もう大丈夫、乗り越えた、そんな顔をして
あの日から、ちょうど5カ月(5年)の月日がたちました。
今の私の願いなら変わらないままです。
一度だけ、もう一度だけあなたに逢いたい。
(BY浜崎あゆみさん)
‹人生›
料理を作ることが大好きだったその男はずっと自分の人生を考えていました。
ある日「小梅!これからは父ちゃんとずっと一緒にいようか?」
そして、その男は30年以上務めた会社を辞めました。
「ドッグカフェ」を開業したかった男は二年間の修行を終え、物件を探しましたが
なかなか物件は見つかりません。
なぜなら、大家さんにその旨を話すとことごとく断られるからです。
「ワンコ」(動物)という言葉を出しただけで断られます。テナントを貸してもらえません。
「小梅、父ちゃんまずお店(ドッグカフェではない一般的な飲食店)を出して、そのうち物件
を探してドッグカフェを開くわ」
そして男は物件を決め、お店をオープンさせます。
<犬生>
そんな時、小梅の体調に異変が現れます。
「小梅、最近、うんPが黒いな!」
以前も同じ症状があり病院に行きましたが、抗生物質の処方で症状が治まりました。
今回も病院に行き、抗生物質を処方してもらいましたが、2週間たっても、うんPは黒いままです。
精密検査を行うことに。
10月13日(金)、昼営業を終え、帰宅。
病院の医院長先生からの電話。
男は大丈夫だと思っていましたが…
医院長先生からは「残念ですが、悪性でした。」との言葉。
男「小梅は治るんですか?」
医院長先生「治りません。」
電話を切った男は、半狂乱状態で「小梅~、小梅~、小梅~」叫びました。
床に這いつくばり、床を手でたたき…。
そんな男に小梅は駆け寄り、ずっと覆いかぶさり、そして涙をなめてくれました。
ずっと、ずっとそばに寄り添ってくれました。
「小梅、ありがとう!」絶対にあのぬくもりは忘れないよ。
消化器系の悪性リンパ腫。
その日から、小梅の闘病生活が始まりました。
このままだと、もって1~2週間。
ステロイド治療でもって1~3か月。
抗がん剤治療でもって半年~1年。
「小梅、来年の春には一緒に桜を見ような!」
「またレン君、マメちゃんと一緒に遊ぼうな!」
「いっぱいワンコ友達と遊ぼうな!」
夫婦で悩みぬきましたが、小梅との時を少しでも増やしたい。
長く生きてほしい。
「抗がん剤治療」を選択。
10月17日(火)病院にて一回目の抗がん剤治療を開始。
朝に病院に小梅を預け、男はお店に向かいます。
営業中も男は「小梅が頑張っているから私も頑張る」それだけを考え営業します。
夕方、営業を終え、病院に向かいます。
医院長先生の話だと2、3日後に抗がん剤の副作用が一番現れてきますとの話でしたが。
そんな期間もなく病院に向かえに行った時の小梅は「死んだような状態」になっていました。
目もうつろでほぼ動けず。ごはんもまったく食べず。
家に帰り、小梅を寝かせ、薬を注射器で口から飲ませ…。
朝に病院に小梅を預け、営業終了後、夕方に向えにいく。
そんな日々が続きました。
小梅の状態は少しずつ良くなり、10月22日(日)にはおやつも食べられる状態になりました。
ただ、ご飯を食べないから日に日に痩せていく小梅を見ているのが、つらく悲しく。
2回目の抗がん剤治療 10月24日(火)
その日も朝、病院に小梅を預け、お店に向かいます。
営業中も「小梅!頑張ってくれ!」それだけしか考えていませんでした。
営業を終え、夕方、病院にむかえに行った時には、一回目の抗がん剤治療よりも小梅はぐったりしていました。
家に戻り、小梅をさすり、ずっと撫でていました。
小梅は体力も落ち、今まではできていたこと、ソファーに飛び乗ることもできず。
おしっこの時にもかがむこともできず。踏ん張ることもできず。
食欲もなく、ただ機械的に口から栄養剤を飲ませ、薬を飲ませ。
こんな状態になるなら、何のために。
「もう頑張ったね。小梅。あなたがこんなに苦しむなら」…抗がん剤治療をやめ自然療法も考えました。
日に日に体力が落ち、目に見えガリガリになっていく愛娘 小梅…男は見ているだけでつらく。
10月25日(水)
早朝(6時30分頃)嫁が小梅を外でおしっこをさせに連れて行ってくれました。
小梅は踏ん張ることができず、立ったままおしっこをしたそうです。
7時30分
突然、小梅の様子がおかしくなり、全身で息をするように激しい発作の様な症状が出ました。
…。ごめんなさい、もうこれ以上は書けません。
すぐに小梅を近くの病院に連れて行きました。
病院に着くまで小梅はずっと嫁の腕に抱かれながら、心臓をさすられていました。
8時に病院につき、チャイムを鳴らしても、裏口の扉をたたいても、応答はありませんでした。
ただただ、男は祈っていました。
頼むから小梅。もってくれ。頼むから…。その時、車の中で小梅の心臓はまだ動いていました。
8時5分頃、医院長先生が病院に到着。
車の中にいる嫁に問いかけました。「小梅は?」
嫁は悲しそうに首を横に振りました。
愛娘 小梅 4歳と11カ月の短い犬生でした。
あなたの選んだ、その場所にあなたを苦しめるものなど、ひとつさえないことを祈ってます。
(BY浜崎あゆみさん)
<人生と犬生>
もうどうでもいい。何のために頑張るのか?
何のために生きるのか?
何もかも捨ててしまいたい。
意味がない。
男は店の看板を下ろそうと考えます。
でも、嫁がその時に言ったこと。
「小梅のためにもあの看板は…ふたりで頑張ろう!」
この言葉で男は救われました。
今でも鮮明におぼえています。
まだオープン前。お店に看板がつき、車でお店の前まで行き、車内から小梅に看板を見せたんです。
小梅は嬉しそうにその看板を見上げていました。
「とうちゃん、がんばるウメよ!」
そう言っている気がしました。
いえ、そう言っていました。
今は、家を出るとき、小梅の写真に「とうちゃん、いっぱい売ってくるからね。」と話しかけます。
お店に着いたら、店内にいる小梅に「小梅、今日もいっぱい売ろうね。」と話しかけ営業を開始します。
今は…ずっとドッグカフェで小梅といたいという夢はかないませんが、今日も明日もいつも小梅と一緒に頑張っています。
住所:札幌市北区北19条西3丁目 平澤ハイツ1F
あなたの選んだその場所からは、今のこんな私はどんな風に、ねえ、映っているでしょうか。
いつかもう一度あなたに逢えたその時は嫌がられるくらい抱きついてみてもいいですか。
いつかのその日まで待ってて。
(BY浜崎あゆみさん)
この場をお借りしまして、小梅が縁で知り合えた皆様に感謝いたします。
本当に感謝しかなく、本当にありがとうございました。
まだまだ、小梅家の心の隙間は埋まりませんが、一歩ずつ前を向いて進んでいきたいと考えています。
今、私たちができる精一杯のご報告です。