野菜を太らせる利益とリスク 2 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

野菜を早く作る利益は言うまでもないが、リスクは経費と労力だけではない。植物を強引に太らせることのリスクはもっと大きなものだ。動物も植物も同じ生き物だ。牛も豚も鳥も魚も今は家畜や養殖魚として流通している。野菜も養殖とまったく変わらない。口から食べさせるか根から吸わせるかの違いだけだ。現代語で言うなら「メタボ野菜」と称してもおかしくはない。霜降り牛や霜降り豚は美味しくても「健康的」とは思わないだろう。養殖のタイやハマチを「自然の味で健康的」とは誰も言わない。違いは手間隙かけた肉は高価で、魚は天然物より安価なことだ。それは純粋に味の差だろう。

野菜の場合は残留農薬ばかりに目が行くようだが野人はそんなことはそれほど気にしない。

肉や魚も時には薬物を使うし、各食品にも薬品はいくらでも入っている。

野菜を養殖して太らせれば化学肥料であろうが有機肥料であろうが同じ事。違いはミネラルがあるかどうかだけだ。つまり、旨いか旨くないかと言うことだ。有機肥料を微生物が分解すれば化学肥料になる、その発見が近代農法の始まりだった。手間を省いて微生物を必要としないから工場でも野菜が出来るのだ。オーガニックと言う言葉が流行り、化学肥料の野菜が駄目で有機肥料野菜を崇拝する傾向があるが、理由は健康で体にも環境にもやさしいと言うことのようだ。しかしそんなことは絶対にない。膨らんでメタボになれば化学肥料同様に虫の猛攻を受ける。化学肥料にミネラルを加えれば美味しくて同じような野菜は出来る。やって見るとわかるが薄めた海水で十分間に合う。

早く太らせればそれは養殖野菜であり、生エサを与えるか、抽出したサプリを与えるかの違いしかない。人もそれを当然のようにやっている。食品で摂れないからとビタミンやミネラルのサプリを求めている。まったく同じ事だ。

野菜に多様な有機肥料を与えると太るだけでなく何故味が多様に変わるか、当たり前だがそれらの養分を吸収するからだ。何故吸収するのか、それが植物の使命だからだ。喜んでいるわけではなく、土中の余計なものを排除、地上に分散しようとする、何十年も植物をじっと観察していればそれくらいわかる。そうやって何億年も植物は環境を整え土壌を正常に保ってきた。動物の死骸や糞などで過多になった成分を吸い上げて必ず土壌を均等にする。食べて悪いものではないが、食べやすい野菜ばかり好んで食べる事で本来の植物が摂れなくなる。その結果、体の細胞がどのようになるか現状に合わせて考えて見れば良い。それが「野菜を太らせる」最大のリスクだろう。今の人間には、いや人類と言ったほうがいいだろう、明らかに正常な植物が欠如している。植物に勝る薬など存在しない。野人には視野の狭い科学が自らの首を絞めているように見える。農業だけにかぎらず・・・