私の新刊 「不条理な弱点」 が、
6月2日木曜日に発売になります。
内容は6年間、こちらのブログで書いてきた
ショートショートのうち、30本を選んで加筆修正
したものです。
今回の表紙は、こちらもブロ友の井川誠一さんに
お願いしました。
(本屋さんに並ぶのはもう少し後になるかも)
というより並べてもらえない可能性も・・・(^^;)
収録小説は・・・、
プロローグ 静寂の中で ①7年と8か月 ②天罰てきめん ③お爺さんの見た青い空 ④イルシャハーン ⑤心の鍵を開く歌 ⑥お一人さん ⑦ 音智協会の謎 ⑧ 戦慄のランチタイム ⑨ 悲鳴 ⑩ 恐怖のコラレオーネ ⑪ 思い込み茸 ⑫ 503号室の住人 ⑬ 不条理な弱点 ⑭ よろずやの店員 ⑮ 瑕疵物件 ⑯ 家族 ⑰ 真贋 ⑱ デーバローカ刑務所の秘密 ⑲ レンタル・要介護老人 ⑳ 保冷室にて ㉑ 西病棟の看護師 ㉒ 50年目の同窓会 ㉓ 受験の神様にまつわる回顧録 ㉔ 独裁者の集う町 ㉕ マカラスドリンク ㉖ 進撃の老人ホーム ㉗ 白道 ㉘ ゾンビの明日 ㉙ エクソシストの憂鬱 ㉚ ハチとキリギリス エピローグ 幻影の中でとなっています
いつもお世話になっております皆様には、本当のところ
私が直接お届けし、もらって頂きたいところです。
ですが、かえってご迷惑になってもいけないので
ひかえます。
アメーバーは連絡がとれませんが方法もありますので
メッセージボードに書いて頂ければ連絡法もお教えします。
***************************************
シマポンママの大脱走!
こんなふうにチビポンがダンボール箱で遊んでいると・・・、
要するに大人気がないんです。(^^;)
まあ、親子と言ってもチビポンとは一年しか離れてないので姉妹のようなものでしょうか。
いやだから、そう得意そうな顔をされても・・・。
追い出されたチビポンはいじけてるし・・・。
これが、クロちゃんだったら、チビポンが箱に入りたがってると、
さっと譲ってあげるんですけどね。
クロちゃんは大人ですから。
で、大人げないシマポンママですが、その夜・・・。
三階から脱走。閉店した後の店にやってきました。
シマポンママはどこにでもマーキングするので、見張ってないといけません。
とにかくお店には売り物の商品が積んでありますからね。
傘の箱の上に乗ってご満悦のシマポンママです。
その間、チビポンはおとなしくクロちゃんといてくれました。
*******************************************************
ところで、この前天井裏にいるところを撮影できた子猫(ハチワレ)ですが、今日、裏通りで親猫と一緒にいる所を確認しました。
元気そうで、だいぶ大きく育っていました。もう安心です。
****************************************************
部屋の中で遊んでいました。
***********************************************
と、いうわけで今週の小説は、
【 猫の視線 】というライト・ホラー小説。
これまた3分で読める小説です。
お急ぎでない方は、ぜひ読んでいってください。
【 猫の視線 】
「ご近所にテレビでもお見かけする有名な霊媒師の和田先生が住んでおられてよかった。私は以前、猫があらぬ方向をじっと見ている時、そこに霊がいると聞いたことがあります。実はウチには昔からノラ猫が出入りしてるんですが、一月程前からそのうちの数匹が決まって二階の窓枠に座り、下を見続けているんです。でも下には殆どお参り客も来ない荒れ果てた墓地があるだけなんです」
そう語る橋本さんは恐怖マンガの主人公のように目は血ばしり、恐ろしげだった。
「しかし、墓地にはスズメや小さな昆虫も飛んで来る。猫達が見つめていたのは何も霊とは限らず、そういった小動物ではないですか?」
俺は極めて常識的な指摘をした。しかし、橋本さんはゆっくり首を振った。
「私も最初そう思って気にも留めていませんでした。ところがよく見ると猫達は時々毛を逆立てて威嚇したり、あるいは驚いたように窓枠から飛び降りたりするのです。それで何を見ているのだろうと、そっと覗いてみたんですが、何もありませんでした」
「猫の目は人間と比べると良いですからね。おそらく小さな蛾かバッタでもいて、それが急に猫の方に飛んできたので驚いたんじゃないですか?」
「だったら良かったんですが、数日後には猫達は窓枠に座るのを恐れるかのように、近寄らなくなり、今度は少し離れた場所から天井付近ばかりを見つめるようになったんです。さらにしばらくすると、今度は部屋の中央の一点を見つめるようになってきました」
橋本さんの話はまるでポピュラーな怪談のようだった。
幽霊だか物の怪だかがだんだん近づいてきて最後は真後ろに立っているという、聞き飽きた話だ。
しかし、今回俺は橋本さん自体に異変を感じていたので、そのまま話を続けさせた。
「つまり橋本さんの解釈では何者か禍々しい物が家の中に侵入してきたというわけですね」
「そうです。私がいかに老眼だとしても部屋を明るくして猫の見つめる方向を見れば、それが蜘蛛や蟻であれば見つけることができます。ですが・・・、」
「そこには何もいなかったと・・・」
橋本さんは、こっくりと頷いた。
「しかもそいつは、ジリジリと私の家を侵食し始めました。私はその部屋から猫を追い出すと、氏神である山の辺神社からお札を貰ってきてドアに貼り付け、開かずの間にしました。ところが何日か経つと猫達はその部屋の前の廊下を見つめだしたんです」
橋本さんはブルブルと全身で震え出し、少ししか無い髪の毛をかきむしった。
「御札は効を成さなかったんですね?」
「そう思います。しかもその頃から私は度々息苦しさを感じ、時には酷く咳き込んで熱まで出すようになりました。そのため私はそれが死神のような危険なものではないかと恐ろしくなったんです」
橋本さんの言うように、確かにそれは危険なものだろう。
「私は今度は神主さんに家まで来て頂いてお祓いをしてもらいました。するとしばらくは猫も廊下を見つめなくなり、私の体調も回復してきました。が、数日前、私が一階の居間でお酒を飲んでいると、突然猫が集まりだし、なんと私の顔を覗きだしたんです。シッシと言っても聞きません。すぐ後ろに来ている! 私はそう感じて振り返りました・・・」
「そこに何者かが立っていたんですか?」
「いいえ、やはり私には見えませんでした。しかし、すっかり怖くなって、町内でも有名な霊媒師の和田先生の元に駆け込んできたというわけです。先生、どうか私を助けて下さい」
橋本さんは私に躙(にじ)り寄り、私に抱きついて嘆願した。
「わかりました。お助けしましょう。最初に言っておきますが、橋本さんが言われるその物は、間違いなく死神だと思います。あなたの体調が徐々に崩れてきたのはそのせいでしょう。で、もう一度お聞きします。猫があなたの顔を見つめだしたのは数日前なんですね」
「はい、日曜の番組を観ていたので、それはまちがいありません」
それだけ聞くと私はすぐに警察に電話した。
言葉は慎重に選ばなければいけないが、6月の蒸し暑さを考慮しても、目の前にいる橋本さんの顔の崩れ方だと死後数日でまず間違いはない。おそらく異臭も漂っているはずだ。
「もしもし警察ですか? 和田という者なんですが近所の橋本さん家で数日前から異臭がするんです。見てもらえませんか? 一人暮らしの老人で、住所は・・・」
霊能者といえど、できることとできないことがある。私は橋本さんの幽霊にあなたは既に死んでいるという残念なお知らせをした。
( おしまい )
どのような感想も歓迎いたします。(^▽^)/