インタビューwithキタイ花ん

高田:芝山さんと宮本さんは、笑いの感性でいうと、似ている部分が多いんでしょうか?


芝山:本質的には違いますね。AタイプとAタイプのコンビならお互いに似通った共有する笑いになるんでしょうけど、僕らはAタイプとBタイプといった本質の違う者同士のコンビなんです。だから、自分にはないけど理解できる笑いというんでしょうか? そんな感じです。いろんなパターンができるんで、そっちの方がいいと思いますけどね。


高田:お話を伺っていると、芝山さんてすごく論理的な話し方をされますよね。


芝山:よく言われます。ただ論理的になりすぎると、今度はぶっ飛んだネタが考えられなくなったりしますので、全てを論理に委ねるというのも違うのかなと思います。


高田:影響を受けたお笑い芸人さんを教えて下さい。


芝山:野生爆弾さんとモストデンジャラスコンビさんですね。


高田:お好きな傾向が如実に出ていますよね。どういったところに惹かれましたか?


芝山:こんな頭のおかしいことをやって、笑いを取ってお金をもらえるんや、という驚きがありました。もちろんダウンタウンさんも大好きで見ていたんですけど、自分がやると考えた場合に、あそこまで綺麗にはできひんやろなと。だから野爆さんとかモストデンジャラスコンビを見た時に、こういうのをやっていいんだという発見がありましたね。


高田:お二人は漫画が大好きだそうですね。この漫画家さんが大好きというのは、ありますか?


宮本:『とっても!ラッキーマン』のガモウひろしさんですね。この人ね。絶対に性格が歪んでいると思うんです。


高田:根拠をお聞きしてもよろしいですか?


宮本:まず誰が見ても絵が上手ではないですよね。だから「この絵は無理!」と拒絶されたことが、幾度もあるはずなんです。それでも漫画家になってやるぞという怨念めいたものがある気がしてならないんです。


高田:ガモウひろしさんといえば、実は『DEATH NOTE』や『バクマン。』の原作者である大場つぐみさんではないか? と言われていますよね。


宮本:『バクマン。』の1巻で“漫画ができるまで”というページがあって、そこに大場つぐみさんのネームが載っているんですけど、絵がもろにガモウひろしなんです。こういうのを見ても、実は自分がガモウひろしであることを知らせたいという、欲が出始めているんじゃないかという気がします。


高田:凄い深い部分を裏読みして、楽しんでらっしゃるんですね。


宮本:はい。僕は恐らく『ちょっとかわいそうな凄い人』が好きなんでしょうね。


高田:例えばそれは漫画のキャラクターで言うと?


宮本:ピッコロ大魔王です。


高田:芝山さんは?


芝山:僕は藤子不二雄さんが大好きですね。


高田:それはFさんですか、それともAさん?


芝山:もちろんお二人の作品は両方好きなんですけど、AさんとFさんを比較した場合、Fさんの方がよりいろんなことが出来る方なんじゃないかと思います。ひとりの漫画家がこれだけ面白いものをたくさん持ってはるというのが驚きですね。それを踏まえた上でドラえもんを読み返してみると、完璧だと言わざるを得ないですね。


高田:完璧というのは?


芝山:あらゆる意味で完璧なんです。ドラえもんというのは、ひとつの道具を出してそれで出来る良いことと、反対に悪いことを両方やるんですけど、それでできる遊びはほとんどやってしまっている。


高田:熱いですね。


芝山:やっぱり好きなことについては語りたいですからね。もっと言うと、ひとつの道具だけで一本の漫画ができあがったりするのに、一話でひとつの道具しか使わないんです。ひみつのアッコちゃんなんか、魔法のコンパクトで変身するんですけど、それ以外の道具は使わないですからね。それを考えるとドラえもんがいかに贅沢な使い方をしているのかわかりますし、藤子F不二雄さんの天才性も理解できると思うんです。


高田:藤子F不二雄先生の作品の中で、何かひとつ挙げてくださいと言われれば?


芝山:異色短編集ですね。さっき話題になったぞっとするような話がたくさん収められています。これを読むことで、ドラえもんがいかにすごいことをやっているのかが、改めてわかるようになりました。異色短編集の中に『箱舟はいっぱい』とうタイトルがあるんですけど、その作品が好きすぎて、インディーズライブをやった時に、そのタイトルをそのまま使わせてもらったぐらいです。


高田:例えばネタ作りに関することで、藤子F不二雄さんから影響を受けたという部分はありますか?


芝山:それはありますね。ある設定を考えたとして、その設定でできるボケは全て入れるという考え方なんかは、完全にドラえもんなどを読んで学んだことですから。


高田:お笑いの方向性についてお聞きしたいんですけど、わかりやすい笑いなのか、それともマニアックな笑いなのかと聞かれれば、どう答えられますか?


芝山:ケースバイケースですね。ネタが思い浮かんだ時点で、これはお客さんに合わせた方がいいのか、それとも芸人側に受けるものなのか、を考えるんです。どちら向けのネタなのかを吟味した上でネタ作りをしますから、どちらかに偏るというのはないと思います。


高田:芸人さん側に受けるネタならば、どういう作り方をされるんですか?


芝山:やっぱり自分たちが笑うようなものですね。芸人側に受けそうなネタを無理やり、お客さん側に合わせようとしても、それは結果的にそのネタを潰してしまうことになるので、そういうことはしないように心がけています。


高田:女性客を意識したりされますか?


芝山:していますね。ただ女性でも土地によって、求める笑いが変わってくると思うんです。例えば東京の女性と大阪の女性では、また好みも変わってくるでしょうから。


高田:論理的かつ分析的ですね。答えにくい質問かもしれませんが、たくさんの人に受ける笑いと、レベルの高い笑いというのは同じだと思いますか?


芝山:質問の答えになっているかは、わかりませんけど、ダウンタウンの松本人志さんがかつてbase吉本で芸人投票というのをやられたんです。


高田:それは芸人さんが芸人さんを審査するということなんですか?


芝山:そうですね。でもそれは一次審査が芸人投票、二次審査がお客さんというシステムになっていたんです。あくまで僕なりの解釈ですけど、恐らく芸人にわかる笑いを作れて、なおかつお客さんにも受けることができる。その両方ができて初めてプロのお笑い芸人じゃないのか、ということなんじゃないのかと思うんです。だから女性のお客さんに向けたネタもきちんと作れないとダメだと思います。


宮本:でも、女の人とわかりあえることって、ないんだろうなって思ってますけどね。


高田:それはネタに関してということですか? それともお笑いと関係ない部分でおっしゃってるんですか?


宮本:ネタ以外の部分でということです。


高田:何か個人的に辛い経験でもされたんですか?


宮本:別にそういう訳ではないですけど。


芝山:いや、確実に何かあったやろ(笑)。


高田:仲良くされている芸人さんを教えてください。


宮本:ボンボンヤサゴナボン の金光です。


芝山:僕はセキハンチャーハンです。


高田:今、何をされている時が一番楽しいですか?


芝山:遊戯王カードで遊んでいる時です。


高田:それは誰かと?


芝山:いえ、ひとりでやっています。相手がいるのを想像して、どんなカードを出してくるのか考えながら、ひとりで遊んでいます。


宮本:僕は、よくわからない漫画を探すのが楽しいですね。


高田:よくわからない漫画といいますと?


宮本:あまり内容とかよく知らない漫画を、表紙で選んで買ったりとかするんです。それをしている時が楽しいです。


高田:コンビとして自覚されている長所と短所を教えて下さい。


芝山:長所はいろんなジャンルの笑いをできるところですね。幅の広さは僕らの長所だと思っています。毎回、違う種類の笑いでお客さんをびっくりさせていきたいというのがあります。


高田:短所は?


芝山:華がないところですね。僕ら二人って、見た目の印象が似てるってよく言われるんです。だからぱっと見た時に、インパクトに欠けるというのはあるかもしれません。


高田:では最後に今後の目標をお願いします。


芝山:base入りすることですね。ネタのストックはあるので、大事なのはタイミングだと思うんです。ですのでそのタイミングをみまあや……みまわやら……あれ?


宮本:見誤らない?


芝山:そうそう、見誤らない。やっと言えた(笑)。好機を逸しないことですね。面白いことさえやり続けていれば、絶対チャンスはあると思ってますから。


宮本:ただね。ひとつ不安があるんです。


高田:何ですか?


宮本:今日の舞台(第94回キタイ花ん)ですよ。相方がさっきのように良いことを言った後の舞台というのは、スベることが多いんです。ジンクスなんです。


高田:今日は、そのジンクスが破られることを期待しております。

              インタビュー・文 高田豪