クレモナロープで編んだ特製草履 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは


野人が毎日履いている草履・・・・左が室内用で、2年近く毎日履いているがまだ何ともない。たまに洗濯機で丸洗いはしている。右は室外用でサイズも厚みも違い重さも倍以上だ。材質は船のロープに使うクレモナをほぐして編んだもので、鼻緒の表面の部分だけが布製になっている。編んだのは近所の70近いおじさんで、車椅子生活だが野人のマリーナで週末はディンギーヨットを楽しんでいる。野人の会社が依頼した電気工事の仕事中に脳梗塞で倒れて体が不自由になったが、指のリハビリの為にワラで草履を編み始めた。通常の何倍も時間がかかるが力を入れて締め付けるのがトレーニングになる。

野人は滅多に靴も靴下も履かない。堅苦しい仕事や講演、出張などでは靴や靴下も履くし、ジャケットやネクタイもするが、通常は一年中室内外では裸足で過ごしている。船の上もデッキシューズなど履かない。雪道も裸足にサンダルか下駄だ。手足の指先は外気温と同じように調整する仕組みになっているから冷たくは感じない。十数年も風邪をひかないのはそのせいと、石鹸を使わないからだろう。人間はじめ、動物の体は本来は水浴びは必要でも、石鹸など必要としないように出来ている。不快だからと必要な脂を落とし、年中手足を外気から遠ざけるのは人間くらいだ。野人の体は真夏でも無臭でサラサラ快適だ(笑)靴下も、汗をかいたシャツを毎日身に着けたとしても臭くはならない。気分だけだ。

最初は彼がワラで作ったワラジを履いていた。とても快適で気に入っていたのだがすり減るとワラクズがこぼれてくるし寿命も短かった。大きさも野人の足に合わせて作っていたが、不自由な手で一足作るのに3ヶ月かかり、支払うといってもお金は一切受け取らないのだ。野人の足は前部が水かきのように広く泳ぐのに適しているのだが普通の形では横がはみ出して海岸の岩で怪我してしまう。靴も26半だが先が窮屈で27にしている。ワラジも先を広めにして、厚さも岩が突き抜けないように普通の二倍にしてもらった。それでも消耗は仕方なかった。そして野人が提案したのが船のロープのクレモナで編む事だった。「クレモナロープ」は合成繊維でクラレ製ビニロン原糸の商標だ。綿のように肌触りが良くて滑らかで、強度と耐性に優れ、伸縮性がなくて水に沈む。水に浮く安価なナイロンロープとは雲泥の差がある。硬く引き締まったナイロンロープはほどけなくなるのだ。ヨットをはじめ船はほとんどクレモナロープが中心。短くなったりして不要なロープも繊維をほどけば綺麗なもの。彼はこれをほぐして草履を作ったのだが思った以上に快適で素晴らしかった。野人の草履を皆がうらやましがり、頼むものだから彼は忙しくなった。人が喜ぶ顔が好きなのだ。クレモナ草履は室内だけでなく野外や海岸や川原などのアウトドアに最適だ。防弾チョッキのようなものだから釘や鋭い岩を通さず、濡れた岩で滑る事もない。それに市販のサンダルとは比べものにならないほどの耐久力を誇っている。毎日履かなければたぶん一生もの草履だ。時計で言うなら「ロレックスの草履」とも言える(笑)おそらく彼は死ぬまで編み続けるだろう。野人も死ぬまで履き続けるだろうから、その分もお願いしている。