・安保関連法案、衆院可決 5野党は退席や欠席|朝日新聞
・安保法案衆院通過:「60日ルール」で成立の公算大きく|毎日新聞
この安保関連法案の衆議院での可決という歴史的な事実を朝日、毎日新聞などは淡々と記事にしています。安倍総理に経営幹部が連日、高級料亭で接待され抱き込まれているため、こういう紙面になるのでしょうか。
この点、抱き込まれていない海外のメディアのほうがより正確な報道をしているようです。
英インデペンデント紙は、7月15日付で、"Japan protests after Abe's "constitutional coup d'etat"(=「安倍総理の憲法上のクーデターに対して日本国民が抵抗している」)というツイートとともに、つぎの新聞記事を配信しました。
・Japan poised to send soldiers to fight abroad for the first time in 70 years|Independent
また、7月16日の強行採決の報道においては、BBCの特派員は、「安倍首相は右翼の民族主義思想を持つ」と明快に解説していました。完全にヒトラー扱いです。
この英インデペンデント紙の「安倍総理の憲法上のクーデターに対して日本国民が闘っている」とのコメントは正鵠を射ていると思われます。
7月18日付のつぎのビデオニュース・ドットコムのインタビューでも、石川健治・東京大学法学部教授(憲法)がまさに同旨の見解を述べておられます。
『あの日、日本でクーデターが起きていた。そんなことを言われても、ほとんどの人が「何をバカな」と取り合わないかもしれない。しかし、残念ながら紛れもなくあれはクーデターだった。そして、それは現在も進行中である。』
『その理由として石川氏は今回、安倍政権が、憲法を改正しないまま、長年にわたり憲法によって禁じていると解されてきた集団的自衛権を容認する法解釈と法整備を強行したことによって、「法秩序の連続性が切断された」と考えられるからだと説明する。』
『安倍政権は、国民を置き去りにしたまま、政府レベルで法秩序の連続性の破壊を図った。内閣法制局長官を集団的自衛権容認論者にすげ替え、集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、政権与党のみで法案を国会を通してしまった。国民から支持を受ける「革命」に対し、国民を置き去りにした状態で法秩序の連続性を破壊する行為を、法学的には「クーデター」と呼ぶのだと、石川氏は言う。』
『石川氏は今回日本が失ったものの中で、最も大きかったものは「理屈が突破されたこと」だったという。』
『理が通らない政策が数の論理によって押し切られてしまったことで、日本が「法秩序」を失ったことの影響は大きい。今後、この法案がもたらすであろう個別の問題を考えただけでも目眩がしそうだが、より高次元で日本の法秩序が破砕されたことの影響は恐らく安全保障分野だけにとどまらないだろう。われわれの多くが、日本という国の政治の頂点で、「理」が「無理」によって押し切られるところを目撃してしまった。これによって戦後われわれが大切に育て、守ってきた「公共」空間が壊されてしまった。』
・あれは安倍政権によるクーデターだった/石川健治氏(東京大学法学部教授)|ビデオニュース・ドットコム
また、7月18日に名古屋のデモに参加された慶大名誉教授の小林節先生(憲法)もテレビ局のインタビューに対して、「9条の破壊だけでなく、憲法の破壊」と述べたそうです。
小林先生は、「この法案は憲法に違反して、自衛隊を米軍の二軍にするものです。これを許せばわが国は立憲国家でなくなり、専制が始まり、世界中に敵が出来、かえって安全でなくなり、戦費で経済的に疲弊し、要するに希代の愚策です」と語ったそうです。
君主主権の明治憲法が、1946年に主権が変更され、国民主権の現行憲法に改正がなされたのは、旧憲法73条の手続きを経たとしても、憲法改正の限界を超えるものであるとして、一般的に、1945年8月の政府のポツダム宣言受諾をもって一種の革命がなされたのであるとする「八月革命説」が通説とされています(芦部信喜『憲法[第6版]』29頁)。
一方、本年7月16日に安倍内閣がわが国の法秩序を粉砕した憲法的クーデターは、後世の歴史からは、「安倍内閣の七月反動革命」とでも呼ばれることになるのでしょうか。
とはいえ、現実的な問題として、われわれ国民としては今後のことを考えなければなりません。
この点、6月15日、憲法学者の長谷部恭男早大教授と小林節慶大名誉教授が日本記者クラブで記者会見を行い、安全保障関連法案について違憲との見解を重ねて示した際の先生方の見解が参考になるように思われます。
この記者会見の終盤では、安保関連法案が成立した際に、それを違憲とする趣旨の訴訟を提起する話題も出されたそうです。
しかし、訴訟が審議される間にどんどん行政行為が行われて進行してしまうこと等から、
長谷部教授は、「まず、次の国政選挙で新しい政府を成立させて、いったん成立したこれらの法律を撤回する、元に戻すということを考えるべき。」と述べられ、
小林名誉教授も、「ああいう狂ってしまった政治は、次の選挙で倒せばいい。」と応じたとのことでした。
この点、ネットの19日付の47newsによると、共同通信社が17日、18日に行った世論調査によると、安倍内閣の支持率は前回から9.7ポイント急落して37.7%、不支持率は51.6%と、支持と不支持がはじめて逆転したそうです。
・安倍内閣支持急落37% 不支持過半数で逆転|47news
また、同日の毎日新聞の世論調査によると、安倍内閣の支持率はさらに低く、35%にとどまったそうです。
・<本社世論調査>内閣支持率急落35% 不支持51%|毎日新聞
(毎日新聞サイトより)
安倍政権は、国民の気をそらそうと色々な策を講じてくるでしょう。しかし、国民は、安倍政権は2015年7月に反動復古的なクーデターを行った、反国民的勢力であることを絶対に忘れず、つぎの選挙で政治権力の座から追放しなければなりません。
日本の現行憲法は、国民の個人の尊重(憲法13条)と基本的人権の確立(憲法11条、同97条)を目的とし、国会(憲法41条)、内閣・行政(65条)、裁判所(76条)などの国家(統治機構)はその実現のための手段であるとする構造をとります。
そして、国民は、永久不可侵の権利として現在および将来の国民に憲法から信託された基本的人権(憲法11条、97条)を、「不断の努力によってこれを保持しなければならない」とされています(憲法12条)。
また、この憲法12条の「不断の努力」から「抵抗権」の理念を読み取ることも可能とされています(芦部・同375頁)。
安倍政権は本年7月16日の憲法的なクーデターにより、わが国の憲法的秩序に対して反動革命を行いました。われら国民は、それに対して、「不断の努力」により、つぎの選挙で、安倍政権を政治権力の座から断固として追放すべきです。
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