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1.保険募集人等により告知妨害等があった場合の保険契約の解除
このブログ記事では、保険法における解除阻却事由の例外について取り上げます。

生損保の保険には、加入にあたって保険会社が引受の審査をするための告知という制度があり、告知義務違反があった場合は保険会社はその保険契約を解除することができます(保険法28条1項、同55条1項、84条1項)。



しかし、保険会社のために保険契約の締結の媒介を行うことができる者(保険媒介者・保険募集人など)が、保険の募集にあたって保険契約者または被保険者に対して告知妨害や不告知教唆をしたときは、保険契約者または被保険者が故意または重過失により告知義務に違反していたとしても、保険会社は保険契約を解除することができません(保険法28条2項2号・3号、同55条2項2号・3号、同84条2項2号・3号)。

これは、保険募集人等の指揮や監督は保険会社等が行うのが適切であり、また、保険契約の勧誘を行った保険募集人等の言葉を信じた保険契約者等を保護する必要があるからです(萩本修『一問一答 保険法』54頁)。

保険法

(告知義務違反による解除)
第二十八条
 保険者は、保険契約者又は被保険者が、告知事項について、故意又は重大な過失により事実の告知をせず、又は不実の告知をしたときは、損害保険契約を解除することができる。
 保険者は、前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、損害保険契約を解除することができない。
 損害保険契約の締結の時において、保険者が前項の事実を知り、又は過失によって知らなかったとき。
 保険者のために保険契約の締結の媒介を行うことができる者(保険者のために保険契約の締結の代理を行うことができる者を除く。以下「保険媒介者」という。)が、保険契約者又は被保険者が前項の事実の告知をすることを妨げたとき。
 保険媒介者が、保険契約者又は被保険者に対し、前項の事実の告知をせず、又は不実の告知をすることを勧めたとき。
 前項第二号及び第三号の規定は、当該各号に規定する保険媒介者の行為がなかったとしても保険契約者又は被保険者が第一項の事実の告知をせず、又は不実の告知をしたと認められる場合には、適用しない。
 第一項の規定による解除権は、保険者が同項の規定による解除の原因があることを知った時から一箇月間行使しないときは、消滅する。損害保険契約の締結の時から五年を経過したときも、同様とする。


2.因果関係がなかった場合の取扱い
これに対して、保険契約者等による告知義務違反と、保険募集人等の告知妨害等との間に因果関係がない場合には、保険法は保険会社による保険契約の解除を認めています(28条3項、同55条3項、同84条3項)。

これは、このような場合については、①保険募集人等の指揮や監督を保険会社等が行ったとしても、保険契約者等による告知義務違反を防ぐことはできないこと、また、②保険契約者等は告知妨害等がなかっとしても告知義務違反をしたと認められる以上、そのような保険契約者による保険募集人等に対する信頼を保護する必要はないこと、が理由として挙げられています(萩本・前掲54頁)。

そして因果関係がないことにより解除が認められる具体例としてはつぎのようなものが上げられます。

保険募集人が、保険契約者から告知書を手渡されたにもかかわらず、保険契約者名義の虚偽の告知書を保険会社に提出することによって告知妨害を行ったが、実は保険募集人等によって隠匿された保険契約者作成に係る告知書がもともと虚偽のものであり告知義務違反が認められるものであった場合。

保険募集人が自己の親族(保険契約者等)に不告知の方法について教示することによって不告知教唆を行ったが、もともと当該親族は、自己の病歴からすると保険に加入できないことを知りながら当該保険募集人と共謀して加入が認められるような虚偽の告知書を作成して保険会社に提出する意図を有していた場合。
(萩本・前掲55)。

ただし、この保険法28条3項などの解除権阻却の例外については、「保険媒介者に告知妨害等があった場合には、それにより告知義務者の告知に関する判断がゆがめられており、そのような場合に保険者が告知義務違反の主張をすることは認められるべきでないという考え方が本条2項・3項では基本にあるのであり、その例外を認める3項の適用は、告知妨害等と告知義務違反との間に因果関係が存在しないことが明瞭に証明された場合に限り認められるべきである」(山下友信・米山高生『保険法解説』543頁)との指摘がなされています。

3.解除の除斥期間の起算点・解除の通知方法等
この解除は、「解除の原因があることを知った時から1か月」に行使しなければならない除斥期間とされています(保険法28条4項、同55条4項、84条4項)。

この除斥期間の始期は、「保険会社の内部組織において解除の権限を有する部署(通常は保険金等支払部門)が知った時」とされています(生命保険協会「保険金等の支払いを適切に行うための対応に関するガイドライン」13頁)。

解除権の行使方法については保険法に規定がないので、民法によることになり、保険会社から保険契約者への意思表示によってなされることになります(民法540条)。方式も規定がないので、口頭でも書面でもよいとされていますが、実務では、後日の証明のために確定日付のある書面(配達証明郵便)を郵送することが一般的と思われます(生命保険協会・前掲14頁)。

・保険金等の支払いを適切に行うための対応に関するガイドライン|生命保険協会

■参考文献
・萩本修『一問一答 保険法』54頁
・山下友信・米山高生『保険法解説』543頁
・日本生命保険『生命保険の法務と実務 第3版』308頁
・生命保険協会「保険金等の支払いを適切に行うための対応に関するガイドライン」13頁

一問一答 保険法 (一問一答シリーズ)



保険法解説 -- 生命保険・傷害疾病定額保険



生命保険の法務と実務 【第3版】





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