SEALDsを「利己的」と批判し炎上した武藤貴也・自民衆院議員の金銭疑惑 | なか2656のブログ

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週刊文春などのネットのニュースなどによると、8月冒頭に、国会前のデモで奮闘する大学生らのSEALDsを、「利己的・自己中心的」とネットで批判して炎上した、自民党の衆議院議員である武藤貴也氏に今度は金銭疑惑が浮上したとのことです。

・学生デモ批判 武藤議員が“議員枠未公開株”で4100万円集金していた|週刊文春

■先般のブログ記事
・武藤貴也・自民衆院議員、SEALDsを「自己中心的、利己的考え」と批判し炎上



ニュース記事によると、昨年10月、武藤議員が値上がり確実なソフトウェア会社の新規公開株を証券会社がクローズドの国会議員枠で買えると、知人にLINEで資金提供を持ちかけてきたそうです。



この知人が投資家を探したところ約20人から、合計4104万円が集まり、それぞれ武藤議員の政策秘書の口座に振り込まれたそうです。しかし、結局、未公開株の購入はなされず、出資者らが返金を求めたものの、約800万円を秘書が別の借金返済にあてていたことが発覚。いまだに約700万円が返済されていないということです。

これが事実なら大変なことです。

武藤議員は国会前などで安保関連法案反対のデモを行う若者を「利己的、自己中心的」と批判しているわけですが、自身やその仲間内だけはクローズドな“国会議員枠”により不当な利益を得ようとしていることは「利己的、自己中心的」ではないのでしょうか?

これが「滅私奉公」をスローガンに掲げる”愛国者”のあるべき姿なのでしょうか?

武藤議員や自民党・公明党らの国会議員の脳内がどう整理されているのか、よくわかりません。

この記事で取り上げられた事件を少し考えると、武藤議員が未公開株購入を名目に知人らから金銭を募り、実際には借金返済にあてていたのであれば、人を欺いて、財産上不法の利益を得ているので、詐欺罪にあたる可能性があります(刑法246条2項)。

また、武藤議員やその秘書らが、未公開株の購入を名目として知人らから金銭を集めながら、その金銭を実際には他の借金返済にあてていたのであれば、横領罪にあたる可能性があります(刑法252条1項)。

さらに記事にもあるとおり、武藤議員はこの一連の金銭の流れについて資金等報告書などに記載していないそうであり、政治資金規正法に抵触する可能性もあります。

加えて、この未公開株について、武藤議員が「この案件はクローズだからね。正直証券会社からうちが国会議員のために枠を抑えてるのが一般に知られたら大変だ」とLINEで述べているのが注目されます。

この点、金融商品取引法38条以下は金融商品の募集における様々な禁止行為を列挙しているところ、同法38条8号の細目を定める金融商品取引業に関わる内閣府令117条は、取引の公平のため、証券会社等は特定の顧客に対して特別の利益を提供することを禁止しています(同施行令117条3号、河本一郎・大武泰南『金融商品取引法読本』249頁、317頁)。

そのため、武藤議員の発言にあるような、「証券会社が国会議員枠で用意したクローズドな未公開株」というものがあるとしたら、それを取り扱おうとした証券会社等は、金融商品取引法の禁止する特別利益の提供に抵触するおそれがあります。

そしてこのような不祥事が発覚した場合、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、行政処分を行うよう勧告し、内閣総理大臣及び金融庁長官は、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うことになります。

また、さらに、このように一般人が手にすることのできないクローズドな未公開株を何億円単位でやり取りする巨額の贈収賄事件(刑法197条、198条)であったリクルート事件は、1988年に新聞紙でスクープされ、ときの内閣が総辞職に至る大事件となりました。

もし今回の武藤議員の件が氷山の一角で、リクルート事件のような巨額の未公開株の贈収賄事件が背後に隠れていたら大変なことです。

東京地検特捜部などの検察が捜査に動くべき事件です。

また、記事でもつっこまれていますが、武藤議員はこのスマホでのやり取りをLINE衆議院の外務委員会の審議中に行っていたそうです。

衆議院規則215条は、「議事中は参考のためにするものを除いては新聞紙及び書籍等を閲読してはならない」と規定しており、国会議院内で携帯やスマホを使うことは禁止されています(参議院規則211条参照)。

また、そもそも国会議員は主権者たる国民から選挙による付託を受けて議院としての活動を行うのであって、国会議員と国民との関係は委任(民法643条以下)に準じるものと思われます。

そのため、国会議員は議員としての職務を行うにあたり、善管注意義務(同644条)を負うのであり、審議中は審議に集中すべきです。

なお、言うまでもなく、国会議員である武藤議員には不逮捕特権があります(憲法50条、国会法100条)。そのため、武藤議員は最大限、国会議員として居直るものと思われます。辞任のドミノ倒しを恐れる政府・与党も武藤議員を支えるでしょう。

しかし、この問題で武藤議員が釈明し迷走し、ずるずると居直ったりすれば、安倍政権のダーティーなイメージはますます強まり、支持率はますます下がるでしょう。

■追記
8月19日のニュースによると、自民党は武藤議員からの離党届を受理し、同議員は自民党から離脱したとのことです。

・武藤氏の離党届スピード受理=幕引き優先、事実確認置き去り―自民|時事通信

19日の日中には、自民党の谷垣幹事長は、「事実関係を調査する」としていたにもかかわらず、武藤議員が離党届を出し、自民党はこれをあっさり受理したそうです。

そして、記事によると、応対した棚橋泰文幹事長代理は、党としての調査を行わなかったことについて「事実関係の聴取以前に離党したいという話があったので、受理したまでだ」と記者団に説明したとのことです。

なんの説明にもなっていません。先般の武藤議員のSEALDsへの批判が社会的批判を浴びていることと相まって、今回の件を受け、内閣支持率の低下を避けるべく、トカゲのしっぽ切りをしたとしか思えません。 

うえでも記したとおり、検察・警察や証券取引等監視委員会、金融庁などは厳正に捜査・調査を行うべきです。


刑法概説(各論)



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