畑が似合う男 2 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

この、畑が似合う男は自然散策の他に川釣りのガイドもやっていた。

後で「かなづち」だと知って救命胴衣の着用を義務付けたのだが、それでは子供が深みにはまっても助けられない。

やはり、人間らしく呼吸困難になるようだ。

川の側で生まれ育ち、何で泳げないんだ。

「そんなバカな・・」と思ったが、十分有り得る。

屋久島にも、溺れながらも川底を歩いていた男がいた。

ばかばかしいと思いながらも野人が髪の毛を掴んで引き揚げたことがある。

シーズンに備えて近くのプールで特訓したのだが、おぞましい光景を野人は目にした。

泳げないと言う彼を無理やり泳がせてみたのだが・・

クロールしながら底まで沈んで行く男は初めてだった。

手のかきは超が付くくらいスローで、これでは前に進まず、足くびは曲がらず直角のまま動かしていた。

まあ、絶望的と言えばそれまでだが、野人に不可能はない。

1時間ちょっとで25m完泳させたのだが、絶対不可能と確信していた社員達は半信半疑だったようだ。

皆にしつこく聞かれた本人はいつものようにニコニコ・・していた。

後は回数券買って自分でやれと業務命令。

1時間で25m泳げるようになりたい方はいつでも野人の元へいらっしゃい。

この男よりひどいパターンはないだろうから自信を持っていい。

以前から野人の依頼で色んな苗を届けてくれていたが、この日は薬草「トウキ」の苗をどっさり運んで来てくれた。

この薬用として知名度の高いトウキを、「香辛野菜」として栽培するつもりだ。

セロリに似た香りと食感で、セロリよりもっと薬草のような香りが強い。

他にはツリガネニンジンやコシアブラ、コゴミの自生場所も彼に教えている。


続く・・