同級生の女5人組 伊勢へ来る | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

同級生が伊勢へやって来た。女ばかりの5人組で、4人が高校3年の時の同じクラスだ。5人とも幼馴染で小中高とずっと一緒だった。家も野人の隣が一人、他も歩いて10分以内だった。うっとおしいと言えばうっとおしい。高校へ入っても、寝ている野人の二階の部屋まで集団でドカドカ上がってきて毛布を引っぺがす奴らだ。女とは遊びたくなくて寝たふりしても通じない。幼馴染で高三まで一緒だったのは他にも5人くらいいる。今は津久見市、大分市、福岡、千葉とバラバラだが示し合わせてやって来た。神宮へ参拝したが野人は参拝が終わるのを待って合流、どうせ若返りやら金満やら厚かましい願い事をしたのだろう。御払い町を歩いて、昼食も一緒にとったが相変わらずやかましく、当時よりも身も心も分厚くなっていた。昔も今もそうだが苗字など呼ばれたことがなく、いつも名前かあだ名を呼び捨てだ。こちらも苗字などで呼んだことがなく、京子に茂美に富子に須磨子に睦子と呼び捨てだ。昼食は「松阪牛」の前で立ち止まってテコでも動かない。野人が、「肉の味もわからんのに、それにそれ以上肉つけてどうすんだ」と言うと、一斉に「キッ!」っと睨まれた。結局昼食は牛肉御膳になってしまったのだ。野人は仕方なく牛丼にした。それからますます脂ぎってやかましくなり、次は甘いものを漁っていた。

彼女達から幼馴染で同級生の「和彦」が先月亡くなった事を聞かされた。和彦は高校水泳部のキャプテン。図体がでかく番長格だったが相撲で野人に勝ったことがない。おっさんみたいな風貌だがゴルゴ13に何となく似ていたので人気があった。高校の時からヘビースモーカーでボトル一本空ける大酒飲みだった。そのくせ全校のマラソン大会では二日酔いなのに陸上部、野球部を抑えて男千人中一番。賢くはないが肉体も心臓も頑丈だ。400m自由形は大分県の記録保持者だったが、100のラップタイムと、100m全力のタイムが同じだった。要するにスピードは出ないが、400を最初から最後までフルパワーで泳いでいた。筋肉や心臓がバテることを知らないのだ。

高一の時、野人が操船する動力漁船に和彦を誘い、二人で「密漁」へ行ったことがある。彼は100mと潜水は野人の足元にも及ばない。海神を奉った「観音崎」は潮流が速く誰も海に潜らない。潜ると海が荒れて船が沈むと言われていた。誰も漁をしないから海底にはソフトボールのようなサザエのデカイやつがゴロゴロ転がっていた。こりゃ神の恵みと、二人でトロ箱3杯のサザエを獲って市場へ売り飛ばしたのだ。海も荒れず船も沈みはしなかった。和彦は高校では謹慎、停学を繰り返し、社会人になってからは駆け落ちも経験し、家業を継いで大工の棟梁をしていたがポックリと逝ってしまった。しんみりしていた彼女達が急に和彦を褒め始めた。ワルだったが野人と違って頼めば何処でも運転して連れて行ってくれるし、頼みは聞いてくれるし本当に優しかったと。まあ彼女らの基準はそんなものだろう。他はどうでも自分にご利益をもたらす男が優しい男なのだ。野人の女性観は彼女らによって養われたと言っても過言ではない。万歳三唱して帰って行ったが、今度はいつ会えることか。野人は会えなくても構わないのだが(笑)