左:西井 右:竹下
高田:仲の良い芸人さんを教えていただけますか?
西井:『キタイ花ん』に出演されている芸人さんで言うと、『マドンナさん』
『さるつかいさん』
『にわとりヘッドさん』
『メガネメガネさん』
といった先輩方には、僕ら二人ともよくしていただいてますね。
高田:西井さんは関西のご出身ではないですよね?
西井:出身は岡山です。18歳の頃に大阪へ出て来ました。
高田:それはお笑いをやられるためにですか?
西井:親に大阪へ出てNSCへ通いたいと言ったら大反対されまして、それなら大阪の大学に行きながらNSC通ったらと言われたんです。とりあえず、大阪の大学に通うことになったんですが、なんせ岡山の田舎者ですから、都会に出て来てテンションが上がりすぎて遊び呆けてしまったんですよ。
竹下:その時、一年で取った単位なんぼやったっけ?
西井:4単位(笑)
竹下:親が泣いとるぞ。
西井:そんな調子ですから進級できるはずもなく、ダブったりしまして、結局NSCに入れたのは24歳くらいの時でした。今から思うと入学するまでに結構かかりましたね。
高田:大阪に出てきて息子さんが堕落してしまったことに対して、ご両親は怒らなかったのでしょうか?
西井:めちゃくちゃ怒られましたね。母親からは「お金出してるのに何遊んでんの!」って怒鳴るくらいの勢いで言われたんです。でも大学三年の時に分かったんですけど、学費は全部、奨学金だったんですよ(笑)
竹下:その借金なんぼあるんやったっけ?
西井:400万です(笑)
竹下:笑うしかないわな。
高田:西井さんはまだ少しなまりがあると思うんですが、その辺りが漫才をやる上でネックになることはないですか?
西井:僕なまってます?
竹下:なまってるやん。
西井:おかしいなあ。
高田:解せない顔をされていますね。
西井:もう大阪に住み始めて10年ほど経つんですけど、僕の感覚ではかなりネイティブな関西弁を喋ってるんですよ。コテコテの大阪人が喋るような関西弁を使っている感じなんですけどね。
竹下:僕は生まれも育ちも大阪なんですけど、ネタ合わせ中に話のつなぎ言葉で『ほんで』とか入れると、すぐ注意されますね。
西井:お前はすぐイキって汚い言葉を使いたがる節があるからな。
竹下:そんなことないよ! 関西弁て元々こんなんやからな。
西井:「じゃかましいわ。コラッ!」とかって、すぐにお前は言いたがるけど、翻って考えてごらん? もしお前がそのフレーズを舞台で口にしたとして、それを見ていたお客さんの頭の中には『世界平和』の4文字を頭に思い浮かべることはできるのかってことですよ。
高田:やはり『世界平和』が基準として存在すると?
西井:そうですね。一度、相方が平場で「死ねっ!」っていうフレーズを使ったことがあったんですけど、すぐにその時も注意しました。
竹下:でも、この前やったネタの中でお前、普通に「死ね」って言うてたやん。
西井:あれは違うんですよ。
竹下:何が違うねん。
西井:あれは、やむをえずなんで。
竹下:『世界平和』とか掲げるんやったら、そんな緩い感じやったらあかんやん! もっとその辺、厳しくせなあかんのとちゃうの?
西井:君は何もわかってないですね。竹下君。
竹下:何がやねん。
西井:僕はあの後、家に帰ってから、ちゃんと反省しましたから。
竹下:ほんまか? 昨日もネタ合わせしている時、言いそうなって咄嗟に飲み込んでたやん。
西井:そんなことないです。同じミスは繰り返さないので。
高田:舞台上ではそんなフレーズを使ってしまうことが稀にあっても、日常では使われないですか?
西井:それはないですね。
竹下:僕もそこまでは思わないですけど、ニュースとか見てて、やり切れない事件とかを見ると憤ることはよくあります。僕は映画とか見ててもすぐに入り込む方なんですよ。感情移入しやすいんでしょうね。
高田:それは日常生活とかでもそうですか?
竹下:はい。例えばホームレスの人とか見ていても、物凄い考えてしまう時があるんです。「この人らって何で今こういう生活をしてはるんやろ? 最初は普通の暮らしがあったはずで」とか色々考えてたら、ボロボロ泣けてきたこともあります。
西井:それはあなたの妄想ですよ。
竹下:いや、そうかもしれんけど、えらいサラッと言うたな。
高田:今、これがしんどいとか、苦痛だなということを教えてください。
西井:お金ですね。さっき言った奨学金の返還もありますし、それに23歳くらいの時、遊び呆けて作った借金もありますし……。
竹下:それはお前が悪いねんけどな。
西井:まあ、そこは弁解できひんな。
高田:竹下さんの苦痛なことは?
竹下:やっぱり結果がなかなか出ないということですね。ネタ合わせしている際は、相方のボケに僕が腹抱えて笑うことは、しょっちゅうなんですよ。だけどこれを今ひとつお客さんに共感してもらえないというもどかしさはあります。
高田:逆にこれが楽しいということを教えてください。
竹下:ハイジとしてやれていることが楽しいですね。
西井:恥ずかしいこと言うなあ。
竹下:僕は元々、前のコンビの時とかはボケをやっていたんですけど、『ハイジ』を組んでからツッコミに転向したんです。それで色々、一からまた勉強し始めたんですけど、最近になって先輩方からたまに褒めていただくことがあるんです。そういう際は「あっ、ちょっと成長できたんかな」って嬉しくなりますね。僕、長々と真面目に語りすぎですね(笑)
西井:僕も同じでやっぱり舞台ですね。舞台の上でネタをやったりしている時が楽しいです。
竹下:こんなん言うてますけど、相方は結構、舞台で手を抜くんですよ。
西井:いえ、抜かないです。
竹下:ちょっとスベった瞬間、明らかに手を抜きよるんです。つかみでスベッて、次のボケでもスベったら明らかに手を抜きよるんです!
西井:僕はそんな生き方した覚えがないですよ。常に100%全力投球でやっていますからね。その結果ついたあだ名は『100%人間』ですから。
竹下:そんなん聞いたことないわ。
西井:ちょっと苦しいんで、早めに話題変えてもらっていいですか(笑)
高田:わかりました(笑) では最後に今後の目標をお願いします。
竹下:身近なところで言うとサードメンバーになりたいですね。まずはそこからのような気はします。あとは売れて早く借金を返したいんです(笑)
竹下:最後だけお前の個人的な目標になっとるがな。
西井:じゃあ、最後に締めをお願いします。
竹下:いきなり丸投げやな(笑) そうですね。僕らのネタってベタな感じなんですが、それでも演者や作家さん、それにお客さんから「こんなベタやっているのに面白い!」って言われるくらいの漫才ができるようになりたいです。
インタビュー・文 高田豪