「Sカーブ」のおはなし。 | 無料塾「中野よもぎ塾」のブログ

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こんにちは、塾代表の大西ですニコニコ

今日は、「Sカーブ」というもののお話を書きます。

皆さんは、「正規分布」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
統計の言葉なのですが、世の中には正規分布になっている現象が結構たくさんあります。
代表的なのは、偏差値です。

「分布」というのは、その母集団(学校の生徒全員とか、日本国民全員とか、アンケートに答えた人全員、とか)を調べて、「貯金をどれくらい持っているか」「何歳か」「身長は何cmか」「子どもが何人いるか」みたいな切り口で切ったときに、どのように並ぶかというのを示すものです。

「正規分布」というのは、母集団を並べてみたときに、左右対称の山のような形になっている分布のことを言います。

といっても難しいかも知れないので、まずはグラフを見てみましょう。
正規分布のグラフはこんな感じです。(手描きなのでちょっと下手っぴです)



左右は低くなっていて、真ん中がふくらんでいる、山のような形ですよね。
模擬試験とかを受けたときに、横軸に「偏差値」をとって、縦軸に、「その偏差値の人が何人いるか
ととってグラフを作ってみると、こんな形になると言われています。
つまり、すごく偏差値が低い人と、すごく偏差値が高い人は、ごくわずかで、みんな真ん中ぐらいに集中しているということです。
偏差値70ある人は、だいたい上位2%くらいだと言われています。
偏差値60以上の人は、だいたい上位16%くらいです。
逆も同じで、偏差値が30以下というのは下位2%くらい。40以下だと、下位16%くらい。
偏差値40~60という人は、全体の68%くらいを占めることになります。
真ん中の人が約7割だから、10人いたら、7人は真ん中の山の部分に当てはまるということになります。

ここからわかるのは、みんなと同じように勉強をしていては、真ん中の山のところから抜けることは難しいっていうことです。
基本だけを繰り返すのではなく、基本もしっかりやった上で、応用問題で確実に点数をとれるかどうかで、山の部分より左側の、裾野のほうに行くことができるわけです。

身長や体重なども、分布を調べるとこのような正規分布になっているそうです。
つまりすごく低い人(軽い人)、すごく高い人(重い人)は少なくて、中くらいの人が圧倒的に多いということです。

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さて、このグラフを、「累積」にするとどうなるでしょうか。
累積というのは、左から順にどんどん足していくということです。
偏差値20%以下の人は何人? 40%以下の人は何人? 60%以下の人は? と考えていくと、左から順にどんどん人数が増えていくことになります。

するとこんなグラフになります。(こちらも下手っぴですが……)



これが、冒頭に書いた「Sカーブ」です。
累積のほうのグラフを見ると、なんとなくS字に見えますよね。
途中まではなだらかに増えていって、真ん中でぐんと急増、最後のほうはまた平らに近くなっています。最後のほうに足す数、つまり偏差値なら60とか70以上の人は人数が少ないから、足してもあまり増えないというわけです。

この「Sカーブ」のような現象も、世の中にはたくさんあります。

『仕事に役立つ統計学の教え』(斎藤弘達著・日経BP)という本を読んでみると、Sカーブは「スキルアップ」にも当てはまると書いてありました。

この本のp.75に書いてあることを引用します。

「最初は、慣れていないから下手です。そこからだんだんと体の中に経験が累積されていき、あるタイミングから一気に上達が進みます。ストレスなく、無意識にできるレベルまで習熟度は進むのです。」

この本はビジネス書なので、仕事の上達度のことを言っていますが、これって勉強でも同じですよね。
英語を始めたばかりの頃は、アルファベットも書き慣れていないし、単語を覚えたり書くだけでもひと苦労。アルファベット順に並んでいる辞書も引き慣れていないから、調べるのも超時間がかかる!
「もうイヤ~~」と投げ出したくなります。
でも、少しずつ慣れてくると、単語もスラスラ書けるし、文章だって「主語を書いて、動詞を書いて……」という文法にも慣れて、スラスラ書けるようになります。
最初は単語を見て「なんて読むの?」と戸惑っていたのも、英語の読み方に慣れてくると、読み方を教わらなくてもだいたい読めるようになります。
どんどん習熟度が上がるタイミングが、絶対に来るということですね。
でもこの習熟度急上昇のタイミングは、「もうイヤ~~」というところで何もやらなくなれば、迎えることはできません。

今、よもぎ塾の生徒たちは、ほとんどがこの「習熟度急上昇」の手前でもがいているような状況です。
でも続けることで、きっと急上昇する時期が来ますので、ここがふんばりどころというわけです。

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また、急上昇した後は、再びなだらかな上昇になります。
これは「惰性」でやるようになるからなのだそう。
いったんその「惰性ゾーン」に入ると、なだらかに上がっていればいいのですが、下がってしまうこともあり得ます。

会社で言うなら、若い頃はバリバリと仕事をこなしていろんな経験をして、できることがどんどん増えていったのに、ある程度の地位を得てしまって以降は部下に何でもかんでも任せる……とやってきた年配の方の中には、「ワード、エクセル使えません」「コピーってどうやってとるの?」という方も少なくありません。これは、Sカーブのてっぺんに到達してから、なだらかに下がってしまっている人だと言えるでしょう。
過去の栄光はおいておいて、日々少しずつでも習熟度を上げていくことを考えていないと、やがて下り坂を迎えてしまうわけです。

勉強も同じで、惰性ゾーンに入ってから、再び上がることを考える必要があります。
それには、今までより1ランク上の問題集をやるとか、違う勉強法を試してみるとか、何か新しいことをやり始めて、再びSカーブをリセットしてやる必要があります。

簡単に言えば……人生は、挑戦を諦めたらあとは下り坂、ってことです。

以前、ある高校生にこう言われたことがあります。
「あの頃は良かったっていう大人、嫌いなんですよ」
だって、今はあの頃よりも良くないってことだから。前進してないってことだから。
もう一度新しいSカーブに挑戦しなくちゃ、頑張っている高校生たちには嫌われます(笑)。

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今、まだ「勉強がしんどい」「全然成績が上がらない」と苦しんでいる学生の皆さんは、Sカーブを想像してみて、今自分がどこにいるか考えてみて下さい。
そのまま耐えて頑張れば、次はどこに行けるのかが見えていれば、ちょっとは頑張る気になれませんか?

私も含めオトナも、同じですよね。


最後に、先ほど紹介した本を下記にリンクしておきます☆
仕事に役立つ統計学の教え/日経BP社

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