業だったっけ?」「うちの企業は、何をする企業だったっけ?」という疑問にかられる。
世の中を見すぎて「結局、私達は何?」っていうのが自分たちでわからなくなるケースがあるわけです。
そこで、僕なんかが、くわしく話を聞いて、整理して「御社のいちばんの中心点ってこれですよね」と提示してあげる。
それをベースに商品を眺めてみたら、「これとこれは良いけど、これはダメだね」って会社の経営における判断基準にもなりますしね。
外の人間で、初対面だと、当然、最初はすごく警戒されるんですけども、ちょっとした悩みとかを聞いて、感じたままを本音で返すと「あー、なるほど、たしかにそうだ」って言ってもらえて。その瞬間心が開けたり、信頼されたり、ということはあります。
でも広告会社の人間として対峙してた時は、メディアがひもづいているのでは?って思われて、相手の警戒が大きくなってたかもしれません。「結局、メディア費が目的なのでは?」って相手が思ってしまうのを感じたこともありました。
凄く残念でしたね。ほんとは違うのにって思ってた。ただ、今の僕のような立場だと、「あんたは別にメディアを売ろうとしてないよね? だったら言うんだけど、こういう悩みがあって」っていう風に、ストレートに話ができる。そういうのが結構ありますね。
世の中を「うおー!」と盛り上げる大広告キャンペーンと、企業内のモヤモヤを整理して自浄作用をうまく促すような施策は全く別軸ですよね。
どちらに対しても、フラットな立場で考えられるクリエイターが、時代にマッチしてきたのかもなぁ、と思ったりします。
(了)
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