娘が居なくなってから、少し娘との思い出を
思い出したりなんか するようになった。
娘が高校二年生の時に 家に連れて来た彼氏は、赤いサニトラに乗っていた。
初めてサニトラを見た時の感想は、
「うわあ~可愛い荷台に白いヤギでも乗ってたら もっと可愛いのに」
って感じ・・・。
中から降りて来た 男の子は、すごく礼儀正しくおじぎをした
大学生で 爽やかな優しい感じの男の子だった。
娘は その頃、工業高校へ通っていたが、学校が終わると 彼の大学まで行っていた。彼は、大学の自動車部で レストアやらカスタムやらを ワイワイやっていたのだ。娘は、車の整備士を目指していたから、ジャージを着て 一緒になってオイルまみれになっていた。
私は、よく、その大学まで単車で娘を迎えに行っていた。
一年ほど付き合った頃だったろうか、
その日も 環2を使って大学へ単車を走らせた。
前日にチェーンとスプロケを交換したばかりで、少しだけ違和感があった。
大学に着くと、自動車部のガレージの前に、大ちゃんが立っていた。
彼は大ちゃんなのに、私や娘より 身長が低かった。
娘が出て来て、
「もうすぐ終わるから待ってて!でね、なんかコイツがおかんに話しがあるんだって!」
私はチェーンの張りが気になる。
どうせ待たされるなら、少し ひとっ走りして来たかったので、
「大ちゃん、チョッと私走ってくるけど何?」
「えーーこんなとこじゃ話せないです」
「じゃあ話せるとこに連れてってやるから ケツに乗りな」
「はい」
娘のメットを被り、素直にピョコンと大ちゃんは乗った。
小さいので軽かった
が・・・・、
走り出したのに なーんにも言って来ない。
とうとう私が、
「で、話しって何?」
と 切り出した。
「あのですねあのですね」
「娘さんと、結婚前提に付き合わせてくださ~い」
少しビックリした
だけど、嬉しくもあった。親の直感で、この子なら・・・って思ったのだ。
「いーよー」
私もフルフェイスの中から声をはりあげた。
大学に着くと、娘と、大ちゃんの仲間がニヤニヤして待っていた。
「どうだった?言えた?」
娘が言うと、大ちゃんは照れながら笑っていた。
「でもさー、交際申し込むのに、そのお母さんの単車のケツに乗って、笑えるよなあ~」
みんなで笑った
娘は良い男友達に恵まれていると思った
大ちゃんは、その後、男友達のままで終わった。
チェーンは、少し弛すぎただけだった。
ごめん、大ちゃん、大ちゃんより単車のチェーンのが本当は気になったてたの・・・・